研究課題/領域番号 |
01041083
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 女子栄養大学 |
研究代表者 |
足立 己幸 女子栄養大学, 栄養学部, 教授 (60076156)
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研究分担者 |
亀谷 哲也 岩手医科大学, 歯学部・歯科矯正学, 助教授 (60048311)
TILITILI Pul Ministry of Health, The Kingdom of Tonga, Chif Medic
村山 伸子 女子栄養大学, 栄養学部, 助手 (80219948)
SIAOSI Aho Vaiola Hospital(The Kinogdom of Tonga), Pediatriti
飯野 四郎 東京大学, 医学部, 講師 (30010309)
奥脇 義行 女子栄養大学, 栄養学部, 教授 (80076190)
大内 妙子 神奈川県立栄養短期大学, 助手
PULOKA Tilitili S. Chief Medical Officer, Public Health, Ministry of Health, The Kingdom of TONGA.
AHO Siaosi Pediatritian, Vaoila Hospital, The Kingdom of TONGA
中野 廣一 岩手医科大学, 歯学部, 助手 (30112600)
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研究期間 (年度) |
1989 – 1991
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研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
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配分額 *注記 |
21,000千円 (直接経費: 21,000千円)
1991年度: 9,000千円 (直接経費: 9,000千円)
1990年度: 5,000千円 (直接経費: 5,000千円)
1989年度: 7,000千円 (直接経費: 7,000千円)
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キーワード | トンガ人 / イモ / キ-フ-ド / 食生態 / 小児 / 近代化 / 健康度 / 食環境 / いも / キ-フ-ズ / 栄養 / 口腔 / 免疫能 |
研究概要 |
他国に類をみないトンガ成人の"健康な肥満"の成立と小児期からの健康や食事パタンとの関係を、食環境変化との対応で明らかにするために、首都コロフォウ地区(以下K)、離島ウイハ地区(以下U)及び移住先の一つニュ-ジ-ランドマヌカウ地区の0ー19歳904名、20歳以上383名の比較調査をおこなった。 1.加齢と"健康な肥満"との関係 (1)体格(身長・体重)からみた健康度は全般に良好で、WHO基準により低栄養が問題になる児はほとんどみられない。しかし、97パ-センタイル以上の過体重児が1ー5歳U7.0%、K10.8%、6ー18歳でU6.0%、K12.5%と著しく高率を示す。特にUよりKで、男児より女児で、10歳ごろから高率でかつ個人差が大きくなる。肥満指標のBMIにおいても同様の傾向がみられ、いわゆる肥満体型の児が多いことが確認された。(2)病態、生理機能からみた健康度は必ずしも良好ではなく、要治療児、要観察児を合わせてU13.0%、K9.5%である。しかし、その主な問題点はU、K共に皮膚疾患である。これらの結果から、過体重児が多い傾向は成人の"健康な肥満"の成長過程に位置づけてよいと考えられる。しかし、一方成人について特にKで高血圧や糖尿病等をともなう"病的な肥満"が増加していること及びHBV関連マ-カ-の保有者率が高いなどの衛生状態から、本対象児でみられる過体重傾向がこれらの予備的状態とみることもできる。(3)口腔からみた健康度は小学校高学年を例にすれば、う蝕、歯肉炎共にUよりKで多く、かつここ数年著しく増加している。加えて、歯と顎骨の不調和である不正咬合は成人15.3%に対し、高学年20.5%、低学年30.9%と低年齢でより高率を示し、この影響は幼児にも及び、乳歯咬合期における叢生や閉鎖型歯列がみられている。野外調査用筋電図記録法(本調査で開発)を用い測定した咀嚼機能量の低いことと、顎骨の発育不全の関連が密接であることが示された。 2.加齢とイモを中心とする食事パタン、栄養との関係 (1)イモを中心とした食事パタンの摂食者率は、UよりKで低い。離乳食にいもを食べる児U85.7%、K53.5%、日常的な摂食児は8ー12歳84.4%、K75.2%、12ー19歳U100.0%、K88.4%である。魚の日常的な摂食児率はさらに低く、8ー12歳U51.8%、K31.3%、12ー19歳U69.3%、K27.9%にすぎない。(2)エネルギ-摂取量は、平均値としてはFAOの南太平洋地区基準値に近似しているが、個人差が大きく、特にKで著しい。脂肪からの摂取率で差が著しいが、前項1に示した過体重との個人的な関係はみられない。各種栄養素摂取についてもUよりKが平均的には摂取率が高く、かつ個人差が大きくみられた。これらはイモを中心とする食事パタンからパンを中心とする食事パタンへの移行によるところが大きく、粗せんい量の低下等咀嚼機能量の変化を含めて口腔の健康度に直接的に関係していることが示唆された。 3.キ-フ-ズを中心とした食環境の変化 食料輸入量は1976年から1990年までに40%増加し、それにともなう対象地区内の輸入食物の流通量を示す食料品店数が、U1977年2店から、1991年6店、K1977年32店から1988年78店と増加している。一方、国内産物は、K町では賃労働化や土地不足などを背景として、1990年時点でほぼ完全に自給している世帯が、Uでは、イモ100%、魚60%に対し、Kではイモ60%、魚4%と著しく少ない。にもかかわらずイモの流通量は増加せず、魚の価格は高騰するなど入手条件が悪化している。 以上、これらの結果からトンガ成人にみられる"健康な肥満"のくずれは、(1)小児期のイモを中心とする食事パタンからパンを中心とする食事パタンへの移行と密接な関係をもち進行していること、(2)病態や生理機能面より口腔面で、とりわけ不正咬合や歯肉炎を指標とする疾患で進行が著しいこと、(3)いずれも食環境の変化の著しいKが先行し、すでにUもそれらを追いかける形で進行していることが示唆された。
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