研究課題/領域番号 |
01041079
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
山岸 哲 大阪市立大学, 理学部, 教授 (80101286)
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研究分担者 |
江口 和洋 九州大学, 理学部, 助手 (60136421)
小山 直樹 京都大学, アフリカ地域研究センター, 助教授 (40027496)
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研究期間 (年度) |
1989 – 1991
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研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
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配分額 *注記 |
24,500千円 (直接経費: 24,500千円)
1991年度: 9,500千円 (直接経費: 9,500千円)
1990年度: 7,500千円 (直接経費: 7,500千円)
1989年度: 7,500千円 (直接経費: 7,500千円)
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キーワード | マダガスカル島 / アカオオハシモズ / ジカッコウ類 / ワオキツネザル / ベロ-シファカ / 社会構造 / 適応放散 / 共存 / 採食行動 / オオハシモズ科 / 原猿 / 採食習性 / 生態的地位 |
研究概要 |
鳥類:マダガスカル島の特産科であるオオハシモズ科は14種の種分化し、それぞれが生態的地位を微妙に違えて共存していることを前年度までの調査で明らかにした。本年度は14種のうち最も地上近くで生協し、捕獲が容易なアカオオハシモズの社会構造を調査した。調査は西部乾燥林帯に位置するアンピジョアラ(アンカラファンチカ)保護区の林内に550x450mの方形区を設定して行なった。方形区内および方形区に接する周辺には15グル-プがグル-プテリトリ-を構えて生息していた。構成員数が2羽(ペア)のものが7グル-プ、3羽(ペア+若鳥、あるいは2雄+1雌)が7グル-プ、4羽(2雄+1雌+若鳥)が1グル-プあった。すべてのグル-プに共通する特徴は成雌が1羽だけ存在することで、本種は単雌群の社会をもつといえる。6グル-プで若鳥がみられたが、これらの若鳥は色彩パタ-ンから判断して雄と推定された。若鳥はヘルパ-として巣やグル-プテリトリ-の防衛、雛への餌運びに参加することが確認された。しかし、2雄+1雌のグル-プでは、一方の雄がヘルパ-なのか、同一巣で一妻二夫が起こっているのかは、今回の調査では判定できなかった。この問題は、ヘルパ-である若雄が当該ペアの息子であるかどうかも含めて、今後の長期研究によって明らかにする必要がある。 本年度は、同所的に生息するジカッコウ類3種の共存様式についても調査した。ジカッコウ類もマダガスカル特産のグル-プで、1属10種に種分化しているが、生態学的な研究はこれまで行なわれていない。3種は同じ林内で利用する空間の高さを違えることで共存していた。特に、「地上性」とされる2種の間でも、休息や羽繕いの際に利用する高さが異なり、また採食方法にも微妙な違いがあることが明らかになった。 原猿類:ワオキツネザルについては南部のベレンティ-保護区で調査した。ここでは初年度より徹底した個体識別がなされており、24群の存在が判明している。それらの内で、27頭・13頭・25頭からなる3群を中心に観察した。各群れは複数の雄と複数の雌に若干の亜成個体や幼個体が含まれる複雌複雄群であった。3群の20雌の内19雌(95%)が20頭の赤ん坊を出産し、1雌は双子を産んだ。本種では成雌はほぼ毎年出産していると考えられる。全出産の80%は8月下旬から9月下旬の間に起こったが、出産期には91日間(8月21日〜11月19日)の幅があった。産まれた全赤ん坊の内、5頭が調査期間中に消失したので死亡率は25%と推定された。しかし死亡率は群れによって異なり、ある一つの群では8頭の赤ん坊の内4頭が死んだ。赤ん坊の死亡要因はよく判らないが、枝から落下死したり、母親同士の闘争中に傷ついたり、犬・猫・ジャコウネコ・タカなどに襲われて死亡するものと想定され、ハイタカによる襲撃を強く示唆する事例を目撃した。赤ん坊が消失する時期がはっきりしているものについては、2頭が生後1ヶ月以内、2頭が2ヶ月以内、1頭が4ヶ月以内であった。これらの結果と、前年までに得られた結果を総合し、ワオキツネザルの群れの誕生、崩壊、雌集団による群れの奪取という大きな社会変動を継時的に明かにし、本種がなぜ雌中心の社会をつくるのかという問題を今後解明していきたい。 ベロ-シファカについては、同じくベレンティ-保護区で、個体識別された3群についてほぼ9ヶ月にわたり継続研究を行なった。シファカの社会は1または複数頭の繁殖可能な雌と1頭の繁殖活動が非常に高い雄、および他の雄(たち)から形成されている。そこで各群れの各個体の交尾関形を確実におさえる努力をした。この繁殖活動の高い雄(第一雄)は最も高頻度にマ-キング活動をするが、他の雄たちのマ-キング活動を含む繁殖行動が、この第一雄の存在によって社会的に抑制されているかどうかを、今後のデ-タ解析によって明らかにしたい。更に本年度は異なる林相に生息する2群の採食活動を記録することによって、餌となった植物種を明らかにした。この食物の量と質の違いから、シファカの群れのサイズの違いを説明できるかどうかを検討したい。いずれにせよ、シファカの調査については研究協力者が帰国着後であるため、デ-タの分析は未だ不十分である。
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