研究課題/領域番号 |
01041003
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
梅田 安治 北海道大学, 農学部, 教授 (90001411)
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研究分担者 |
劉 哲明 中国科学院, 長春地理研究所, 教授
柴 岫 東北師範大学, 泥炭沼沢研究所, 教授
高橋 英紀 北海道大学, 大学院環境科学研究科, 助教授 (20001472)
桜田 純司 北海道大学, 農学部, 講師 (80001460)
辻井 達一 北海道大学, 農学部, 教授 (10001413)
CHAI Xiu Dongbei Normal University (China)
LIU Zeming Changchun Institute of Geography, Academia Sinica
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研究期間 (年度) |
1989
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研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
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配分額 *注記 |
4,500千円 (直接経費: 4,500千円)
1989年度: 4,500千円 (直接経費: 4,500千円)
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キーワード | 中国 / 吉林省 / 長白山東部 / 泥炭地 / 泥炭 / 植生 / 地質 / 水文 |
研究概要 |
泥炭地の開発・利用の進展にともない、泥炭中の古環境情報・湿原植生の遺伝資源が急速に失われつつあるが、それらの情報・資源の保全は世界的な視野からみても重要な課題である。 上記の観点から、中国吉林省靖宇地区の三道湖泥炭地と柳河地区の哈尼泥炭地を対象地に選んで現地調査を実施した。さらにこれら泥炭地との比較検討を目途として、昭和63年度に調査をおこなった中国四川省若爾盖泥炭地の資料を活用し、また北海道サロベツ泥炭地と釧路泥炭地を調査地として考察を進めた。 哈尼泥炭地と三道湖泥炭地は、中国東北地方長白山東部に位置する。これらは大規模な山間盆地、あるいは大小の谷や浅い窪地等にできた泥炭地で、その形成過程は地理的条件と気象的条件に大きく規定されたものと考えられる。現在、これら泥炭地は大部分未利用地として残されているが、例えば三道湖泥炭地では、明渠排水路の掘削・地下水位の低下が進められ、林業利用が意図されている。 三道湖泥炭地の調査地は、ほぼ南北に走る道路で区切られた半円形の泥炭地で、南北に幅約300m、西側奥行き約400mの範囲を調査対象とした。植生はヨシ、スゲ類からなり、カラマツ、シラカンバからなる森林が泥炭地よりやや小高く周囲を囲んでいる。 カラマツ林内に設けた15m×15mの精査区内には、46本の成立、22本の伐根跡が認められた。カラマツの樹齢は最大39年、最小20年、31〜34年生にピ-クを持つ一斉更新型であった。樹齢はほぼ均一であるにもかかわらず、樹高は2〜15mと様々であった。分散構造は、伐根を含めると集中分布を示すが、伐採によってランダム分布に近づいており、種間競争は軽減されたように見える。しかし、被圧木は樹高、胸高直径共に、間伐後も成長不良が続いており成長の変化は認められず、間引きによる樹木成長の変化は全く認められない。これらは、泥炭地における森林構造の決定要因としては光よりむしろ土壌条件の方が重要であることを示唆している。 三道湖泥炭地の地層は泥炭、火山灰混り粘土、粘土の層序をなす。泥炭の厚さは中央部で60〜80cm、周囲の林地に近づくに従い薄くなり、林地との境界付近では10cm程度である。泥炭はスゲを主構成植物とするものであり、分解度はvon Post法でHー4、水洗法で70%程度で分解の程度は軽微であるが、下層泥炭ではHー7、80%と分解が進んでいる。 泥炭の比重は1.60〜1.85であり、強熱減量と比重の関係は日本の泥炭で得られた関係の範囲内にあり、四川省若爾盖泥炭を含めて一定の傾向にある。間隙比は下層泥炭で8.7、表層で15〜23で、若爾盖泥炭より非常に大きく、北海道の泥炭に類似した値を示した。透水係数は10^<-1>〜10^<-3>cm/sのオ-ダ-にあり、間隙比が大きいこともあって、かなり大きな値となっている。 簡易縮試験による圧縮性は、北海道のそれと比較すると小さな値を示し、排水履歴の無い泥炭とある泥炭の中間的な値を示している。なお若爾盖泥炭は排水履歴もあるためこれらより著しく小さな値を示す。 三道湖泥炭地の排水路と排水路の中間地点および自然状態地点の地下水位は、調査期間中に降雨が無かったこともあって変動がきわめて小さく、共に緩慢な下降を示し、蒸発散による水位変動も認められない。また、排水路の開通に伴い1日後に水路内では約20cmの水位低下をみた。それに対応する地下水位の低下は水路から2m地点で約3cmであった。泥炭地から流出する流量は、水路開削前はほぼ0.01m^3/sであったものが、開削にともない2倍以上となった。この流況は翌朝にかけて開削前の流量に低下し、新たな排水路の開削とともに増加する。 サロベツ泥炭地および釧路泥炭地では、地下水位の変動・泥炭構成植物と泥炭の物理性および力学性との関連性について調査・実験を進め、中国と北海道の泥炭の性質の比較などを検討した。
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