研究課題/領域番号 |
01041089
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 武蔵大学 |
研究代表者 |
丸橋 珠樹 武蔵大学, 人文学部, 助教授 (20190564)
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研究分担者 |
ムワンカ゛ M. ザイール科学省, 中央自然科学研究所・生物学部, 研究員
ムワンザ N. ザイール科学省, 中央自然科学研究所・生物学部, 部長
三谷 雅純 京都大学, 霊長類研究所, 非常勤講師 (20202343)
湯本 貴和 神戸大学, 教養部, 助手 (70192804)
浜田 穣 岡山理科大学, 教養部, 専任講師 (40172978)
山極 寿一 京都大学, 霊長類研究所, 助手 (60166600)
MWANGA Milinganyo Centre de Recherches en Sciences Naturelles, Zaire
MWANZA Ndunda Centre de Recherches en Sciences Naturelles, Zaire
NDUNDA Mwanz 科学省自然科学研究センター, 生物学部(ザイール), 部長
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研究期間 (年度) |
1989 – 1991
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研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
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配分額 *注記 |
23,700千円 (直接経費: 23,700千円)
1991年度: 6,400千円 (直接経費: 6,400千円)
1990年度: 9,500千円 (直接経費: 9,500千円)
1989年度: 7,800千円 (直接経費: 7,800千円)
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キーワード | 比較生態学 / ゴリラ / チンパンジ- / ザイ-ル / コンゴ / 薬草利用 / 共進化 / 道具使用 / 肉食 / 熱帯林 / 種子分散 / 種間関係 / 森林動態 |
研究概要 |
本研究計画では、1、同所的に生息するゴリラとチンパンジ-の比較生態学的研究、2、熱帯森林の構造の解析をおこない、熱帯林の果実生産様式と霊長類コミュニティ-との相互作用の研究、3、ザイ-ルに生息する、グエノン類の形態学的研究を行なった。また、ザイ-ルから、N.ムワンザ博士とM.ムワンガ研究員を日本国に招へいし成果のとりまとめを行った。 ザイ-ルのゴリラとチンパンジ-の間には生態学的地位の相違が見られた。ゴリラは、いたるところで多量に採食可能な繊維質のツルや草木を基礎食料資源として、それに大量に生産されるいくつかの果実を組み合わせていた。一方、チンパンジ-は、主に多種類の果実を離合集散しながら採食し、繊維質の草本を加えていた。2種が採食する植物種間には、大幅な重複が存在するが、その組み合わせや土地利用様式には相違が見られた。 ザイ-ルにおいて、低地熱帯林のゴリラの生息密度は、山地林の約半分程度と推測された。低地のゴリラの主食は、山地林と同じように繊維質の草本類と潅木の葉であるが、同時に多種の果実を日常的に摂取していた。果実の多い時期には、ゴリラの一日の遊動距離は長い。低地林のゴリラは、大きく季節移動をおこない、年間の遊名域面積は、山地林に比べると十倍にもなると推測された。 ゴンゴの調査地でも、ゴリラの基本食料は、草本の髄や若芽など繊維質に富んだ植物に果実を組み合わせていた。ザイ-ルとの比較から、コンゴのゴリラの生態的特色は、湿原での水草の多量摂取であった。コンゴの調査地での生息密度は非常に高く、この生態学的特質を背景としていると考えられる。 ザイ-ルの山地林では、チンパンジ-による、肉食や道具使用が確認された。また、ゴリラによる薬用植物利用と推測される行動が世界で初めて発見された。チンパンジ-でも同様な薬用植物利用と推測される採食行動が、糞分析から確認された。また、採集した百個体以上の毛のDNA解析を行い、ゴリラの種分化の過程を明らかにしてゆきたい。 ザイ-ルの低地林の構造は、複数の優占種が一様に分布しているのではなく、主要樹種の一種ないし二種が優占する小規模な林分が、モザイク状に複雑に組み合わさっていることが明かとなった。北コンゴの熱帯林は、ザイ-ルとは全く構造を異にし、3つの植生帯に明瞭に区別できた。 熱帯林の果実生産の様式を、散布者との関連で3型に分類することができる。1、林冠を構成する主要樹種、2、林冠に低密度で混じる高木種や蔓植物、3、林内に比較的高密度に生息する中、低木種や蔓植物の3型である。果実の諸特質と散布者との間には、食うものと種子散布されるものとの間での共進化を示す諸特質の関連が見られた。熱帯林に同所的に生息する霊長類コミュニティ-を構成する、ゴリラとチンパンジ-、マンガベイ類、グエノン類、コロブス類は、それぞれ、どの型の果実とその他の食料資源を組み合わせるかによって、明瞭にグル-プ分けることができた。 グエノン類の、体サイズと頭蓋骨容量との間のアロメトリ-関係の解析から、脳サイズは体サイズが小さくなるにしたがって、相対的に大きくなっていた。グエノン類の進化においては、小型のものが派生的であると言われるが、脳サイズは正比例的に小型化していなかった。 平成2年度に日本国に招へいしたN.ムワンザ博士は、同年に名古屋で開かれた国際霊長類学会に参加し、共同研究の成果を発表した。また、屋久島において野生ニホンザルの生態調査を行った。平成3年度に招へいしたM.ムワンガ氏は、分担者である浜田博士の指導のもと、グエノン類の毛の色の種内および種間比較を行ない、論文の草稿を完成させた。
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