研究分担者 |
王 暁平 蘭州沙漠研究所, 工程師
陳 荷生 蘭州沙漠研究所, 副教授
邸 醒民 蘭州沙漠研究所, 教授
山本 福壽 鳥取大学, 農学部, 助教授 (60112322)
井上 光弘 鳥取大学, 乾燥地研究センター, 助教授 (90032309)
本名 俊正 鳥取大学, 農学部, 助教授 (90093624)
林 静夫 九州大学, 熱帯農学研究センター, 助教授 (00038316)
天谷 孝夫 岐阜大学, 農学部, 教授 (80033265)
吉田 勲 鳥取大学, 農学部, 教授 (40038237)
和佐野 喜久生 佐賀大学, 農学部, 教授 (40039342)
WANG Xiaping Engineer, Institute of Desert Research, Academia Sinica
CHEN Heshen Associate Professor, Institute of Desert Research, Academia Sinica
DI Xingmin Professor, Institute of Desert Research, Academia Sinica
張 継賢 蘭州沙漠研究所, 副教授
黄 子〓 蘭州沙漠研究所, 教授
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研究概要 |
本研究は,中国科学院の蘭州沙漠研究所との共同研究であり,中国における砂漠の農業水利開発に関する指針を確立しようと試みたもので,水資源調査:砂地開発のための水資源の効率的な利用,土壌管理調査:耕地開発利用のための適切な土壌管理,飛砂防止調査:耕地保護のための耐乾性樹種の選定と水管理を研究の柱とした。 第一の研究テ-マでは,いかに水資源を効率的に利用するかを探求することを目的として,シルト分を含んだ黄河水を潅漑する場合,従来の地表潅漑による消費水量を把握するとともに,砂土とシルト質土壌とを対比させて,点滴潅漑による消費水量を排水収支型ヲイシメ-タを用いて,水文学,潅漑排水学,作物学的見地から総合的に検討した。沙坡頭の砂地圃場における大豆栽培試験の結果,シルト客土によって砂地圃場の保水性が増大し収量が増すること,少量頻繁潅漑によって深層浸透損失量が減少し節水になることを確認した。また,砂地圃場の土壌水分特性曲線,不飽和透水係数などの土壌物理性を調査し,テンシオメ-タの測定値から深層浸透損失量を推定したが,わずかな吸引圧水頭の変化がフラックスの計算に大きく影響することがわかった。さらに,汚水処理の水を潅漑水源として利用した場合の作物生育に及ぼす影響について実験を行った。嫌気性固定生物膜法による汚水処理で大豆を栽培し,好気性固定生物膜法による汚水処理でトウモロコシを栽培して,黄河水による表面潅漑区と比較した結果,4年間の栽培試験ではあるが,処理水は作物栽培に対して収量も増大し有効であること,土壌中への塩分集積も問題ないことを明らかにした。 第二の研究のテ-マでは,適切な土壌管理を確立することを目的として,塩類集積が認められる圃場の経時的な土壌調査を行って,耕地利用のための土壌の基本的性質,ならびに塩類集積が作物生育に及ぼす影響を把握した。平羅県五星村に塩類高集積区と塩類低集積区を選定し,通常の潅漑方法による小麦栽培を行い,地下水位の測定,土壌表面ならびに土壌断面の塩類集積の分析,小麦の収量調査を行った。試験圃場における実験結果から,地下水位が高い場合には表層への塩類集積が助長され作物の収量も著しく減少すること,集積された水溶性塩類はナトリウム塩が主要な形態であることが確認された。また,リ-チング前後の空間的な塩類集積の実態を土壌中の電気伝導を測定することによって,つまり,塩類高集積区と塩類低集積区の土壌表面の空間的な変化を調査した結果,リ-チング前後の塩類集積の程度は大きく異なり,作付終了後の多量の表面潅漑が土壌中の塩類洗脱に極めて効果的であることを明確にした。さらに,塩類高集積区の土壌管理としては,潅漑用水路と排水路を分離し,暗渠の施工による地下水位の低下を促し,塩類の毛管上昇を抑えることが肝要であることがわかった。 第三の研究テ-マでは,水資源に対応した緑化に適する樹種と適切な水管理を確立することを目的として,砂漠の固定,飛砂防止に成功した地域に生育する樹木9種類を選定し,PーV曲線法によって水分生理特性を調べ,各樹種の耐乾性の差異を検討した。この結果,沙冬青,中間錦鶏儿,及び黄柳は極めて耐乾性が大きいことが認められ,喬木(高木)と潅木(低木)の水分生理特性を明らかにした。沙冬青,中間錦鶏儿,黄柳,側柏,沙棗,叉枝圓柏,差把戛蒿,多花桎柳,刺柏などの耐乾性のある植物は無潅漑で生育し,乾燥地の沙坡頭でも降雨のみで生育が可能であり,飛砂防止のために有効な喬木,潅木となることを確認した。さらに,樹木の成長と潅漑との関係を調べるため,潅漑によって育成中の樹木5種について,ピンマ-キング法によって肥大成長経過を組織解剖学的に調べた。その結果,銀白楊は恒常的に成長したが,沙棗,側柏では周期的に成長の停滞が生じ,樟子松,旱柳では一回の停滞を認め,肥大成長と潅漑周期との関係を明らかにした。つまり,水ストレスが樹木の生育に極めて敏感に反応することから,貴重な水資源を有効に使用するために,樹木への潅漑についても適切な水管理が重要であることを確認した。
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