研究課題/領域番号 |
01041088
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
今富 正巳 東洋大学, 文学部, 教授 (20057889)
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研究分担者 |
山本 哲也 北九州大学, 外国語学部, 教授 (80047703)
荒井 茂夫 三重大学, 人文学部, 助教授 (00159477)
小木 裕文 立命館大学, 国際関係学部, 助教授 (70160786)
山下 清海 秋田大学, 教育学部, 助教授 (00166662)
太田 勇 東洋大学, 文学部, 教授 (00058009)
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研究期間 (年度) |
1989
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研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
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キーワード | マレ-シア / 華人 / 二言語政策 / 多元文化 / シンガポ-ル / 華僑 / 公用語 / 馬華文学 |
研究概要 |
この調査研究の目的は、東南アジア諸国の近代化の特色を華人社会の近代化に焦点を当てて解明することである。そのため、伝統的な中国人意識が現地社会で如何様に変化しているかを調べた。この作業は華人社会の日常生活の中で用いられる言語の問題が中心となる。1個の種族のアイデンティティを形成する要素は(1)血統(2)伝統文化(3)価値観(4)言語(5)生活習俗である。少数派集団は居住地域の政治・経済・文化等の変化の影響を受け、上記要素も変化する。これら要素の中、言語の状況が変化しやすいこと、その変化が鮮明で観察しやすいことから、エスニックアイデンティティの変容を考察する上での主柱にするのが適切であると考えた。われわれの作業はこのような原則を考えて実施されたが、同時に現地の特殊性や華人の特殊性も無視できないのは勿論である。調査は共同と個人の作業に分けた。共同作業は現地華人を対象に用意した約1200枚のアンケ-トの調査である。この調査結果について、われわれは充分には満足していない。有効回答数は予期よりも低目であった。本来は個人面接が最善で、実際にその通り実行したが、一部は現地の学校や団体に委託したので、不完全回答はそこから生じた。次にアンケ-トの発問内容にも若干問題があった。例えば「移住後第何代目に当るか」の問に対しての回答は、父系と母系では答えは異なる。どの場所(地区)での何代目かについても答は分れる。これらを省みて反省をしている。何れも原案作成の当初予想し得なかった。しかし有数回答数も少なくないので、全体的には有益な調査であった。共同作業はその他に、現地の研究者と研究討論会を2回、座談会を2回開催したので、現地華人の抱く問題意識について相当の知見を得た。個人作業においては、資料の収集、協力者の発掘、聞き取り調査、未踏地の訪問等等で極めて大きな成果を得た。現在の段階で最終的結論を出すのは早過ぎるが、従来我が国に見られた「華僑観」に拠ったのでは、現実の実態を理解できないだけでなく、さらに誤判断を生み出すおそれがあることを痛感している。華人社会は主方向としては、脱中国・非中国化の方に向っているが、その過程ではさまざまな問題を派生させている。また中国本土の存在が、なお若干の影響を保留していることも無視できない。本年度の作業経験は、次年度の活動のため貴重な参考を提供した。
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