研究分担者 |
鄭 泰浩 慶北大学, 医学部, 教授
朴 永培 ソウル大学, 医学部, 助教授
洪 彰義 アサンメディカルセンター, 教授
趙 英徳 高神医科大学, 助教授
李 圭沢 高神医科大学, 副学長
矢島 途好 東京医科歯科大学, 医学部, 講師 (40134671)
西村 泰治 九州大学, 生体防御研究所, 助教授 (10156119)
笹月 健彦 九州大学, 生体防御研究所, 教授 (50014121)
鈴木 広一 大阪医科大学, 講師 (60171211)
松本 秀雄 大阪医科大学, 学長 (30084809)
CHUNG Tai Ho Kyungpook National University
PARK Young Bae Seoul National University
HONG Chang Yee Asan Medical Center
CHO Young D. Kosin Medical College
LEE Kyu Taik Kosin Medical College
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研究概要 |
はじめに 高安動脈炎は原因不明の非特異性慢性血管炎であり厚生省により難病に指定されている疾患の一つである。 本症は若年女子に多いという特徴の他に欧米に少なくアジア、南米に住む民族に多くの患者をみるといる種族差のあることでも知られている。^<1)2)>。本症発生には種属差のあることや家族内発症ケ-スがみられることから高安動脈炎の発症、病態の進行に遺伝要因の関与を推定し、HLAの検索を行ってみたところ、日本人の本症患者にはHLA Aw24ーBw52ーDw12のhaplotypeの出現が健康日本人に比し有意に高い結果が得られた^<3)4)5)6)>。更に、class IIIに属する遺伝子との関連を追求すべく補体蛋白の多型について調べたところ本症患者はBw52ーC4A2ーC4BQOーDw12のextended haplotypeの存在が確認された^<6)7)8)>。 一方、本症には種属差のあることから他民族での本症病態が気になるところである。そこで、昨年度から隣国である韓民族の高安動脈炎患者はどうであるかとの比較研究を行った。 研究および方法 韓国のソウル地域およびプサン地域について高安動脈炎と診断された患者50名につきHLA typingおよび補体蛋白型の測定を実施し、健常韓国人200名と比較検討を加えた。更に、血管造影を施行し得た112名についてその血管造影所見と東京医科歯科大学で血管造影を行った75名の患者と比較検討を行った。 結果 表1〜4はHLA、A、B、C、DR locusにおける各種抗体の出現頻度を健常人と比較したものである。A locusにおいては健常人と患者との間に有意差の認められたものはなかったが、B locusにおいてはBw52(p<0.02)、DR locusではDR7(p<0.02)が健常人に比し有意に高い結果が得られている。更に補体蛋白についてもC4、A2の有意に高い出現頻度が確かめられた。(γγ=19.1、x=7.0p<0.01)。図1は血管造影の比較をしめしたものである。Nasuの分類法に基づいて行った分類では我が国ではIV型(全領域における病変の存在)が最も多く(28名37%)ついで、I型(基幹動脈型)(23名31%)、II型(上行、胸部大動脈を含む病変)(20名27%)の順になり、III型(腹部大動脈に限局)(4名5%)が最も少ない頻度であるのに対し、
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韓国ではIV型が同じく(65名58%)と最も多いが、次いでIII型が(34名30%)をしめ、I型、II型は合わせても(13名12%)にすぎなかった。 総括 まだ検索の途中であり結論を得るまでに至っていないが、韓国民の高安動脈炎患者においてもBw52抗原に有意に高い出現頻度がみられたことは注目されよう。この事実は本症の発症、病態形成にHLAと連鎖不平衡にある遺伝要因の存在が我が国のみならず他民族においてもうかがえることを示唆している。更に補体蛋白型でも両民族にC4A2の有意に高い出現頻度が認められている。もっとも、韓民族と日本民族とは同一性の強いことは人類学上でも指摘されている事実であるが、今後更に他アジア諸国と比較し追求してゆかねばならない。 一方、血管造影検査において両民族に異なったtypingの出現がみられた点も今後検討すべきポイントである。しかし韓国と日本との社会的、経済的な環境の違いで患者の受診率の相違が本症の発見と分布のかたよりに影響している可能性も考慮しなければならない。 文献 1)沼野藤夫:高安動脈炎、循環器病学、佐野豊美 編 文光堂 p1103、1978 2)沼野藤夫:高安動脈炎、診断と治療 76(3):566〜570、1988 3)F. Numan,I,Isohisa,H.Matsumoto,T.Juji:HLーA antigen in Takayasu's disease Amer. Heart J.98(2):153〜159,1979 4)I.Isohisa,F.Numano,H.Maezawa,T.Sasazuki: Hereditary Factors in Takayasu's Disease Angiology 33(2):98〜104,1982 5)沼野藤夫:高安動脈炎とHLA 現代医療 21(12):3375〜3380、1980 6)F.Numano,N.Ota,T.Sasazuki: HLA and Clinical Manifestations in Takayasu Disease 46(2):184〜189,1982 7)F.Numano,K.Namba,K.Suzuki,H.Matsumoto: Hereditary Factors in Takayasu Disease Exp.Cli.Immunogenetics 6:236〜244,1989 8)沼野藤夫、根岸駿夫、下門顕太郎、鈴木広一、松本秀雄、占部和敬、木村彰方、笹月健彦:高安動脈炎の遺伝要因に関する研究(III)高安動脈炎患者の補体アロタイプについて 日内会誌78(4):486〜492、1989 隠す
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