研究課題/領域番号 |
01041009
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
安元 健 東北大学, 農学部, 教授 (20011885)
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研究分担者 |
ANNEーMARIE L ルイ, マラルデ医学研究所・薬理・毒性学研究室, 主任研究員
石丸 隆 東京水産大学, 資源育成学科, 助教授 (90114371)
井上 晃男 鹿児島大学, 南太平洋海域研究センター, 教授 (10034456)
LEGRAND Anne-Marie Institut Territorial de Recherches Medicales Louis Malarde
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研究期間 (年度) |
1989
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研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
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配分額 *注記 |
4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
1989年度: 4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
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キーワード | シガテラ / シガトキシン / 化学構造 / Gambierdiscus toxicus / 毒化原因生物 |
研究概要 |
南方のさんご礁の発達した海域では、本来は無毒な食用魚種が毒化し、しばしば食中毒の原因となり、食品衛生上の重大な問題となっている。毒化した個体と無毒な個体の識別が困難な為、毒化の可能性のある多数の魚種が食用を禁止され、沿岸資源の有効利用の上でも大きな障害となっている。このような現象は原因毒や中毒症状によって3種に大別できる。第一はシガテラと呼ばれる中毒で、死亡率は低いが発生率は最も高く、発生海域も広い。年間の患者発生数は2万人にも達すると推定されていて、その解決は最も重要視されている。第二はクルペオトキシズムと呼ばれる中毒で、死亡率は高いが発生件数は少ない。第三はパリトキシン中毒でやはり高死亡率ながら発生件数は少ない。 本研究はシガテラにおける、魚類の毒化機構の解明、毒の化学構造の解明に最も重点を置き、併せて、他の魚類中毒についての情報収集をも試みた。その成果は以下のように要約される。 毒の起源の確定 シガテラにおいては、魚の毒性の個体変化や地域変化が著しいことから食物連鎖による毒の移行と蓄積が推定されており、毒の第一次生産者の確認が問題となっていた。我々は昭和53年から54年に行った前回の海外学術調査において、海藻付着性の渦鞭毛藻Gambierdiscus toxicusを発見して2成分の毒を検出し、その性状がシガテラ魚に見いだされる水溶性の毒マイトトキシンと脂溶性の毒シガトキシンに類似していることから、毒の起源であろうと推定した。その後、本鞭毛藻を培養してマイトトキシンの生産は確認したが、シガトキシンの生産の確認は成功しなかった。そこで、今回の調査ではタヒチの研究者との協力で、天然に生育するG.toxicusを大量に採集・抽出し、GTー4Bと仮称する成分740ugを単離して構造解析を行い、後述するシガトキシンと基本骨格が完全に一致することを証明した。このことによって、シガテラにおける毒の起源が海藻付着性の渦鞭毛藻G.toxicusであり、その毒が藻食魚を介して多くの肉食魚に移行することが初めて確証された。 毒の化学構造 シガテラの中毒症状発現に最も重要な役割りを果たすシガトキシンの化学構造は、多くの研究者の努力にも拘らず決定されずにいた。その理由は有毒個体の入手の困難さ、精製の複雑さ、複雑な毒の構造にあった。今回の調査では、タヒチ島周辺のみならず、ツアモツ諸島、マルケサス諸島の広範な海域から毒性の最も強いドクウツボ840尾(約4トン)を集め、その内臓125kgを抽出原料とした。精製法にも改良を加え、純品シガトキシン350ugを得ることが出来た。試料が極めて微量な為、スペクトル分析法を主体に構造解析を進め、下図に示すようにエ-テル環13個が梯子状に連結したポリエ-テル構造を初めて明らかにした。前述したように、毒化原因生物のG.toxicusから得たGTー4Bとは基本骨格が同一であり、分子両端の酸化の状態のみが異なる。このような複雑な構造を1mg以下の試料で構造決定できたことは画期的といえる。 毒の微量検出法の検討 中毒発生防止には有毒個体の識別法が必要であるが、現行の動物実験法は操作が複雑で長時間を要し、精度も低く実用的でない。そこで簡便な毒の検知法の開発が望まれている。本研究でシガトキシン分子末端に1級水酸基の存在が判明したので、蛍光化試薬1ーアンスリルジアゾメタンと反応させ、高速液体クロマトグラフィ-で検出する方法を考案した。また、1級水酸基のコハク酸へミエステルを蛋白に結合させた抗原を用いて抗体を得、酵素免疫法を開発出来る可能性を指摘した。 G.toxicus調査 タヒチ島、ツアモツ諸島、マルケサス諸島で調査を実施し、毒化海域での分布を確認した。採集した渦鞭毛藻は現在培養中であり、栄養生理及び毒生産性の試験に供する予定である。 魚類毒化に関するその他の情報 モンガラカワハギ類によるパリトキシン中毒が希に発生するが、入手した試料の毒性は低かった。クルペオトキシズムの発生は確認されなかった。
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