研究課題/領域番号 |
01041016
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
赤澤 威 (1990-1991) 東京大学, 総合研究資料館, 助教授 (70013753)
赤沢 威 (1989) 東大, 総合研究資料館, 助教授
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研究分担者 |
LUMLEY Henry 国立自然史博物館(フランス), 教授
PAYNE Sebast ケンブリッジ大学, 非常勤講師
MUHESEN Sult ダマスカス大学, 文学部, 講師
ABDULSALAM A ダマスカス大学, 理学部, 教授
阿部 祥人 慶応義塾大学, 文学部, 助教授 (90175919)
大沼 克彦 国士館大学, イラク古代文化研究所, 助教授 (70152204)
南川 雅男 三菱化成, 生命科学研究所, 室長
百々 幸雄 札幌医科大学, 教授 (50000146)
SEBASTIAN Pa ケンブリッジ大学, 非常勤講師
SULTAN Muhes ダマスカス大学, 文学部, 講師
ADL Abdul sa ダマスカス大学, 理学部, 教授
ABDULSALAN A ダマスカス大学, 理学部, 教授
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研究期間 (年度) |
1989 – 1991
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研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
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配分額 *注記 |
27,500千円 (直接経費: 27,500千円)
1991年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
1990年度: 16,000千円 (直接経費: 16,000千円)
1989年度: 9,000千円 (直接経費: 9,000千円)
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キーワード | ネアンデルタ-ル / 進化 / 中期旧石器 / 地溝帯 / シリア / アフリン / デデリエ / human evolution |
研究概要 |
デデリ-エ洞窟調査 本調査は、西アジア、シリアの北西部、シリア第2の都市アレッポの北西部約40kmにある「デデリ-エ」(Dederiyeh)洞窟において、ネアンデルタ-ル人類から現生人類にいたる進化プロセスを解明することを目的としている。日本とシリア両国の研究者による共同調査であり、組織は赤澤威を研究代表者として、先史学、自然人類学、自然地理学・動物考古学を専門とする、日本人研究者4名、海外研究者4名で構成されている。 調査は、1989年度よりまず3年間の予定で開始され、その第一年次調査において、当調査研究の目的に不可欠のネアンデルタ-ル人類化石が発見されるという好運に恵まれた。最終年度にあたる本年は、過去2シ-ズンの現地発掘調査において入手した発見物と関連する数々の調査記録類を整理、研究、調査報告書を出版するための準備作業を実施した。 最終年度の調査研究 平成元・2年度の野外活動で入手した標本・試料資料分析研究のためそのすべてをシリア政府より借用中である。今年度は、その標本・資料を各研究分担者のもとで研究・分析するとともに、一部標本について年代測定、人骨標本についてはそのすべてにつきレプリカ作成を実施した。各標本・資料の研究実績は下記の通りである。 1.人骨:担当者 百々幸雄(札幌医科大学) 平成元・2年度の野外調査で100点以上の人骨片が発見され、その予備的研究でネアンデルタ-ル人骨が多数含まれていることが判明した。今年度はさらにすべての人骨片につき同定を試み、ネアンデルタ-ル人骨については他遺跡で発見されている標本との比較形態学的研究を通して、その時代的、地理的変異を検討し記載した。 2.旧石器:担当者 赤澤威(東京大学);阿部祥人(慶応大学);大沼克彦(国士館大学) 平成元・2年度の野外調査で発見された約3000点のレバント・ムステリアン・タイプの石器について、形態学的記載とともに、他の標本との比較を通して当遺跡の中期旧石器文化の時代的・地理的変異を明らかにした。 3.土壌サンプル:担当者 南川雅男(三菱化成生命科学研究所) 洞窟とその周辺で採取した土壌サンプルについて、アイソト-プ分析、粒度分析を行い、その結果をもって洞窟堆積物の成因、洞窟周辺の古地理・古環境を検討した。 4.年代測定:担当者 赤澤威 発見された人骨および動物化石の一部を試料としてAMS年代測定を行い、人骨の生息年代を推定する。この結果により、人骨がネアンデルタ-ル人あるかどうかについて最終的結論を得る。東京大学・名古屋大学タンデム加速器による測定を依頼中である。 5.人骨レプリカ作成:担当 百々幸雄 今回発見されたネアンデルタ-ル人骨はシリアでは初めての発見例であり、平成4年度にはシリア政府に返却することが義務づけられている。しかし、これだけ多数の資料の研究を今年度内に完結させることは困難である。そこで、すべての人骨について精巧なレプリカを作成し、その恒久的保全措置を講じた。 研究の結果 発見された多数の人骨破片が形態学的にネアンデルタ-ル人的特徴を示し、かつ一緒に発見された石器も当地域の中期旧石器、レバント・ムステリアンと同様の特徴を示し、以上から当人骨はシリアにおいても最初のネアンデルタ-ル人の発見となり、かつ死海地溝北端部におけるネアンデルタ-ル人の存在を裏付ける最初の具体例であることが確定した。この発見はシリアにかぎらず、関連する学界に新知見を提示したことになる。 以上の記録をもって調査研究報告書を刊行する予定であるが、その基本的構成は以下のようになる。 1)デデリ洞窟ネアンデルタ-ル人とその文化の遺跡内変異(intersite variability) 2)デデリ洞窟ネアンデルタ-ル人とその文化の地理的・時代的変異(intersite variability) 3)アフリン地溝の過去10万年の生態条件(気候・地形・地理)の変動 4)ネアンデルタ-ル人類の進化プロセスに関する仮説モデルの構築
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