研究課題/領域番号 |
01041064
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
藤原 健蔵 (藤原 健藏) 広島大学, 文学部, 教授 (90034545)
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研究分担者 |
SINGH B.V. アンバー大学, 教授
SHARMA R.C. ジャワハルラルネルー大学, 国際研究学部, 教授
友澤 和夫 東北大学, 理学部, 助手 (40227640)
牧野 一成 佐世保工業高等専門学校, 講師 (00173724)
岩崎 公弥 愛知教育大学, 教育学部, 助教授 (80135392)
岡橋 秀典 広島大学, 文学部, 助教授 (00150540)
河野 憲治 広島大学, 生物生産学部, 助教授 (50034476)
中里 亜夫 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (60044343)
米田 巖 (米田 巌) 広島大学, 総合科学部, 教授 (90012533)
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研究期間 (年度) |
1989 – 1991
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研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
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配分額 *注記 |
24,000千円 (直接経費: 24,000千円)
1991年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1990年度: 11,000千円 (直接経費: 11,000千円)
1989年度: 10,000千円 (直接経費: 10,000千円)
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キーワード | 干ばつ常習地域 / 村落変化 / 潅漑 / 村落社会構成 / 指定部族民 / 政策効果 / 商品作物 / 生態系変化 |
研究概要 |
独立以来の精力的な潅漑投資や高収量品種の導入によって、1980年代はじめ、インド農業は念願の食料自給を達成した。しかし、国内には劣悪な自然環境ゆえに、そうした農業発展の波に乗り切れずにいる乾燥地域や山間地域がなお数多く残っている。本研究の目的はかかる低開発農業地域の内、インド中部の干ばつ常習地域を対象にして、その農法体系や農村構造を自然環境要素と関連づけて、生態地理学的に解明するものである。特に、干ばつ発生の実態と、1970年代以降の農業・農村開発の諸政策と農村社会変化の関係を明らかにすることに力点をおいた。 調査方法は、村落レベルのインテンシブな調査を中心に、適宜、関係官庁の資料収集、聞き取り調査を並行して行った。村落の選定には、干ばつ地域であるとともに、経済発展段階が異なり、また社会・文化的にもカ-スト・トライブなどの多様性を有することを基準とした。平成元年度はマディヤプラデ-シュ州において、2村落(インド-ル県ナハルケ-ダ村、モレナ県ディカトプラ村)の調査を実施し、平成2年度は、マハラシュトラ州の2村落(プ-ナ県ダヒワディ村、同県バブルガオン村)、マディヤプラデ-シュ州の1村落(グナ県ガデ-ル村)を新規に調査するとともに、前年度調査のマディヤプラデ-シュ州2村落の補足調査も行った。平成3年度には、これら村落に昭和62年度調査のラジャスタン州の1村落を加え、またインドから共同調査者のシャルマ教授を招いて、インド干ばつ常習地域の農業と村落変化について総括検討を行った。 研究の成果は、『インド・干ばつ常習地域の農業と村落変化』の題名で刊行した。我々の調査した6村落の分析結果から得られた結論は、以下の通りである。干ばつ常習地域をはじめ後進的農村地域を対象とした政府の開発計画は、当該地域の経済と生活の向上に一定の効果をあげ、一部で住民に自己革新の意識を与えていることは否定できない。しかし、以下のような、なお看過できないいくつかの問題があり、それらを改善しない限り持続的な発展は期待できない。 (1)開発計画が中央の政治状況に左右されて猫の目のように変わるため、行政末端では本来の主旨を生かして執行できないことが多い。所期の成果を挙げないまま打ち切られるケ-スが見受けられる。 (2)融資・補助金による村民の自力向上を期待しているが、それに応えるだけの経済水準になく、開発資金は依然贈与的性格にとどまっていることが多い。より基本的な社会基盤の整備との適合性が必要である。 (3)後進地域の農民といえども市場諸力に敏感となり、商品作物の導入を志向している。しかし、過大な投入財に依存する傾向が強く、借財がかさんで経営を困難にしている。 (4)経済性を求めて農民個々が自立的となり、ジャ-ティ制、ジャジマニ制で代表される伝統的村落社会の規範は急速に崩壊している。その結果、弱者層ほど経済社会のきびしい影響を直接に受けている。 (5)自然条件がきびしく開発ポテンシャルの少ない地域で、住民が競って土地・水資源を利用するようになったので、諸種の荒廃と資源の枯渇が急速に進行している。 本調査の最終的な目的は、インド地誌書の完成でもあった。上記の刊行物によってその目的は達成されたと考えるが、継続的な地誌研究のためには分析の基礎となる資料のデ-タベ-ス化が肝要である。それゆえ、現地調査を行った6つの標本調査村の基本資料(世帯悉皆調査等)を、広島大学総合地誌研究資料センタ-所蔵な南アジア地誌情報デ-タベ-スシステムに追加入する作業を行った。入力件数は世帯総数769の家族構成、職業、姻戚関係、土地所有、飼育家畜等の10数項目であり、これにより標本調査村の社会的経済的全体像をきわめて正確かつ効率よく把握することが可能となった。インド地誌の動態的研究のためには、将来の追跡調査が欠かせないことは言うまでもない。このシステムによってその基盤は整えられたといえよう。
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