研究課題/領域番号 |
01041004
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
福田 正己 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (70002160)
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研究分担者 |
CASASSA Gino チリ極地研究所, 助手
TROMBOTTO Da アルゼンチン雪氷学研究所, 助手
RETAMAL E. チリ大学, 理工学部, 教授
STRELIN J. アルゼンチン極地研究所, 助手
曽根 敏雄 北海道大学, 低温科学研究所, 日本学術振興会特別研 (10222077)
高橋 伸幸 北海学園大学, 教養部, 助教授 (20202153)
下川 和夫 札幌大学, 女子短期部, 助教授 (70206225)
STRELIN Jorge Instituto Antarctico Argentino, Research Assoc.
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研究期間 (年度) |
1989 – 1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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配分額 *注記 |
10,500千円 (直接経費: 10,500千円)
1990年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
1989年度: 8,000千円 (直接経費: 8,000千円)
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キーワード | 永久凍土 / 周氷河現象 / 海面変動 / 後氷期 / 活動層 / 気候変動 / 南極氷床 / 氷楔 |
研究概要 |
1.南極半島、マランビオ島の永久凍土調査昨年の現地調査によって、マランビオ島の永久凍土の特質と分布が明らかになった。(1)地形面ごとの永久凍土の分布とその下限深さの推定マランビオ島には、3段の海成面が発達している。最上位面(+200m、メセタ面)、中位面+60m、サブメセタ面)、低位面(+5m、ラ-ルセン面)に分類される。これらの段丘面の相互の位置関係を示す地形縦断面と、現地での測量結果に基づいて作成した。低位面のラ-ルセン面では、表面から3m深さまでの地中温度分布の経時変化を2年間にわたって記録した。その結果に基づいて、永久凍土内の地中温度の勾配を算出した。1〜3mまでの地中温度勾配は0.19℃/mであった。この傾きを下方へ外挿し、0℃等温線と交わる深さ(永久凍土の下限深)を算出したところ、34mという値が得られた。同一地点での電気探査結果から約30m深が得られており、ほぼ一致することがわかった。メセタ面(+200m)では下限深さは180m深であり、サブメセタ面(+60m)では80m深と推定された。 (2)低位面の形成年代の推定 +5mの低位面は、海成砂から構成されている。この上に、風成と思われる小規模なマウンドが形成されている。このなかに海藻に由来する有機物が含まれる。これを用いた ^<14>C年代測定を行ったところ3000年B.P.が得られた。また現汀線で採取した海藻による年代測定では1000年B.P.が得られた。すなわち、南極海域では、氷床の融解に伴う ^<14>Cの少ない海水であり、 ^<14>C年代測定には補正が必要となる。したがって、低位面の形成時期は約2000年前であり、この期間に30mの厚さの永久凍土が形成されたことになる。 (3)マランビオ島の各地形面上に発達する氷楔の形成環境 前述の3段の海成面上には、一辺の大きさが10〜20mの割れ目模様(ツンドラポリゴン)が発達している。低位面(ラ-ルセン面)と高位面(メセタ面)で、氷楔の存在をボ-リングによって確認した。さらに、割れ目をはさんだ間隔の季節変化を測定したが、現在の気候条件下では割れ目の成長を確認することはできなかった。さらに、ボ-リングによって採取した氷楔の氷の化学分析を行ったところ、多くの塩類の集積が見られた。これらの塩分濃度は、マクマ-ド入江のドライバレ-地域での湖沼水に近く、極端な乾燥条件下で、活動層内の水が基盤岩石より塩類を溶出し、長い時間をへて濃縮されたものと考えられる。 2.南極半島、ジェ-ムス・ロス島の永久凍土調査 南極半島ウェッデル海側のジェ-ムス・ロス島北東部は、氷床におおわれない露岩地域があり、永久凍土の分布が推定されていた。今回の現地調査とデ-タ解析の結果から以下の内容が明らかになった。 (1)地形面ごとの永久凍土の分布とその下限深さの推定 プンタサンタマルタ地域には、数段の海成段丘面が発達している。はじめに、精密地形測量を行い、1/5000地形図を作成し、これに基づき3段の段丘面区分を行った。さらに各地形面ごとに、表層堆積物の分析と電気比抵抗探査を行った。その結果、最下位面(+5m)では永久凍土下限は6m深であり、中位面(+15〜20m)では80m深、上位面(+30〜40m)では120m深以上であることがわかった。 (2)低位面の形成年代の推定 +5mの低位面は、中位面を構成するデルタ性堆積物を侵蝕し、わずかに海成礫をのせている。したがって、いったん海進をうけてそれまでに形成発達していた永久凍土は消失した。再び海退で陸化してから、現在の深さまで永久凍土が形成された。表面をおおう海成層に含まれている貝化石を用いた ^<14>C年代測定から、海進の時期は約3000年B.P.であることがわかった。 (3)現環境下で発達する周氷河現象について 降水量が少ないために、活動層での凍結ー融解の繰り返しによる周氷河現象は発達が悪い。しかし、大規模なストライプからツンドラ構造土、さらにスト-ンピットへ移行する典型的な周氷河現象を観察し、これらの地形と微地形との対応、内部構造の反映などを明らかにした。
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