研究課題/領域番号 |
01041043
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
樋口 敬二 名古屋大学, 水圏科学研究所, 教授 (50022512)
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研究分担者 |
ADHIKARY S.P ネパール水文気象局, 局長
姚 檀棟 蘭州氷河凍土研究所, 助教授
窪田 順平 東京農工大学, 農学部, 助手 (90195503)
太田 岳史 岩手大学, 農学部, 講師 (20152142)
安成 哲三 筑波大学, 地球科学系, 助教授 (80115956)
岩田 修二 三重大学, 人文学部, 助教授 (60117695)
山田 知充 北海道大学, 低温科学研究所, 講師 (50002100)
瀬古 勝基 名古屋大学, 水圏科学研究所, 助手 (70196971)
大畑 哲夫 名古屋大学, 水圏科学研究所, 助手 (90152230)
上田 豊 名古屋大学, 水圏科学研究所, 助教授 (80091164)
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研究期間 (年度) |
1989 – 1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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配分額 *注記 |
17,000千円 (直接経費: 17,000千円)
1990年度: 4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
1989年度: 13,000千円 (直接経費: 13,000千円)
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キーワード | 氷河比較 / 氷河変動 / 大陸性氷河 / 海洋性氷河 / 氷河質量収支 / 酸素同位体比 / 降雪 / 積雪 |
研究概要 |
本研究の現地調査は、平成元年度を中心に、中国とネパ-ルで実施された。中国では、同年6月に天安門事件がおこり、日程の変更を要したが、事件発生前に現地入りしていた先発隊が設置した自動観測装置により、不在期間中の基本的デ-タは取得できた。しかし、当初予定していた夏期の有人観測は、上記の理由によって秋期の短期訪問に変更しなければならず、同地域の氷河質量収支にとっても最も重要な夏期の詳細なデ-タの取得の機会は得られなかった。けれども、以前の調査成果や周辺地域の現地国ル-チン観測所のデ-タより、その穴をうめる努力をしている。 ネパ-ル・ヒマラヤにおいては、ランタン谷基準雪氷観測所での気象・水文観測の継続と、ショロン・クンブ地域での1970年代以降の氷河変動調査を実施した。 本研究の最終年度である平成2年度は、前年度に実施した、1)氷河比較調査、2)氷河変動観測、3)基準雪氷観測所における観測によって得たデ-タを解析し、降水,氷河,河川などの水試料分析、氷河変動の年代決定試料の分析、人工衛星資料による雲および積雲の広域的解析を実施した。中国の共同研究者を招いて解析作業、全体の成果の取りまとめを行なった。これらの成果のうち基本的な情報、速報的な研究成果を、「Glaciological Studies in Asian Highland Regions,1989」と題した英文報告書にまとめて刊行し、調査成果の相手国への還元をはかっている。 また、平成元年度現地調査で、自動気象観測装置を中国タングラ山域基準観測所に設置したので、平成2年10月にその記録の回収と装置の維持、また氷河上の設置計器からのデ-タ回収と計器維持をした。これらの自動測器による観測は順調になされており、観測開始以来1年半にわたる貴重なデ-タが得られた。また、ネパ-ルにおいても、同国共同研究者の協力により、ランタン谷基準雪氷観測所での気象・水文デ-タが継続して得られている。 以上のことから、これまでに明らかになった主な点は、以下のとおりである。 1)東部チベットの氷河は、ネパ-ルの氷河と同様に夏の降雪が多いため、年間の氷河涵養は主に夏になされる。とくに大陸性氷河においては氷体温度が低いため、夏の融解水の再凍結による上積氷の成長が顕著で、これが氷河の質量収支に重要な特性となっている。 2)チベット高原南東部の海洋性氷河であるゼプ氷河(全長19Km、面積66Km^2)では、年間降水量は4000〜5000mmと推定され、その平衡線高度は約4900mである。この降水量は、同じチベット高原東部の大陸性氷河にくらべて1桁多い。 3)上記の氷河では、中流部のオ-ギブ(氷河表面の蛇腹状の起伏)観測から推定した年間流動速度は、1970年代の150m前後から1980年代は100m前後に低下しており、氷河末端部の観測から、その間、氷河は後退していた。 4)チベット高原の多量の降雪は、大規模じょう乱および強い局地性対流によってもたらされる場合がある。 5)降水の酸素同位体比から、現地起源の水蒸気のチベット高原における水循環への寄与を検討することができる。 6)チベット高原の積雪は、大気の冷却効果のほかに、凍土表層の活動層の成長抑制効果も持ち、同高原の熱および水の輸送過程に重要な役割を果たしている。 7)チベット高原の大陸性氷河地域では、氷河・積雪の表面からの蒸発量が大きく、同地域の熱収支、氷河質量収支にとって重要である。 8)ネパ-ル・ヒマラヤのショロン・クンブ地域の小型氷河は、末端位置が1970年代から30〜50m後退しており、降水量の年々変動よりも気温の年々変動に強く影響されている。 本研究の成果は、1991年8月蘭州での国際雪氷学会その他の学会、関係専門学術誌に発表してゆく。
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