研究課題/領域番号 |
01041042
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
石原 潤 名古屋大学, 文学部, 教授 (70080265)
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研究分担者 |
RAM Swaroop イザベラソバーン大学, 地理学科, 教授
宮町 良広 大分大学, 経済学部, 講師 (50219804)
長島 弘 長崎県立国際経済大学, 経済学部, 助教授 (10145964)
宇佐美 好文 大阪府立大学, 農学部, 構師 (40081559)
溝口 常俊 富山大学, 教養部, 助教授 (50144100)
鹿野 勝彦 金沢大学, 文学部, 助教授 (00169591)
重松 伸司 名古屋大学, 文学部, 教授 (20109242)
DIXIT Ram Swaroop Professor, Dept. of Geography, Isabella Thoburn College
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研究期間 (年度) |
1989 – 1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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配分額 *注記 |
9,000千円 (直接経費: 9,000千円)
1990年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1989年度: 7,000千円 (直接経費: 7,000千円)
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キーワード | 北インド / ウッタルプラデシ州 / 定期市 / 毎日市 / 大市 / 市場経済 / 互酬的贈与 / カ-スト |
研究概要 |
本研究の主調査地域は、北インド・ウッタルプラデシ州ハルドイ県サンディラ郡であり、研究代表者及び研究分担者の大部分は、当地域において、定期市・毎日市・大市の現況、市商人及び市溝買者の特性と行動、農民・手工業者・職人層の市場参加状況について、インテンシブな現地調査を行った。その結果、明らかにされた事は以下の通りである。 1.当地域には、郡庁所在地のサンディラの町にのみ毎日市が立地しており、この市は卸売機能をも持つ郡内で唯一の市である。 2.地域内には、ほぼ一定間隔で週1〜3回開かれる定期市が分布しており、それらの市日は週の各曜日にほぼ均等に配分されており、かつ隣接する市の間では市日の競合が避けられている。 3.定期市の約半数は幹線道路沿いに立地するが、他の半数は小径だけで結ばれた農村集落に立地する。一般に前者は取引活動が活発化しつつあるが、後者の市は停滞ないし衰退傾向にある。 4.定期市の大部分は集落内又はそのはずれの広場で開かれ、一部は集落内の道路沿いに開かれる。市場の土地の所有者は、個人の場合と地方政府の場合とがあるが、市の管理は地方政府による場合が多い。中・大規模の市では出市料が課されており、徴税請負人がそれを徴集するが、その額は比較的低額である。市の設備は一般に貧弱である。市の清掃は特定の掃除人カ-ストが従事する。 5.定期市の規模は売り手が十数人のものから数百人のものまでさまざまであるが、研究代表者等が調査したインド亜大陸の他地域の市に比べて一般に小規模である。売り手・買い手共に徒歩又は自転車による参加が大部分であり、参集範囲も数km以内と狭い。 6.定期市では、局地内で生産された高品やサ-ビスが交換されるほか、局地外で生産された商品が小売りされるが、局地内生産物の集荷機能は一部の穀物などについて見られるにすぎない。 7.定期市の売り手には、ブラ-マンから不可触賤民に至るさまざまなカ-ストが参与している。市場の中では、販売品物別のセクションが形成されており、セクションの配置は、商品の価格や量、衛生的配慮、販売者のカ-スト等を反映して、一定の傾向を示している。 8.定期市の他に、地域内の各所には、年に1〜2回、数日から十数日の期間で開催される大市が見られる。その大部分は祭礼市で、ぜいたく品やおもちゃ・菓子類が主な販売品である。その一部は家畜市であり、家畜の他、農機具等も販売される。これらの商品は定期市で扱われる日常的消費物とは明らかに異なっている。 9.当地域内での常設店舗は、サンディラの町では著しく発達し集積しているが、農村部では発達が悪い。サンディラの町の圏辺約10km周を除くと、定期市が農村住民の主要な取引の場であると考えられる。 10.しかし農村の側でのインテンシブ調査によれば、一般に当地域における商品生産の程度は低く、市場経済の浸透度は限られており、したがって農民の定期市への参加の程度もあまり高くはない。 11.また、当地域内にはイスラム教徒の特定グル-プによる手織物業生産がかなり盛んであるが、それらの製品の流通も定期市を経由するものはごく一部である。 12.その上、農村部の経済交換体系の中で、市場交換と並んで、今なお互酬的ないし一方的伐与が、特に上層農民の威信と関連する価値体系に支えられて、重要な役割をはたしている。 以上のような現地調査に加えて、ウッタルプラデシ州全体について、市の歴史的発展過程に関する史料調査をも行なった。その結果、当地域には遅くとも17〜19世紀までに、農村地域にも定期市が存立し、農民兼手織物業職人が市に参加していることが、史料的に確認された。 また、以前の調査の対象地域であった南インド・タミルナ-ド州センラム県ナ-マッカル郡についても、今回は補充調査として、市場交換と対立する儀礼的交換についての調査を行なった。その結果、南インドにおいても、互酬的ないし一方的贈与が重要な役割をはたしていることが明らかにされた。
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