研究課題/領域番号 |
01041027
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小池 勲夫 東京大学, 海洋研究所, 教授 (30107453)
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研究分担者 |
POLLAND Pete CSIRO, オーストラリア, 研究員
飯泉 仁 東京大学, 海洋研究所大槌臨海センター, 助手 (00159550)
野島 哲 九州大学, 理学部臨海実験所, 助手 (30112288)
木暮 一啓 東京大学, 海洋研究所, 助手 (10161895)
相生 啓子 東京大学, 海洋研究所, 教務職員 (90107459)
向井 宏 東京大学, 海洋研究所, 助手 (00013590)
西平 守孝 琉球大学, 理学部, 教授 (80004357)
POLLARD Peter C. CSIRO, Australia
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研究期間 (年度) |
1989 – 1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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配分額 *注記 |
9,000千円 (直接経費: 9,000千円)
1990年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1989年度: 7,000千円 (直接経費: 7,000千円)
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キーワード | 海草藻場生態系 / 基礎生産 / 窒素代謝 / 〓過食者 / 共生藻 / 付着藻類 / 底生動物 / 草食魚 |
研究概要 |
熱帯域の浅海域・ラグ-ンを中心にひろがる海草藻場は、顕花植物を一次生産者とする高密度の生態系を構成しており、浅海・沿岸域の物質循環に大きな影響を与えている。この海草生態系は、これまでの我々の研究によりその分布の中心であるパプアニュ-ギニアにおいては、10種以上の海草が共存し、又、底生動物については、ナマコなどの堆積物食者や二枚貝などの懸濁物食者、あるいはシラヒゲウニなどの草食者が共存して複数の食物連鎖を構成している。今回調査を行ったフィジ-の海草藻場は、太平洋熱帯域における海草藻場の分布において周辺域にあたり、海草としてはボウバアマモノ種が純群落を構成していた。この海草藻場生態系の炭素・窒素の循環を生態系を構成する生物群集との関連から検討した結果、以下の点が明らかになった。 1.藻場の群落内部、および海水中の栄養塩濃度は著しく低く、その一方、堆積物の間隙水中には、海水中の10〜100倍の栄養塩が存在する。これは藻場堆積物中に蓄積した有機デトリタスの分解に由来すると考えられる。堆積物中の有機炭素、窒素量は藻場周辺の裸地では、表層約20cmまではほとんど変化せず、そのC/N比は約10(g/g)である。しかし、藻場の中の堆積物では有機炭素量が0cmから20cmで約3分の1に減少するのに対し、有機窒素量はほとんど変化しない。このことは、藻場堆積物中で窒素が徴生物などによる代謝をうけても、脱窒素などで失われることなく、窒素源として保存され、海草に効率よく再び使われることを示唆している。 2.ボウバアマモの純群落における現存量を測定し、次の3つの方法によって生産量を測定、比較した。(1)標識法による生長速度の測定と葉の寿命の推定。(2)葉片の酸素放出量の測定による光合成速度の推定。(3)維管束ガス測定法による一株全体の光合成活性の測定。いずれの方法にも長所・短所があり、値は完全に一致するに至らなかったが、ほぼ妥当な値が得られた(2.5g/m^2/day〜11.2g/m^2/day)。この基礎生産量は、株数密度がきわめて高いため、ニュ-ギニアなど大陸周辺の多様度の高い海草群落と比べて、決して低くない値であった。 3.この藻場の特徴は、ろ過食者の底生動物が、餌となる海水中の植物プランクトンが少ないにもかかわらず、きわめて豊富であることであるが、それらのうち、堆積物中にすむ底生二枚貝は、海草および付着藻類起源のデトリタスが、密生したボウバアマモの群落内の海水中に高濃度で蓄積されることによって、豊富な現存量を維持していると、考えられる。一方、堆積物表面や海草の葉部に付着している群体ボヤは、現存量も多く(平均14.8g/m^2)また共生藻であるプロクロロンを持っていることから、一次生産にも寄与している。このホヤは、共生藻による炭酸固定と〓過食による従属栄養から、ほぼ半々の割合で栄養を得ていることが実験から推定された。また窒素代謝に関しては、独立栄養のほうが強く、光があってもなくても無機態窒素を外部環境から必要とすることが明らかになった。 4.海草藻場の中央部に四個のケ-ジを設置し、生産されたボウバアマモの地上部が枯死したのちの行方、即ち系外に流出する量および系内に堆積する量を測定した。その結果、生産されたボウバアマモ葉部の約80%が枯死した後、藻場内にデトリタスとしてとどまり、約20%が浮遊した後、系外に流出すると推定された。 5.藻場内に出現する底生魚類の食性と日周期活動について調査を行ない、これらの調査結果をもとに一定面積あたりの魚類の平均現存量、さらに海草を食べる草食性魚類の摂食量を推定した。藻場に特徴的に出現する魚類は約20種であった。草食魚はそのうちの4種であり、草食性魚類によって食べられる海草の葉部は、生産量の約1%であった。
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