研究課題/領域番号 |
01041040
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
太田 陽子 横浜国立大学, 教育学部, 教授 (80017714)
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研究分担者 |
NARANJO J.A. チリー地質調査所, 研究員
PASKOFF R. フランスリヨン大学, 教授
BERRYMAN K.R ニュージーランド地質調査所, 地殼変動研究室, 研究員
木庭 元晴 関西大学, 文学部, 助教授 (40141949)
宮内 崇裕 千葉大学, 理学部, 助手 (00212241)
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研究期間 (年度) |
1989
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研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
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配分額 *注記 |
11,000千円 (直接経費: 11,000千円)
1989年度: 11,000千円 (直接経費: 11,000千円)
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キーワード | チリ- / ニュ-ジ-ランド / 海成段丘 / 活断層 / 地震性地殼変動 / 第四紀編年 / プレ-ト境界 / 古地震の復元 |
研究概要 |
環太平洋地域における第四紀後期の地震性地殼変動を解明するために、チリ中・北部において海成段丘と活断層を、ニュ-ジ-ランド南島北東海岸で更新世および完新世の海成段丘の調査を行った。両地域に共通する調査方法は,1)空中写真判読による地形分類と精査を要する地域の選定、2)野外調査による地形調査、高度測定、段丘構成層の調査と年代測定用試料の採集、3)各種方法による年代測定、などである。細部については地域ごとに異なる調査方法をとった。以下に地域ごとに調査結果の概要を記す。段丘の形成期、変形速度については年代測定後考察の予定。 ニュ-ジ-ランド 調査対象地域は、北はビッグラグ-ンから南はカイコウラ半島にいたる約120kmにわたる海岸地域である。 カイコウラ半島:1)本半島の更新世段丘は4段に大別され、半島の頂部(高度約100m)も海成段丘からなる。旧汀線高度の測定から、北西方への累積的傾動が推定される。2)最高位の段丘の掘削調査によって段丘構成層中から豊富な貝層が発見された。貝のアミノ酸法による年代測定を実施中で、段丘の編年が明らかになると期待される。3)完新世海成段丘は3段にわかれ、間欠的離水を示す。各段から貝化石が得られ、^<14>C年代の測定を行っている。 カイコウラ半島からケ-プキャンプベル地域:1)高度約100mの段丘から貝と木(年代測定中)を含む河口性堆積物が発見され、この段丘が海進に伴って形成されたことを示す。この段丘は北方への傾動を示す。2)ロングポイント付近の更新世海成段丘は曲降的変形を示す。3)完新世海成段丘は最高20mに近く、最大7段にわかれ、地震隆起の可能性が大きい。 ビッグラグ-ンおよびグラスメ-ル潮地域:これらの地域では低い沖積低地がひろがる。海成層上限は2m以下で、当地域が沈降地域であることを示す。掘削調査によって多量の貝化石を含む河口性堆積物を得た。 チリ トンゴイ地域とラセレナ地域:1)更新世性海成段丘の高度測定および段丘構成層からの貝化石の採集を行った。貝化石はESR法による年代測定を実施中である。2)本地域では海岸線ないしは山地の主方向と平行する南北方向の断層が多く見出された。主な断層は山地と段丘との地形境界をなす。3)そのうちのケブラダテニヤンテ断層は長さが最大で海成段丘を明瞭に変位させ、しかも累積的変位が予想される。見かけ上、左横ずれがあるが、これが真の横ずれを示すか否かについては検討の必要がある。4)タリナイ山地東方の主要断層は第三紀層を変位させているが段丘にはみるべき変形はなく、活動は古そうである。5)両断層とも露頭観察から正断層であることが確認された。 メヒヨネス半島:1)本地域では海成段丘の発達が顕著で、最高750mに達する。既存の年代資料によると、隆起速度はきわめて小さいので、高位の段丘は第三紀にさかのぼる可能性がある。各段丘から貝化石を得ているのでESR法によって確実な編年ができる見とうしがある。2)ほぼ南北方向の断層によって段丘が変形している。扇状地の累積的変形も見られる。3)主要な断層が正断層であることが確認された。 完新世海成段丘:全域を通して15の貝化石が完新世段丘構成層から得られた。これらの14C年代測定によって、完新世における地殼変動速度の情報が得られると期待されるが、高度からみて、隆起速度はきわめて小さく、地震隆起は考えにくい。これは、上に述べた更新世段丘や活断層の資料とあわせて、チリ-中・北部でのプレ-ト境界の性質が日本やニュ-ジ-ランドとは著しく異なることを示唆している。
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