研究課題/領域番号 |
01041093
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 富山県立大学短期大学部 (1990) 富山県立技術短期大学 (1989) |
研究代表者 |
足立原 貫 富山県立大学短期大学部, 農業技術学科, 教授 (50088994)
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研究分担者 |
李 龍雲 中国社会科学院, 日本研究所, 研究員
清成 忠男 法政大学, 経営学部, 教授
春原 亘 東京大学, 農学部附属農場, 教授
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研究期間 (年度) |
1989 – 1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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配分額 *注記 |
8,800千円 (直接経費: 8,800千円)
1990年度: 4,800千円 (直接経費: 4,800千円)
1989年度: 4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
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キーワード | 中国湖南省 / 改革・開放政策 / 商品経済 / 農村の変容 / 郷鎮企業 / 庭院経済 / 沿海型 / 内陸型 |
研究概要 |
「文化大革命」を終熄させ「四人組」後の混乱を収拾した中国は、「現代化」を掲げて「対内改革・対外開放」一連の政策を固め、その実施にのり出した。「現代化」の主柱は農村・農業の改革・開放であるとされ、1978年に個々の農家を単位とする「生産責任制」を導入し、農業生産性の著しい向上を招来した。その結果もたらされた蓄積資金と余剩労力を結合して、各農村地域に多くの「郷鎮企業」が生成し、国営企業と人民公社から成り立っていた改革・開放前の社会経済構造は根底から大きく変化した。その変化によって農村・農業は新たな問題を抱えることになりながらも、この10年間に各農家は着実に生活内容を向上させ、多様化した豊かな農村を築きつつある。全国社会総生産額に占める農村社会総生産額の割合は1980年には32.7%であったが、1988年にし41.3%に達している。この伸びに大きく寄与しているのが「郷鎮企業」である。 「郷鎮企業」は商品経済の担い手であり、その発展は商品経済の〓透・拡大につながる。市場を調節し、大きな雇用を生み出すことによって、農村地域の安定的発展の支柱となるが、さらに重要なことは、「郷鎮企業」の性格と内在力である。すなわち「郷鎮企業」は改革・開放政策という与件を主体的に受けとめた農村住民たちが状況変化に対応する自らの意志と知恵と力で自発的に創出したものである。そのため、国営企業で見られなかったような″活力″を持ち、地域活性化の原動力となっている。個々の郷鎮企業は国営企業に比べて小規模であっても、その数が多いことから、1989年の時点で、農村余〓労力9500万人を雇用し、農村社会総生産額の58%、全国工業総生産額の28%、全国社会総生産額の24.3%を占め、いまや確実に、中国経済を支える不可欠な柱となっている。 こうした「郷鎮企業」の展開について、これまで日本に伝えられていた中国情報は、ほとんど、江蘇省、福建省、広東省、上海市など、″沿海″におけるものであった。しかし、「沿海型郷鎮企業」は多分にNIES志向型であり、海外市況や国政レベルの経済調整策に大きく左右される。言うまでもなく、改革・開放政策に伴なう郷鎮企業の生成やそれによる農村の変容は中国全土一律ではない。立地条件や地域行政のあり方によって、その形と内容はさまざまである。本研究の代表者と分担者たちは、1979年から農業技術協力で中国各地の農村へ頻繁に出かけ、各地域別変容をつぶさに見つめてきた。それらのうちとくに湖南省における農村の変容に″沿海型″とは異なる″内陸型″農村の堅実と思える発展方向を見、その変容の推移を考察するためにの調査研究を、中国側の研究者と共に実施した。2年度にわたる共同研究で得た知見の概要は下記のとおりである。 1.地域性の強い農村・農業を基盤とする「内陸型郷鎮企業」は、地域の労力を吸収し、地域の資源を活用しながら地域分散的に展開する。したがって類型は極めて多様であるが、国政レベルの経済調整にはほとんど左右されることなく、着実に成長しつつある。 2.郷レベルや村レベルの行政の対応や企業のリ-ダ-によって農業と郷鎮企業とのかかわり方は多様であるが、一般に城市近郊では兼業化した農家が郷鎮企業と相互依存的関係となり、郷鎮企業の利益から社会資本や農業の機械や施設への投資が行なわれている。 3.商品経済の流れに乗りながらも、純農村型自助努力の注目される農業経営と農村生活を構築しつつあるのが「庭院経済」である。桃源県小蘇溪村と乾元村で多くの事例を調査した。個々の家庭を単位として複数作目と複数副業を組み合わせ、土地と資源・エネルギ-を集約的に活用し、副業の農畜産物は地元の郷鎮企業に加工原料として出荷するという多角経営の経済性を追求する一方、住宅建築を含めて修景に配慮し地域全体としても庭園景観を形成している。 4.臨〓県大平村では、農家が生産する多様な農畜産物を統合加工する。″村ぐるみ企業″が出現し、単に経済単位としてだけではなく住民福祉の向上にも大きな役割を果している。農村の変容を追う現象研究につづく地域政策研究の新たな課題をここに見る。 本研究の標題には「湖北」も含まれているが、研究開始後に突発した″天安門事件″の影響で湖北省における研究分担者を失ない現地調査ができなかった。公刊予定の報告書では「湖北」を削除する。
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