研究課題/領域番号 |
01041100
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京国立近代美術館 |
研究代表者 |
富山 秀男 東京国立近代美術館, 次長 (00000381)
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研究分担者 |
金子 賢治 東京国立近代美術館, 工芸課, 主任研究官 (20169569)
高橋 幸次 東京国立近代美術館, 企画・資料課, 研究員 (20179485)
岡島 尚志 東京国立近代美術館, フィルムセンター, 研究員 (20132706)
登川 直樹 , 映画史家
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研究期間 (年度) |
1989
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研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
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キーワード | 映画 / 写真 / デザイン / ア-カイヴ / 映像 / ミュ-ジアム |
研究概要 |
1.映画 第一に映像芸術のミュ-ジアム活動における基礎である保存・ア-カイヴ部門の実態調査があげられる。昨年度にヨ-ロッパ、特にイギリスとフランスの実情を調査したので、今年度はアメリカの東海岸及び西海岸の主要施設を見学した。作品保存のための収蔵庫は、研究、上映施設と同一建物内にある場合と、ニュ-ヨ-ク近代美術館(MOMA)や議会図書館のように本部とはかなり離れた場所に独立して設けられている場合とがあったが、当館の場合は後者に属するのでより詳しくそれら先行施設の実態を調べ、参考にすることができた。例えばMOMAの収蔵庫はニュ-ジャ-ジ-州フォ-ト・リ-にあったが、ここには一般的に危険とされる可燃性フィルムも収納されており、その保存条件(温湿度調整)を長年の研究成果にもとずいて定着させていた。これは危険物であるので見習うかどうかとは別次元の問題であるが、保存・ア-カイヴ部門の具体的基礎知識としては大いに参考になるデ-タだったといえる。また、ジョ-ジ・イ-ストマン記念館映画部における作品の保存、修復など管理体系の整備ぶりは一驚に値するものがあり、今後のわが国ミュ-ジアム活動を構想する上で、大いに参考になると思われる。 第二は上映活動の充実があげられる。この面でもMOMAは注目すべき存在であり、大・中ホ-ルを完全に稼働して企画上映を打ち続けていたほか、カリフォルニア大学フィルム&TVア-カイヴなどでは、これに加えてヴィデオ機器を70ほど備え、利用者の希望する作品が自由に鑑賞できるように体制づけられていたのが印象的だった。 第三は資料展示ないし博物館活動の活発さである。この面ではニュ-ヨ-クのアメリカン・ミュ-ジアム・オブ・ム-ヴィング・イメ-ジ(AMMI)が代表例といってよいが、100年間にわたる映画衣裳の展示をしていたり、ミニチュアによる撮影セットの再現、さらに監督の手になるスト-リ-・ボ-ド(手描きのセット図やデザイン類)などが陳列され、映像に関するさまざまな資料が大規模に活用されていた。アメリカの諸施設は設立の基盤として民間のものが多いため、その事業活動も個性的で必ずしも共通したところばかりではないが、その自由な積極性において参考にすべき点が少なくなかった。 2.写真 昨年度はアメリカの研究機関について調査したが、今年度はヨ-ロッパに関して調査研究した。ヨ-ロッパの各機関中、歴史の古いところは写真収蔵の核もあり、その作品数は厖大であるが、後発のものは購入や寄贈によって鋭意コレクションを形成中である。それらの機関は目下のところ作品の地域、時代を絞って収集しているが、世界的な広さのコレクションにしようとの方針も捨ててはいない。一般に有名写真家の作品はよく分類し、活用されているが、資料写真などには未整理なものもかなり見られた。また、作品検索のためのコンピュ-タ-・システムについては、ポンピド-・センタ-は導入活用していたが、その他は旧来のカ-ド・システムをとっていた。パブリック・サ-ビスの向上と美術館相互の情報交換が、ヨ-ロッパにおいても着々と実現の方向に向かっている点は注目される。 最近の写真作品収集ブ-ム、特に今年は写真発明150年にあたることなどもあって、作品の価格が高謄し、ヴィンテ-ジ・プリントについては、もはや入手不可能なものも出ている。そのためもあってかヨ-ロッパの各機関は、既蔵作品の保管・展示に意を用いており、市場への介入、競合はアメリカや日本の場合とやや異なるところが見られた。すなわち、豊富な収蔵品を背景として日常的な展示の質の高さをめざし、人材の充実と交流に力を注いでいる感が強い。 3.各種デザイン ポ-ランドのワルシャワにあるポスタ-美術館(国立博物館の分館として1968年開館)は、ポスタ-作品の収集、企画展示を行う世界有数の特色ある施設であると同時に、ポスタ-・ビエンナ-レの開催機関として注目を集めている。つまりここでは、最新の動向を集約しようとする国際展の開催と収集方針とが緊密に連動しているだけでなく、ポスタ-と現代美術全般の動きがつかめる方策が講じられている点で非常に参考になった。 ニュ-ヨ-ク近代美術館(MOMA)建築・デザイン部では、ポスタ-の収蔵庫や修復室を見たが、これらは当館デザイン部門の開設に際して有効な示唆を得たと思う。
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