研究課題/領域番号 |
01041037
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
加賀谷 良平 (1990-1991) 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 助教授 (70014511)
湯川 恭敏 (1989) 東京外国語大, A・A言語文化研究所, 教授
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研究分担者 |
中川 裕 東京外国語大学, 外国語学部, 助手 (70227750)
梶 茂樹 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 助教授 (10134751)
湯川 恭敏 東京大学, 文学部, 教授 (20011299)
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研究期間 (年度) |
1989 – 1991
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研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
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配分額 *注記 |
22,000千円 (直接経費: 22,000千円)
1991年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1990年度: 11,000千円 (直接経費: 11,000千円)
1989年度: 9,000千円 (直接経費: 9,000千円)
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キーワード | バントゥ諸語 / カメル-ン諸語 / ナイジェリア諸語 / タンザニア諸語 / ザイ-ル諸語 / アクセント / 語彙 / 文法 / カメル-ン国 / ナイジェリア国 / 記述言語学 / 比較言語学 / 音韻 / 音調 |
研究概要 |
本年度は「バントゥ諸語と若干の隣接諸語の記述・比較研究」の最終年度に当る。前2回の学術調査、すなわち、平成元年度のタンザニア・ザイ-ルの諸言語の調査と、平成2年度のカメル-ン・ナイジェリア・タンザニア・ザイ-ルの諸言語の調査で収集した言語資料を分析し、その成果を発表することが本年度の目標である。前2回の現地調査で収集した言語資料は、タンザニアでは21言語、ザイ-ルでは16言語、カメル-ンでは13言語、ナイジェリアでは3言語である。調査は、各言語において、その全体像の解明を目標として、1.音声・アクセントの調査、2.語彙の調査、3.文法の調査を同時に行い、調査言語の半数以上で、ほぼその目的が達成された。我々の調査の特徴は、対象言語の全体を出来るだけ深く調査すること、および、出来る限り多くの言語を調査対象にすることであった。このような形での調査により、従来の調査研究とは異なり、高度で緻密な研究を新たに幅広く展開させることが出来るようになった。その一つに、これまでのバントゥ諸語研究全体の中で、資料としても、また言語学的分析としても不十分であったアクセント研究を上げることが出来る。 バントゥ諸語は、いわゆる声調言語であるために、そのアクセントの解明は、個別言語の研究に極めて重要であるばかりでなく、一般言語学的に見ても極めて重要なものである。バントゥ諸語のアクセント研究の特徴は、例えば、動詞のアクセントに見られるように、その活用形の複雑さのために、特別な努力を必要とすることである。この解明のためには、まず、あらゆる動詞活用形を調査する必要がある上に、さらに同一の活用形でも、主語・目的語・動詞語幹のタイプなどにより、そのアクセントが異なるために、極めて多数の調査項目が必要である。更に、研究対象を、一品詞だけに限った分析では、偏った分析しかできない言語が多く、当該言語の動詞、名詞、形容詞などの全ての語を対象にしたアクセント体系を解明する必要がある。言い換えれば、バントゥ諸語のアクセント研究には、その言語全体に関する総合的な知識が不可欠であると言える。このように、極めて複雑な体系をなすバントゥ諸語のアクセントは、類型学的には、日本語のアクセントとも、中国語の声調とも異なるが、これらを含めたアクセントの一般統合理論を確立するためには、多くのバントゥ諸語の資料が必要である。このような"深くかつ広い"研究を目標にしてきたために、我々の学術調査資料は、少数の研究者による短期の調査としては、その質・量ともに世界に類をみないものであったと言える。 今回の調査研究の最終年度に当る平成3年度は、その全期間を調査資料の分析と、その成果発表に充てた。資料分析は、ほぼ当初計画の予定通りに進み、その成果の一部は、主として各言語のアクセントを論じた、英仏文9論文からなる"BANTU LINGUISTICS VOL.3ーSTUDIES IN CAMEROONIAN AND ZAIREAN LANGUAGESー"に発表する。また、その早期の発表を各国の研究者から要望されている幾つかの言語の語彙に関しては、ルバ語(ザイ-ル)、バクエリ語(カメル-ン)、ハ語(タンザニア)の3冊の語彙集を編纂する。以上の4冊の刊行は、当初の予定どおり平成4年3月中に終える。なお、当初の予定では、語彙集を4冊刊行する予定であったが、予算上の都合で3冊にとどめざるをえなかった。 我々の研究は、これまでの調査国の言語のうち約1割程度の言語を扱った程度であり、まだ初期的段階というべきものである。これまで調査をした言語の中にも、一層の調査研究を要する言語もあるし、時間的制約のために必要でありながらも調査できなかった言語もある。また、新たに調査を開始せねばならない国々の言語も多く残っている。しかしながら、これまでの調査により、各国の個別言語の研究に重要な寄与を成したと言えるのみならず、これまでは類型的分類しかできなかったアクセントをはじめとする一般言語学の分野でも、我々の研究は重要な意義を与え続けるものと思われる。
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