研究課題/領域番号 |
01041098
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 国立科学博物館 |
研究代表者 |
黒川 逍 国立科学博物館, 筑波実験植物園, 園長 (70000106)
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研究分担者 |
頼 明州 舗仁大学(台北), 教授
簡 秋源 国立台湾師範大学, 教授
原田 浩 千葉県立中央博物館, 学芸員
吉田 考造 埼玉県立自然史博物館, 学芸員
前川 二太郎 (財)日本きのこセンター, 菌じん研究所, 研究員 (00142638)
長沢 栄史 (財)日本きのこセンター, 菌じん研究所, 所長 (70088839)
柏谷 博之 国立科学博物館, 植物研究部, 主任研究官 (10000142)
土居 祥兌 国立科学博物館, 植物研究部, 第二研究室長 (10000134)
LAI MingーJ. Professor, Fu Jen University, Taipei
KAN Shugen Professor, National Normal University, Taipei
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研究期間 (年度) |
1989 – 1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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配分額 *注記 |
9,000千円 (直接経費: 9,000千円)
1990年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1989年度: 7,000千円 (直接経費: 7,000千円)
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キーワード | 台湾 / 菌類 / 地衣類 / Hypocrea / Hypocreopsis / Allocetraia / Rimeliella / Ramalina / 09Allocetralia |
研究概要 |
台湾の蘭嶼島、恒春半島、及び南湖大山において平成元年度に菌類、地衣類の現地調査を実施した。蘭嶼島と恒春半島には亜熱帯一熱帯林がよく保存されており熱帯系の菌類、地衣類の良好な標本を得た。また、南湖大山の現地調査は1500ー3000m付近で実施され、山地性一亜高山性の菌類、地衣類標本の観察を行うとともに標本収集につとめた。現地調査で得られた資料は、菌類約1400点、地衣類約1800点であり、これらの標本は乾燥標本とした後、ラベルをつけて保管した。菌類のうち生品として持ち帰ったもについて培養が試み、これに菌類の培養組織や生殖細胞の形態的特微を加味した分類学的研究を進めている。 菌類に関しては、従来台湾からはほとんど採集されててないボタンタケ属(Hypocrea),ヒポクレオプシス属(Hypocreopsis)属等菌類は、これまで知られている北方系の種類とは系統を異にする熱帯系の種類であることがほぼ確かめられ現在種類の確定作業を行っている。また、コウヤケタケ科菌類の中に本科の中でも原始的な分類形質を持ち担子菌類の系統類縁関係を探る上で貴重種類が台湾南部に多数生育することが明らかになり、目下これらの系統的な位置づけを目的しとた分類学的研究を行っている。ヒダナシタケ目、ハラタケ目、接合菌類に関しては、蘭嶼島で多数の未記載種が確認されたほか、雲霧帯には雲南系の種類と共に北米西部の針葉樹林帯に生育する種類Sterepsis humpheriが確認され植物地理学上注目される。 地衣類に関しては主としてウメノキゴケ属(広義)、エイランタイ属(広義)、カラタチゴケ属、スタウロテレ属、フクロゴケ属について分類学的研究を実施した。ウメノキゴケ属、エイランタイ属、カラタチゴケ属等の大型地衣類に関しては化学成分の解析、分類学的研究を実施した。その結果、広義のウメノキゴケ属から2新属を独立させAllocetraria及びRimeliella として命名記載した。さらにAllocetraria属は1新種をふくむ3種に、またRimeliellaには1新種を含む7種にまとめられた。ウメノキゴケ属のうち台湾からこれまで2種類しか見つかっていなかったキウメノキゴケ属(Xanthoparmelia)が恒春半島を中心とする南部地域から10種類以上確認された。これらの種類は現在外部形態、内部形態の検討と化学分析を平行して進めている。台湾産のカラタチゴケは熱帯域に分布の中心を持ち海岸付近の岩上や樹皮上に分布する種群と2500ー3000mの雲霧帯を中心に分布する種群に大別されることが解った。低地性の種類はいづれも日本との共通種であり、太平洋沿岸に広く分布する種類である。一方、南湖大山の中部山岳に発達する雲霧帯にはカラタチゴケ属が豊富に生育するが、これらは日本との共通種(R.orientais)、台湾特産種(R.sp.)、及び雲南系(R.conduplicans,R.hossei,R.sinensis,etc.)の種類の3者から成ることが確認された。さらに台湾産カラタチゴケ属各種には少なくとも2種類以上の化学的変異株が含まれることが確認された。スタウロテレ属は、これまで台湾からほとんど報告されていないが、採集されたものは新種の可能性が高い。現在近縁種の基準標本との比較検討を実施中である。 これまでの研究成果から、調査対象の菌類、地衣類は全体としては、台湾南部には熱帯系、東南部及び標高1000m以下の低地ではフィリピン系、そして2500m以上の雲霧帯には日本とも関連の深い雲南系の種類が多く、中には台湾独自の種分化をとげている種類も見つかっている。従来このような事実は、維管束植物では指摘されていたが今回の調査により菌類、地衣類などの隠花植物でも同様な事実が確認されたことになる。
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