研究分担者 |
手塚 武彦 国立教育研究所, 研究部長 (50000039)
熊本 芳朗 電気通信大学, 教授 (30017313)
天野 正治 筑波大学, 教育学系, 教授 (50000055)
木村 浩 国立教育研究所, 研究室長 (90124180)
野村 祐次郎 大学入試センター, 研究開発部, 前教授 (70012177)
山村 滋 大学入試センター, 研究開発部, 助手 (30212294)
前川 眞一 大学入試センター, 研究開発部, 助教授 (70190288)
岩坪 秀一 大学入試センター, 研究開発部, 教授 (20141997)
山田 文康 大学入試センター, 研究開発部, 助教授 (40158217)
鈴木 規夫 大学入試センター, 研究開発部, 助教授 (70154565)
池田 輝政 大学入試センター, 研究開発部, 助教授 (90117060)
赤木 愛和 大学入試センター, 研究開発部, 教授 (70125243)
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研究概要 |
(1)はじめに:大学入学者の選抜ないし入学決定において、客観テスト等の手法により基礎学力を確認し、さらにより深い学力や性格的特性を評価するために論文試験や学力以外の要因の活用を行う方式が、世界的な大勢である。このことは,先行研究で確認されたが(『世界の大学入試』時事通信社,昭61),今回の研究により,これらの大勢は維持されており,各種の試験や評価において,さらに一段と改革や改善が進められていることが解明された。すなわち、米国では大規模な標準テストの内容が改善され、さらにテストの過度の利用がもたらす弊害の反省と改善が公的議論となっている。英・独・仏各国では、資格試験内容の要項ないし基準(シラバス)について、全国的統一ないし調整が図られ、改善が進められている。スペインでは州単位で統一・調整が図られ,また学制改革に応じて大学進学準備教育の内容が再編制された。国際バカロレアにおいても国際関係の教育課程での強調や評価方法の改善が進められている。こうした潮流は,わが国大学入試の改善にも,意義深い鑑となる事態と言えよう。 (2)米国調査から:(1)最も大規模に普及している2種の標準テスト(SAT,ACT)に画期的な内容改革が施され,一部に論文テストが採用された。それらの問題作成基準も改善された。(2)高校在学中に大学程度の学力の認定がなされるテスト(AP,PEP)は広く利用される傾向にある。(3)大学入学基準学力の引上げ,その最低水準の公定,高校教育課程基準の改善,全米学力調査,国際学力調査,州間学力比較試行調査など,学力向上のための各種基準の見直しや,効果の広域的測定評価事業が活発に実施されている。(4)「テストと公共政策に関する全米委員会」は昨年報告書を公刊し,テスティングの改革,その公共的責任の強調,間接的評価から直接的評価への視点の転換,授業改善のための妥当性の重視を提唱した。 (3)英国調査から:(1)1988年教育改革法は、英国公教育史上画期的な改革をもたらしたが、大学進学に必要な教科目別学力を認定する一般教育証書(GCE)制度も改革され,従来の普通(O)レベルは中等教育一般証書(GCSE)に改められ,また準上級(AS)レベルが新設された。(2)GCSEの授与には,中等学校内での学習活動(コ-スワ-ク)の評価も積極的に採り入れようとしている。(3)ASレベルの運用には多くの議論がされている。(4)GCSEやGCEのシラバスの全国的調整に当たる学校試験評価審議会(SEAC)の活動が注目される。 (4)ドイツ調査から:(1)大学入学資格(アビトゥア)試験のシラバスは,1979年に連邦文部大臣会議の協定により西ドイツ全連邦的調整が図られていたが,昨年のドイツ統一の結果,旧東独地域にも適用されることとなった。また,その内容は1989年に改訂され今後約10年は続けられる見込みである。(2)1970年代の改革以後,高等学校最終の2年間の校内成績が,アビトゥア合否判定の一部に使われることとなった。(3)医学部等での入学制限については,入学者選抜方法に議論が多かったが,協定による1986年からの選抜方法では適性テスト等が採用された。こうした方式の運用のため中央学籍配分機関が,学籍配分や選抜を担当している。 (5)フランス調査から:(1)大学入学資格(バカロレア)の取得者は次第に増え同年齢層の44%に至った。他方その試験のシラバスは漸次整備されつつある。(2)将来同年齢層の80%までバカロレア取得者を増やそうとする教育省の政策は,その実現性に多くの議論がある。(3)しかし受験者の激増は,この制度の大改革を迫っており,高等学校の内部評価を使う方向が構想されている模様である。 (6)スペイン調査から:(1)1983年以来の学制改革は,近く後期中等教育,大学予科教育の段階に及び,大学進学資格試験の内容の改革が日程に上っており,最近数年間実験的試行がなされている。(2)大学進学準備教育のシラバスが,最近次第に整備されつつある。(3)州単位の自治的行政により,これらの改革や整備が進められ,州内を統一する動向である。(4)私立学校側には,政府の教育政策に対する根強い批判がある。 (7)国際バカロレア調査から:(1)国際的環境問題の科学,デザイン・テクノロジ-・劇場芸術のコ-ス新設を進めている。
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