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タイ東北地方における先史時代生産遺跡の発堀調査

研究課題

研究課題/領域番号 01041073
研究種目

国際学術研究

配分区分補助金
応募区分学術調査
研究機関鹿児島大学

研究代表者

新田 栄治  鹿児島大学, 教養部, 助教授 (00117532)

研究分担者 チャリット チャイクンチ  コンケン大学, 人文・社会科学部, 講師
ポーンチャン スチッタ  シルパコーン大学, 考古学部, 講師
シーサック ウ゛ァリボート  シルパコーン大学, 考古学部, 準教授
西谷 大  国立歴史民俗博物館, 考古研究部, 助手 (50218161)
大貫 静夫  東京大学, 文学部, 助手 (70169184)
SRISAKRA Vallibhotama  Faculty of Archaeology, Silpakorn University
CHALIT Chaikunchit  Faculty of Humanities and Social Sciences, Khon Kaen University
ポーンチャイ スチッタ  シルハ゜コーン大学, 考古学部, 講師
チャイカンチット チャリ  コンケン大学, 人文・社会科学部, 講師
スチッタ ポンチャイ  シルパコン大学, 考古学部, 講師
ウ゛ァリボートム シーサッ  シルパコン大学, 考古学部, 準教授
鷹野 光行  お茶の水女子大学, 文教育学部, 助教授 (20143696)
研究期間 (年度) 1989 – 1991
研究課題ステータス 完了 (1991年度)
配分額 *注記
27,000千円 (直接経費: 27,000千円)
1991年度: 11,000千円 (直接経費: 11,000千円)
1990年度: 9,000千円 (直接経費: 9,000千円)
1989年度: 7,000千円 (直接経費: 7,000千円)
キーワード東北タイ / 先史産業 / 製鉄 / 製塩 / 森林破壊 / 古代産業 / 塩 / 考古学 / 生産遺跡 / 編年
研究概要

東北タイの過去の繁栄が農業いがいの産業、とりわけ製鉄業と製塩業とによって得られた富の蓄積という経済的基盤をもっていたという仮説を実証し、東南アジア史の再構築をする目的でこの調査研究を実施した。
平成元年度はスリン県チュンポンブリ郡バンクワオコン村の集落遺跡ノンヤン遺跡を、平成2年度はブリラム県サトツク郡バンドンプロン村の製鉄遺跡バンドンプロン遺跡を、平成3年度はナコンラチャシマ県ブアヤイ郡バンニュウマイ村の製塩遺跡ノントウンピ-ポン遺跡の発堀調査を実施した。
ノンヤン遺跡はムン川の水運の要衝に位置する拠点的集落であり、紀元前2世紀の層から倉庫と考えられる平地建築物4棟、炭化米等を、そのすぐ上層では集落防衛用の木柵列と木柵列構築用の溝、土木建築工事に使用された鉄斧3点が発見された。また紀元後と推定される層からは集落を取り囲む防衛用の大規模な断面V字状の環壕が発見された。火災にあった建物や柵列、環壕などは軍事的緊張も含む社会の緊張状態を示している。また、ほぼ全層位にわたって多数の二次葬の骨壷があった。層位的発堀の結果、土器の層位的変化が解明され、ムン川中流域の土器編年の大綱が確立できた。
バンドンプロン遺跡貞は、紀元前4ー2世紀ころの製鉄遺構が良好な状態で発堀された。製鉄炉および製錬炉と考えられる炉が17基、ゴミ捨て穴1基、工人の作居跡1基などである。出土した製鉄遺構および採集した鉄滓の金属学的分析の結果、小規模な施設を多数稼働させた、鉄鉱石を原料とした直接製錬法であることが解明された。製鉄遺構の下層からは墓地が出土し、7基の伸展葬人骨を検出し、うち1基は青銅装飾品や玉類を身につけた首長であった。バンドンプロン遺跡からノンヤン遺跡にいたる時代に、埋葬様式が伸展葬から二次葬へ変化したことも重要な知見である。
ノントウピ-ポン遺跡では、紀元1ー2世紀ころと推定される10期にわたる製塩活動期が確認され、貯水槽、採滷装置、煎熬炉など、粘土で構築された製塩夢構多数が検出された。また、製塩土器多数が出土した。発堀により検出した製塩遺構の考古学的研究と製塩の民族誌との比較研究により、乾季に地表面に出た塩華土壌を集めて水を注ぎ、滷水を溶出し、製塩土器による煎熬によって塩を作る製塩法であったことが具体的に解明された。また、多数の製塩施設が同時に稼働していたことも推定された。
年代的に紀元前後ころの製鉄・製塩遺跡が初めて発堀され、当時の技術が具体的に解明された。また、ラテライト土壌と含塩土壌という農業不適の東北タイの自然環境に適応して、製鉄と製塩を紀元前ころには大々的に行っていたが、自給自足的生産を越えて、生産された鉄と塩は東南アジアの近隣地帯に輸出されたものと考えられる。鉄も塩もかなり高額な商品であったことは歴史時代の中国側史料からもクメ-ル碑文史料からも明かである。鉄と塩はムン川の水運によって運搬されたと推定できる。バンドンプロン遺跡の首長らしい男性が示すように、すでに階層が社会が生まれていた。また、ノンヤン遺跡の防衛施設に示されるように、社会間の緊張も生じていた。塩と鉄の生産を把握し、河川交通の要路を掌握することがひじょに重要であった。紀元以後東北タイに爆発的に増加する大規模な環濠集落は、鉄と塩によってもたらされた経済的発展と人口増加が背景にあったと考えられる。
この二つの産業は燃料として大量の薪を必要とするエネルギ-多量消費産業である。そのため、工場の周囲では森林破壊が進展した。その結果、燃料の枯渇を招くようになった。同時に、10世紀に産業革命を達成した中国が、良質で安価な鉄製品を大量に東南アジアに輸出し始めると、市場競争に破れることになった。環境破壊と国際市場競争での敗退が東北タイ社会の衰退の大きな要因として理解される。

報告書

(3件)
  • 1991 実績報告書   研究成果報告書概要
  • 1990 実績報告書
  • 研究成果

    (21件)

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  • [文献書誌] 新田 栄治: "Archaeological study on the ancient ironsmelting and saltーmaking industries in the northeast of Thailand." 東南アジア考古学会会報. 11. 1-46 (1991)

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      「研究成果報告書概要(和文)」より
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      1991 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] 新田 栄治: "東南アジア考古学からみた先史産業と環境" 文明と環境. 3. 31-35 (1991)

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      1991 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] 新田 栄治: "東北タイ先史時代生産遺跡の発堀調査プロジェクトーノンヤン遺跡とバンドンプロン遺跡ー" 東南アジア研究. 29ー2. 227-232 (1991)

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  • [文献書誌] 新田 栄治: "古代東北タイの産業と社会変動ー塩と鉄とノンヤン遺跡ー" 月刊 しにか. 1ー9. 46-47 (1990)

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      1991 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] 新田 栄治: "鉄・塩・銅鼓のア-ケオコスモス" 文明のクロスロ-ド Museum Kyushu.

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      1991 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] Eiji NITTA: "Archaeological study on the ancient iron-smelting and salt-making industries in the northeast of Thailand." Journal of Japan Society for Southeast Asian Archaeology. 11. 1-46 (1991)

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  • [文献書誌] Eiji NITTA: "Prehistoric industries and the environment on the basis of Southeast Asian archaeology." Culture and Environment. 3. 31-35 (1991)

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      「研究成果報告書概要(欧文)」より
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      1991 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] Eiji NITTA: "Archaeological project of the excavations of prehistoric industrial sites in the northeast of Thailand." Southeast Asian Studies. 29-2. 227-232 (1991)

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      1991 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] Eiji NITTA: "Ancient industries and the social movements in the northeast of Thailand." Sinica. 1-9. 46-47 (1990)

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  • [文献書誌] Eiji NITTA: "Archaeocosmos of iron, salt and bronzedrums." Museum Kyushu.

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      1991 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] 新田 栄治: "Archaeological study on the ancient ironsmelting and saltーmaking industries in the northeast of Thailand." 東南アジア考古学会会報. 11. 1-46 (1991)

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      1991 実績報告書
  • [文献書誌] 新田 栄治: "東南アジア考古学からみた先史産業と環境" 文明と環境. 3. 31-35 (1991)

    • 関連する報告書
      1991 実績報告書
  • [文献書誌] 新田 栄治: "東北タイ先史時代生産遺跡の発掘調査プロジェクトーノンヤン遺跡とバンドンプロン遺跡ー" 東南アジア研究. 29ー2. 227-232 (1991)

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      1991 実績報告書
  • [文献書誌] 新田 栄治: "古代東北タイの産業と社会変動ー塩と鉄とノンヤン遺跡ー" 月刊しにか. 1ー9. 46-47 (1990)

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      1991 実績報告書
  • [文献書誌] 新田 栄治: "鉄・塩・銅鼓のア-ケオコスモス" 文明のクロスロ-ドMuseum Kyushu.

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      1991 実績報告書
  • [文献書誌] 新田 栄治: "東北タイ古代内陸部製塩の史的意義に関する予察 ー考古学・歴史学・民族学・民族誌の接点からー" 考古学と民俗誌 六興出版. 173-195 (1989)

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      1990 実績報告書
  • [文献書誌] 新田 栄治: "東南アジア考古学の課題" 講座 東南アジア学 弘文堂. 4. (1991)

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      1990 実績報告書
  • [文献書誌] 新田 栄治: "東北タイ南部における集落構造の変遷 ースリン県,チェンポンブリ郡、ノンヤン遺跡の事例からー" 日本考古学協会 総会 研究発表要旨. 第56回. 75-77 (1990)

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      1990 実績報告書
  • [文献書誌] 新田 栄治: "古代東北タイの産業と社会変動 ー塩と鉄とノンヤン遺跡ー" 月刊 しにか. 1ー9. 46-47 (1990)

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      1990 実績報告書
  • [文献書誌] 新田 栄治: "タイ東北地方における先史時代生産遺跡の発掘調査 ーノンヤン遺跡・バンドンプロン遺跡ー" 東南アジア考古学会会報 第11号. 11. (1991)

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      1990 実績報告書
  • [文献書誌] 新田 栄治: "東北タイ先史時代製鉄の歴史的意義ーブリラム県サトゥク郡バンドンプロン遺跡の発掘よりー" 日本考古学協会総会研究発表要旨. 第57回. (1991)

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      1990 実績報告書

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公開日: 1989-04-01   更新日: 2016-04-21  

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