研究課題/領域番号 |
01041025
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
冨田 正彦 宇都宮大学, 農学部, 教授 (60074051)
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研究分担者 |
広田 純一 岩手大学, 農学部, 助教授 (00173287)
隅田 裕明 日本大学, 農獣医学部, 専任講師 (70147669)
佐藤 嘉倫 横浜市立大学, 商学部, 助教授 (90196288)
結城 史隆 八千代国際大学, 政治経済学部, 助教授 (80210582)
八木 宏典 東京大学, 農学部, 助教授 (00183666)
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研究期間 (年度) |
1989
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研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
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配分額 *注記 |
9,500千円 (直接経費: 9,500千円)
1989年度: 9,500千円 (直接経費: 9,500千円)
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キーワード | 南アジア農業 / 天水田 / 潅漑開発 / 農村社会 / 農村環境 / 熱帯生態系 |
研究概要 |
低水準ながら高度な生態学的平衡が長期に亙って維持されていた地域生態系が、開発行為によって急変革を余儀なくされている典型例として南アジアの天水田地域の最近の潅漑開発地の村落を選び、その(1)域生態系の構造、特にその自然構造、生産構造および生活構造の相互関係構造(2)潅漑開発に伴う地域生態系構造の変化と、随伴する系要素間の不整合の発現状況(3)前項の不整合の解消過程などを、導入潅漑開発の仕様・機能と併せて調査し、地域生態系に発現した不整合の潅漑開発機能との関係づけを目的として昭和62年に第1次調査を実施した研究の第2次調査である。第1次調査は主として試・資料収集、ヒアリング等により(1)、(2)を実施したが、(3)不整合の解消過程については現象のトレ-スに依る他ないので、観察集落を設定し、現地研究者の協力のもとに経過記録を続けて本年の第2回調査に至ったものである。調査は現地での学際討論を重視して全員が行動を共にし、平成元年8月1日〜9月20日に実施された。調査地域はインドのタミルナドゥ州アランタンギ地区(エガプルマル-村)とネパ-ルのテライ地方チトワン地区(モハナ村)である。 タミルナドゥ州調査は昭和62年が本調査で今年は補足調査のため実調査日程は10日間で、Grand Anicut Canal(GAC)の第11支線水路系を選んで行政的なGAC管理と地域農民の水管理との補完関係とその結果としての用水供給実態を把握するとともに、その受益農村のサンプルとして同支線20番スル-ス受益地のエガプエウマル-集落(Egaperumalur Eri)を選んでGAC受益区域に入る以前の50年前にさかのぼって現在までの集落の経済、社会構造の変化を調べた。用水管理実態調査の方法はおもに各関係行政部局からの資料、記録デ-タの収集と、システム各部位の操作・管理責任者からの現地でのヒヤリングによった。エガプルマル-集落調査は集落に保管されている記録類の収集・解続が主で、集落の古老と現在の役員農民の協力のもとの実施した。なお、これらの全てにはコインバト-ル農科大学(Sivanappann教授他)の調査協力を受けた。テライ平野調査は昭和62年度は予備調査的段階に留まっていて、今回が実質的な本調査であったため30日間の実調査日をかけて約600haの受益水田面積を対象として5年前に完成しているPancha
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kania lrrigation Systemを選び、その全体の用水供給実態を把握するとともに、受益農村のサンプルとしてモハナ村(Gaun Mohana)を選んで営農技術を含むその社会・経済構造の灌漑導入前後の変化を調べた。用水管理実態調査の方法はGACと大略同様であるが、GACが英国技術の協力の元に建設されているのに対し、こちらはネパ-ル政府の独自開発で施工仕上げにかなりばらつきがあって、そのことが地域用水状況の微視的な差異を生じているので、施設管理・操作技術者と同行してのシステム全体の踏査に時間を掛けることとなった。モハナ村調査は112戸の全農家を対象としての訪問アンケ-ト調査と農地1筆毎の農学的調査が主である。いずれも農民との会話が不可欠なのでトリブヴァン大学農学部(Mallik教授他)の教官7名、学生5名の全面的な協力体制のもとに実施された。工学(農業土木)班による潅漑施設の仕様・機能状況、自然科学(作物学、土壌学)班によるサンプリング調査と社会科学(農業経営、地域経済学、社会学)班によるヒアリング調査とも、現地研究者の適切な協力が得られたこともあって、それぞれ十分な成果を得ることができた。反省点としては、トリブヴァン大学農学部の教官・学生はいずれもキャンパス内かその近くに居住していて個人的な交通手段を持っていないのに対して、同大学とモハナ村間の距離が10kmあり、調査隊で借り上げた車で送迎する必要があったが、教官・学生とも授業の合間を縫っての協力であったためこの送迎は時には一日4往復にもおよび、あいにくのネパ-ルの燃料統制のもとで、ディ-ゼル燃料の確保にあらぬ苦労をするはめになったことである。今回の調査をそんな状況の元で成功裏に終えられたのは、在ネパ-ル日本大使館のご協力のもとにネパ-ル政府からディ-ゼル燃料の特別供給を受けて凌ぐことが出来たためで、海外学術調査に際しての外務省への便宜供与依頼はやはり重要であることを実感させられた。 収集資料は土壌、水田湛水、水稲葉、種籾などの試料サンプルと、営農内容などについての農家アンケ-ト調査回答・ヒアリング記録と、潅漑施設の仕様・機能及びその運用記録、地域自然構造・土地利用、地域経済・社会状況についての文献資料・統計資料・地図資料などである。うち試料サンプルについては原則として現地協力大学の研究者と折半して半分を持ち帰った。それらの整理にはそれぞれの分担研究者が当たり、リストを作成した上で、分担研究者の所属大学に保管した。農家アンケ-ト調査回答とヒアリング記録の整理は八木、佐藤が担当し、リストを作成した上で農業経済学関係のものは東京大学農学部、社会学関係のものは横浜市立大学商学部に保管した。文献資料・統計資料・地図資料については、まずリストを作成して研究組織全員での利用体制を作った上で、潅漑施設の仕様・機能及びその運用記録については広田、山路が整理に当り、おもに岩手大学農学部に保管した。その他はそれぞれ関係分担研究者の元で整理、保管しているが共通的なものについては宇都宮大学農学部で保管した。 これらの収集資料の分析・取りまとめはようやく緒についたところで、本格的作業は平成2年度の調査総括の課題であり、ネパ-ル国トリブヴァン大学農学部のMallik教授、Bhora助教授を招へいして、総合考察討論を共にしながら進める予定である。分析・考察結果は、総合考察討論の成果と合わせて報告書に取りまとめて印刷すると共に、研究分担者ごとに分担課題に関係の深い学術雑誌に論文報告する予定であるが現在のところ論文題名等は未定である。なお、相手国インド、ネパ-ルへの成果の還元については、基本的には前述の現地研究者との学術論文の共同発表がこれに当たるが、報告書に盛り込み切れなかったものを含めて試料サンプル類の全分析結果、その他資料の全整理結果も関係現地大学の研究者へ回付し、相手国内での将来の研究資料に供する予定である。 隠す
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