研究課題/領域番号 |
01041082
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 慶応義塾大学 |
研究代表者 |
高梨 和紘 (1991) 慶応義塾大学, 経済学部, 教授 (50051785)
矢内原 勝 (1989-1990) 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (40051057)
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研究分担者 |
OMARI C.K. ダルエスサラム大学, 人文社会学部, 教授
CHANDA R. ザンビア大学, 自然科学部, 上級講師
UDO R.K. イバダン大学, 社会科学部, 教授
遠藤 匡俊 岩手大学, 教育学部, 助教授 (20183022)
半澤 和夫 日本大学, 農獣医学部, 講師 (60147676)
池谷 和信 北海道大学, 文学部, 助手 (10211723)
坂本 邦彦 尚美学園短期大学, 一般教育, 講師 (20215643)
吉田 昌夫 中部大学, 国際関係学部, 教授
島田 周平 立教大学, 文学部, 教授 (90170943)
矢内原 勝 作新学院大学, 経営学部, 教授 (40051057)
UDO R.K イバダン大学, 社学科学部, 教授
境田 清隆 東北大学, 理学部, 助手 (10133927)
高梨 和紘 慶應義塾大学, 経済学部, 助教授 (50051785)
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研究期間 (年度) |
1989 – 1991
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研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
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配分額 *注記 |
35,000千円 (直接経費: 35,000千円)
1991年度: 15,000千円 (直接経費: 15,000千円)
1990年度: 12,000千円 (直接経費: 12,000千円)
1989年度: 8,000千円 (直接経費: 8,000千円)
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キーワード | 小農 / 経済行動 / 経済的反応 / 危険分散 / 耕作形態 / インフォ-マル・セクタ- / 賃金労働者 / 労働移動 / アフリカ小農 / 小農の経済行動 / アフリカの賃金雇用 / アフリカの中小企業 / ロ-カル・マ-ケット / 牧畜民の生業活動 |
研究概要 |
本研究は、アフリカの小農社会の変化の一側面を、小農の経済行動や選択行動といった視点から解明しようとしたものである。アフリカの小農は、自然環境の変化や社会的経済的諸変化に対して、自給自足的性格、企業家的精神、危険分散化指向、社会的ネットワ-クへの依存等、様々な選択肢を選ぶことによって対応してきた。それが70年以降、農業危機を生じさせてくるようになったのはどのような理由によるのであろうか。小農が見せる様々な行動を調査分析することによって明らかにしようとした。現地調査は農村と都市の両方で行った。農村地域としては、気候条件や生業形態の異なる農村を数カ所選定し、現地で聞き取り調査並びに耕作形態調査を行い、一方、農村出身者の出稼ぎ先である都市部では、企業の就業状況や失業後の行動調査を行った。調査実施国は、ナイジェリア、タンザニア、ザンビアの3カ国である。 ナイジェリアの農外就業の調査結果によれば、一部の開発計画地の換金稲作農民などの中には、都市部の賃金労働者よりも高い現金収入を得ている者もいるが、一般に都市部の低賃金労働者の賃金水準は、農村部の農民の現金収入の水準よりも高いことが判明した。経済的不況下においても、都市部での就業に人々が非常に強い意欲を持っている理由はこの点にあるものと思われる。また、工場従業員に対する意識調査では、たとえ失業しても故郷へ帰村するつもりはないとする者が多く、都市指向は極めて強いことが明らかとなった。 一方、エビヤ村の調査結果では、80年代の経済不況の影響を受けて、新卒の若年層が潜在的失業者として滞留し始めていることが明らかになった。しかし彼ら滞留若年層は、いわば「賃金労働者の予備軍」であり、農業基幹労働力とはなっておらず、耕作形態をみる限り農業の労働粗放化傾向は引き続いており、農業における互助労働組織も弱体化していることが判明した。農業経営において顕著であった危険分散化傾向は薄れているといえる。また若年層の向都離村、非農業部門への進出に際しては血縁的・地縁的ネットワ-クが重要な役割を演じていることが明らかになった。タラバおよびヨラ地域の牧畜民フルベ族の生業形態に関する調査では、彼らの経済活動に対する国民経済の変化の影響が、農耕民のこれに比べて比較的弱いことが示された。 ザンビアの調査では、家族内紐帯の強さはある程度みられたもののナイジェリアの農家世帯に比べて血縁ネットワ-クの働きは弱かった。牧畜を行っているマザブカ近郊の村における調査では、家計に占める牛の重要性が明らかになるとともに、耕作と牧畜との有機的連関の欠如、賃金雇用機会の極端な不足等、ナイジェリアでみられる状況と極めて対照的な現象がみられた。これは経済的変動に対する農民の対応の仕方の違いが、地域および生業形態の違いによって極めて大きいことを予想させるものである。 ザンビアのルアングワ県カウンガ村は乾燥地域にあり、干ばつの被害を受ける確率が高い。この村の二つの集落での調査結果によれば、畑に自然に生える葦を素材にしたマット製造による収入が経済的に極めて重要であることが明らかになった。また村の中では、トウモロコシを原料として醸造されたビ-ルが現金で販売され、この収入の一部は食糧の購入に当てられている。農民は、副業活動の拡大を通じて経済的変化に対応している。 タンザニアの調査においては、企業家と工場従業員との出身地の関係、農村部におけるロ-カル・マ-ケットの役割、またそこにおける小売りと仲買人の関係について調査を行った。この結果、企業が、農村と都市との中間的位置を占め、マ-ケットが農民にとって重要な役割を担っていることが明らかとなった。 タンザニア・北パレ山間農村の伝統的潅がいの水利組織の実態と最近の変化を明らかにしようとしたが、調査の結果、村行政の中で文化委員が水利に責任を持つことを望む動きや、若年労働力流出の問題等があることが判明した。さらに、北部ムワンガ県のロ-カル・マ-ケットにおける聞き取り調査の結果、農作物と魚との物々交換の実態を通じて、魚が交換財としての価値を持つことを明らかにした。
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