研究課題/領域番号 |
01041066
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
岡市 友利 香川大学, 農学部, 教授 (90035965)
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研究分担者 |
児玉 正昭 北里大学, 水産学部, 教授 (40050588)
石丸 隆 東京水産大学, 助教授 (90114371)
福代 康夫 東京大学, 農学部, 助手 (10165318)
根本 敬久 東京大学, 海洋研究所, 教授 (00013558)
越智 正 香川大学, 農学部, 助教授 (00035990)
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研究期間 (年度) |
1989
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研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
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キーワード | 赤潮 / 有毒プランクトン / Pyrodinium / Alexandrium / Noctiluca / タイ湾 / チャオプラヤ川 / 富栄養化 |
研究概要 |
東南アジア諸国の沿岸では近年次第に富栄養化が進行しつつあり、それに伴って有毒プランクトン赤潮の発生が食品衛生や水産業における重大な問題となり、特にまひ性貝毒の出現により、この10年間に1,000名以上の人命が失われていることが報告されている。そこで本研究では、タイ、ブルネイダルサラムおよびフィリピンにおいて、生物環境学的調査を行い、赤潮発生や貝類毒化の防止のための基礎資料を得ることを目的とした。 5月23日から同30日にかけて、ブルネイダルサラムの首都であるバンダルベリセガワン沿岸の赤潮発生状況調査と有毒プランクトンであるPyrodinium bahamenseのシスト調査を行った。ブルネイダルサラムでは1976年3月に5平方マイルにわたる赤潮が発生し、イワシなどの魚類や貝類が57〜23POMU/100gまで毒化したとの資料を得ると共に、P.bahamenseのシスト調査を行った。すでに発芽した殻の存在は認めたが、特にシスト分布の中心がどこにあるかは確定できなかった。 ついで、9月3日から9日までの間、マニラ湾及びルソン島中西部のザンバレス沿岸で、フィリピン水産局のMr.ゴンザレスやフィリピン大学海洋研究所と共同で調査を行った。マニラ湾で10点、ザンバレス地方のマシンロック湾で8点、サンタクルス湾で4点、スビック湾で4点の海水、底泥の採取を行い、またP.bahamenseの出現状況を調査した。水温はおおむね28〜30℃、塩分は28〜34〓であった。P.bahamenseの遊泳体は認められなかったが、底泥1g当たり約100細胞を発見することができた。1989年は6月下旬に出現し、7月上旬に赤潮になっており、シストはこの赤潮時に形成されたものと思われる。 タイ湾の調査は、11月6日より25日までに実施した。6回にわたりチャオプラヤ川及び河口域の水質、底質及びプランクトンを採取して分類及び分析を行った。その結果、Dinophypis candata、Pyrodinium bahamense var.compressum、Alexandrium corhorticula、Chattonella sp.cf.marinaを分離、培養し、その形態的特徴を明らかにした。また、Noctiluca scintillansについてはその寄生性藻類の形状を調べ、円相当径で3.5μmin1.9〜max5.1μの値を得た。本寄生性藻類はPedinomonas mictilucaで、その培養も試み、培地組成についてある程度の見通しを得た。タイ湾のN.scintillansは緑色を呈するが、日本のN.scintillansと同様に260及び320nmに吸収を有する物質の存在を認めた。チャオプラヤ川のバンコクの中心付近の川水中の栄養塩は、NH_4ーN0.34(mg/l以下同じ)NO_2ーN0.067、NO_3ーN1.5、PO_4ーP0.11であった。河口から数km沖合ではNH_4ーN0.15〜0.18、NO_2ーN0.01、NO_3ーN0.77〜1.11、PO_4ーP0.05と低下しているが、かなり沿岸域が富栄養化していると考えられる。しかし、沈降物や堆積物の窒素やリンの分析結果から、チャオプラヤ川によって運ばれるこれらの物質は河口域で沈降し、海水中で著しく濃度を低下するが、堆積物の悪化の進行が心配される。なお、バンコク東方100kmのアンシラ付近ではNH_4^+0.007、NO_2^<-N>0.277、PO_4ーPは0.02程度であった。 平成2年度以降においては、フィリピン沿岸でのPyrodinium赤潮について十分な調査を行うと共に、インドネシア沿岸の富栄養化の進行状況を調べたいと考える。
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