研究課題/領域番号 |
01041069
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
村井 実 九州大学, 理学部, 助教授 (80117267)
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研究分担者 |
YONG H.S. マラヤ大学, 動物学教室, 教授
SOMBAT POOVA プケット海洋生物センター, 研究員
松政 正俊 岩手医科大学, 教養部, 助手 (50219474)
武田 哲 東北大学, 理学部・附属臨海実験所, 助手 (50171640)
五嶋 聖治 北海道大学, 水産学部, 助教授 (50153747)
YONG Hoi-Sen Department of Zoology, University of Malaya. Professor
POOVACHIRANON Sombat Phuket Marine Biological Center. Researcher
POOVACHIRANO ソンバツト プケット海洋生物センター, 研究員
SOMBAT Poova プケット海洋生物センター, 研究員
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研究期間 (年度) |
1989 – 1991
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研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
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配分額 *注記 |
16,800千円 (直接経費: 16,800千円)
1991年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1990年度: 8,000千円 (直接経費: 8,000千円)
1989年度: 7,800千円 (直接経費: 7,800千円)
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キーワード | スナガニ科 / Uca属 / Ilyoplax属 / 求愛行動 / 行動の進化 / 系統類縁関係 / 陸上適応 / 空気呼吸 / 行動進化 / 分岐年代 / 社会行動 / 交尾様式 / Waving / 系統 / より陸上への適応 / Ocypodidal / Uca / Ilyoplax |
研究概要 |
1.1989年度:マレ-シア、セランゴ-州、セメンタにてUca属、Ilyoplax属の行動・生態の調査を8月〜12月に行った。Uca roseaでは、求愛行動を詳細に記録した。Uca属の求愛行動は種間変異が著しく、大鉗脚を使って行うウェ-ビングの様談やその行動に費やす時間は、roseaでは極端に単純で、時間が短い。それで求愛行動のもう一方の極端な種、lacteaとの比較研究から、後者の種やその近縁種の示す典型的な求愛のオリジンに相当するものではないかという仮説を提案した。その他には、交尾のためのペア形成、産卵、ゾエアの放出などの記録をとり、ペアでいる日数、抱卵期間および繁殖活動と潮汐周期の関係を明らかにした。 マレ-シア産のUca属7種類についてアイソザイム分析を行った。遺伝標識として、10種の酵素蛋白の構造を支配する13遺伝子座を使い、変異の検索は水平式澱粉ゲル電気泳動法によった。種間の遺伝的差異を定量することによって、種間の系統的相互関係を推定し、それに基づいて行動の種間比較をするのが目的である。lacteaを含むCeluca亜属はroseaを含むDeltuca亜属や他の亜属から早い時期に分岐し、系統的にかなり離れていることがわかった。(Celuca亜属ーDeluca亜属ではD=0.912)。この結果から、インド・西太平洋地域で、Celuca亜属が他の亜属とともに種分化したという考え方には疑問がある。Celuca亜属(本亜属に含まれる大部分の種は新大陸に分布)よりもむしろインド・西太平洋に分布が限られ、本亜属に行動が比較的近いAmphiuca亜属との比較が今後の課題として残った。 Ilyoplax属については、1990,91年の結果をまとめて次に記す。 2.1990年度:タイ・プケット島・アオタンケンおよびアオナンバ-にて、8月〜翌年3月まで行った。Ilyoplax属について、Uca属と類似した生息場所を占めるが、求愛行動の種間の変異がUca属とくらべて少ない。本属の種分化を検討するための基礎的な資料を得ることが目的で、前年から引き続いて、I.orientalis,delsmain,gangeticaの3種を対象として、求愛行動の調査を行った。いずれも、wavingで雌を招く求愛行動が見られ、ペア形成の様式に基本的な差は無かった。wavingのフォ-ムには種間の差はあったが、Ucaのように類別化出来なかった。wavingの活発な時期と全く行わない時期が個体毎に繰り返され、活発な時期には、体色が白く変化した。これは温帯・亜熱帯の同属のチゴガニやミナミチゴガニでは起こらないので、熱帯のIlyoplaxの特徴と考えられる。これら3種が、Ilyoplax属の祖先種に近いか否かについて判断するためには、熱帯に生息する他種をもう少し調べることが必要と思う。 Uca属について、本年はU.tetragononの求愛行動を調べた。本種のwavingのフォ-ムは、roseaやlacteaの中間を示し、ペア形成のあり方もroseaとlacteaのタイプの両方が見られ、roseaがオリジンという仮説と両立することが判明した。また、本種では抱卵中の雌が雄とペア形成を行うことが普通に見られ、雄がその雌をガ-ドし、ゾエアを放出後交尾が行われ、さらに交尾後ガ-ドを産卵まで続けることが明らかになったことなど、これまで知られていなかった事実をいくつか明らかにすることが出来た。 Uca属やIlyoplax属の行動進化を、系統的相互関係ばかりでなく、生活史適応、すなわち陸上への適応の程度に関連して検討することを試みた。両属を含むスナガニ科を主な対象とし、生息地の環境特性ならびに形態・生理に関する諸形質のデ-タを収集した。鰓数はスナガニ科では、8対で安定しているイワガニ科に較べて変異が多い、Uca属とIlyoplax属ではそれぞれ4〜7対、6〜8対であった。また肺のティンパナはイオンの能動輸送の場として機能していないが、クチクラの性質に基づくイオンあるいは水の透過性に種間での差が認められた。また空気中から酸素を取り込むメカニズムを中心とした鰓の形態的な面と機能的な面からの、この問題に対するアプロ-チは現在進行中である。
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