研究課題/領域番号 |
01041052
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西田 利貞 京都大学, 理学部, 教授 (40011647)
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研究分担者 |
マサウエ エデウス セレンゲティ野生動物研究所, マハレセンター, 所長
長谷川 真理子 専修大学, 法学部, 助教授 (00164830)
高畑 由起夫 京都大学, 理学部, 助手 (90183061)
黒田 末寿 京都大学, 理学部, 助手 (80153419)
MASSAWE Edeus Serengeti Wildlife Research Institute
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研究期間 (年度) |
1989 – 1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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配分額 *注記 |
13,300千円 (直接経費: 13,300千円)
1990年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1989年度: 10,300千円 (直接経費: 10,300千円)
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キーワード | チンパンジ- / マハレ山塊 / 母子関係 / 離乳期の葛藤 / 互酬的行動 / 分配行動 / ライオン / 腸内寄生虫 |
研究概要 |
平成元年度の野外調査は、タンザニアのマハレ山塊国立公園のチンパンジ-、ザイ-ルのワンバにおけるボノボ(ピグミ-・チンパンジ-)、コンゴのンドキ森林のチンパンジ-とゴリラを対象とした。タンザニアでは、離乳期の母子間葛藤、互酬的行動の成立過程、老齢個体の行動特微、寄生虫と薬草の採集など、ザイ-ルではボノボの雄間関係、コンゴでは主としてゴリラとチンパンジ-の採食競合の研究をおこなった。 タンザニアでは、塚原高広がチンパンジ-の大人雄を対象として、毛づくろいの成立に至る行動連鎖とどのような組合せで互酬性が成立しているかを調べた。浜井美弥は、0才から2才までの離乳以前の子をもつ雌を追跡した。西田利貞は、離乳期の赤ん坊2頭と離乳前の3才の赤ん坊を観察した。マイク・ハフマンは腸内寄生虫を調べるため糞を、また摂取量がきわめて少ないので薬草の可能性のある食用植物を化学分析のために採集した。寄生虫の同定はすでにおわり、植物は京大農学部で分析中である。また、分配の互酬性を調べるため全員が可能な限り狩猟行動と分配のデ-タを収集した。老齢個体についても各自が機会あり次第観察した。エデウス・マサウェは広域の分布調査をおこなった。ワンバでは、五百部裕が大人雄の個体追跡をおこなった。ンドキでは黒田末寿がチンパンジ-を、西原智昭がゴリラを対象に採食行動のデ-タを収集した。結果は以下のとうり。 1.離乳と関連する母性行動はまだ子が小さいときに始まるが、激しい母子間葛藤は母親が出産後最初の発情を示したときに始まる。激しい葛藤の開始は、生後36カ月から66カ月と個体により異なるが、母親が老齢だと開始が遅れる。野外では動物園のチンパンジ-より、成長も母子葛藤も遅く起こることが明らかになった。 2.離乳期の母子間葛藤は、(1)母親が授乳を拒否したとき、(2)子の運搬を拒否したとき、(3)子の採食を妨害したとき、(4)母親が子を放置して歩み去ったとき、(5)発情した母親が交尾したとき、などに起こった。赤ん坊は母親に対し不満を表明する音声を発したり、かんしゃく行動を示した。母親の宥めの行動として抱きしめ、授乳、毛づくろい、子との交尾があった。一方、母親による食物分配も頻繁に見られた。 3.年令の近い大人雄の間では、毛づくろいは互酬的・相互的になる傾向があり、若い大人雄はたとえ順位が低くても年長の大人雄を一方的に毛づくろいする傾向が強かった。 4.第一位雄は、毛づくろいをお互いに頻繁におこなった同盟者の雄たちや血縁者、配偶関係にあった雌たちに肉を分配し、ライバルである第二位の雄や若い大人雄にはほとんど分配しなかった。それゆえ、第一位雄の肉の分配行動は、連合戦略であると考えられた。 5.チンパンジ-の腸内寄生虫は雨期に増加し、アスピリア、ヴェルノニア等の薬草利用の頻度も雨期に増加した。それゆえ、薬草の一部は寄生虫駆除の機能をもっている可能性があることがわかった。 6.ライオンがチンパンジ-を食べるという証拠が初めて発見された。また、同じ群れの赤ん坊を殺し、食べるという共食い行動の6例目が観察された。 7.母親を失った3頭の孤児のうち、1頭(雌)は兄を、2頭(雄・雌)は主として大人の雄を追従していた。毛づくろいの相手も同様であった。雄の孤児は、母親の友人の雌を追従することも多かった。 8.絶威したと考えられていたカボゴ岬などいくつかの地域で、チンパンジ-が分布しているのが確認された。 9.ボノボの大人雄の優劣順位には、母親が存在が大きな影響力をもっていることがわかった。また、ボノボの雄間の結びつきはチンパンジ-のそれより弱いことがわかった。 10.コンゴのンドキ森林では、チンパンジ-とゴリラの食物は大幅に重複しており、採食競合が起こっていることが示された。低地ゴリラはとくに乾期から雨期の変わり目には果実に依存していた。 11.ビデオ録画テ-プ25巻が得られた。行動連鎖や手の一側優位性の分析などに利用する予定である。
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