研究課題/領域番号 |
01041092
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 大阪経済大学 |
研究代表者 |
重森 暁 大阪経済大学, 経済学部, 教授 (70036581)
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研究分担者 |
HILL Richard ミシカ゛ン州立大学, 社会・経済学部, 教授
BANGS Ralph ピッツバーグ大学, 社会・都市研究センター, 助手
TABB William ニューヨーク市立大学, 経済学部, 教授
岡本 祥浩 松阪女子短期大学, 講師 (70211810)
松岡 俊二 広島大学, 総合科学部, 助教授 (00211566)
植田 和弘 京都大学, 経済学部, 助教授 (20144397)
樫原 正澄 大阪府立大学, 農学部, 助手 (20128763)
遠州 尋美 神戸大学, 大学院・自然科学研究科, 助手 (30168819)
塩崎 賢明 神戸大学, 工学部, 助教授 (20127369)
木下 滋 阪南大学, 商学部, 教授 (10161530)
加茂 利男 大阪市立大学, 法学部, 教授 (80047357)
横田 茂 関西大学, 商学部, 教授 (80067686)
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研究期間 (年度) |
1989 – 1991
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研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
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配分額 *注記 |
18,500千円 (直接経費: 18,500千円)
1991年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
1990年度: 8,000千円 (直接経費: 8,000千円)
1989年度: 8,000千円 (直接経費: 8,000千円)
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キーワード | アメリカ合衆国 / 産業構造転換 / 日本的生産システム / 地域経済 / 地域再生 / 都市問題 / 成長管理政策 / リンケ-ジ政策 / 伝統的工業都市 / サ-ビス経済化 / 都市再生 / 都市成長管理政策 |
研究概要 |
従来の研究は、先進資本主義国間の激しい国際競争の中で合衆国産業の競争力を再び回復するために、とりわけ戦略的重要性を持つ産業分野に投資を集中し、より効率的で高い製品開発力を持つ生産システムを築くこと、そしてその文脈の中で地域のrestructuringを進める強力な地方のリ-ダ-シップを確立しようとするものである。しかし、当然のようにも思えるこの志向性は、グロ-バルな視点で見た80年代の特徴が、南北格差の一層の拡大と地球的規模での環境問題の深刻化として特徴づけられていることを考えれば、問題解決の方向性を誤らせる危険性を持つといえる。すなわち、資本主義経済が、地球的問題を解決して発展して行くことが可能かという、より基本的問題に答えようとする方向性を持たないためである。もちろん、合衆国にあってもSustainable Developmentの視点を持った環境経済学の展開はあるが、それは構造転換と地域再生にかかわる研究と、ほとんど接点を持っていない。合衆国大企業の多国籍化と脱工業化を最も辛辣に批判してきたレギラシオン学派の場合でも、その指摘は当てはまる。すなわちレギラシオン学派の規定によれば、20世紀資本主義経済を支配してきたFordismの核心は、単に大量生産を実現した自動化とTaylorismにあるだけはでなく、production workersの賃金レベルを劇的に引き上げることによって大量生産に照応する大量消費市場を築いたこと、すなわち内需主導型の蓄積方式そのものにある。ところが、彼らが正しく分析するように、ヨ-ロッパ、日本から低価格の商品が北米市場に流入し始めたことによってその維持が困難になったとき、硬直化した生産システムを改善し、労働者の労働意欲を高め、優れた品質の製品生産による対抗によって、内需主導型の蓄積構造を再建するのではなく、合衆国の大企業は、国内の不採算部門を切り捨て、賃金水準が低く、税負担や環境規制などのコスト要因の小さい発展途上国に生産過程を移すことによって収益性の回復をはかった。すなわち、Fordismの蓄積方式を自ら破壊しつつrestructiringを進めたのであって、多国籍化して以降の合衆国大企業はすでにFordist companiesですらないと言わなければならない。その結果、国内市場を破壊しただけでなく、低開発国の搾取によって世界市場の拡大をも制限し、今日の地球規模での問題をつくり出す原因となった。ところで、柔軟な大量生産方式と高い労働意欲により高品質の工業製品を生産して、強力な競争力を発揮している日本的生産システムなら、問題を解決できるかと言えば、それほど事態は単純ではない。確かに、資本主義市場での競争力において優位にあるものの、低開発諸国の搾取という点では、日本の多国籍企業と合衆国の多国籍企業とに本質的な相違はない。環境と調和しながら低開発諸国の生活水準とinfrastructureを向上させ、急速に世界市場の有効需要を拡大するという今日的課題に応える能力を有していないのである。 結局、80年代に新たな展開を見せた合衆国の都市問題と地域再生問題は、実践的レベルにおいても理論的レベルにおいても、確かな解決の方向を見いだしていない。しかし、この間の努力がまったく無駄であったかといえば、もちろんそうではない。その解決の方向がいまだ明確にはされていないが、今日の問題をつくり出していた構造が明確となったことはとりわけ重要である。また、まだ実験的レベルであったり、必ずしも普遍性を持たないとしても、local initiativeが発揮され、州や自治体レベルで経験が積み重ねられたことも重要である。なかでもDowntown linkageやGrowth controlなどの開発利益再分配手法は、地域再生においてsocial equityを達成する上で欠くことが出来ない。さらに、パ-トナ-シップの限界を埋めて行く上で、neighborhood organizationの多様な活動は貴重である。なかでも、単なるvoluntarismや福祉事業にとどまらない活動は将来のモデルとして重要である。我々は、これら実践的理論的到達点を踏まえ、地球的規模での問題解決と個別の地域再生とを統一することを明確な目標にすえて、研究を発展させて行かなければならない。
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