研究課題/領域番号 |
01041111
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
藤井 知昭 国立民族学博物館, 第5研究部, 研究部長教授 (70044740)
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研究分担者 |
高 立士 雲南民族学院, 教授
梁 友壽 広西壮族自治民族研究所, 副所長
馬場 雄司 タイ, チェンマイ大学, 文部省派遣留学生
塚田 誠之 国立民族学博物館, 第3研究部, 助手 (00207333)
鈴木 道子 中京大学, 社会学部, 教授 (80154590)
樋口 昭 埼玉大学, 教育学部, 助教授 (60015287)
LISHI Gao Professor, Yunnan Institute of Nationalities
YOUSYOU Liang Director, Nationalities Research Institute of Guangxi Zhuang Autonomous Region
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研究期間 (年度) |
1989 – 1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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配分額 *注記 |
11,000千円 (直接経費: 11,000千円)
1990年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1989年度: 9,000千円 (直接経費: 9,000千円)
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キーワード | 雲南 / 広西チワン族自治区 / チベット・ビルマ語族 / 文化的アイデンティティ- / 儀礼 / 照葉樹林文化 / 民族音楽 / 音楽人類学 |
研究概要 |
1.当調査の目的と課題について 文部省科学研究費補助金によって行なわれた昭和61年度の「インド東北部・ブ-タン民族音楽学術調査」および平成2年度の「ブ-タン民族音楽学術調査」に続き、チベット・ビルマ語系諸族を中心とした、いわゆる照葉樹林文化圏を軸とする音楽文化に焦点をあてることを目的としている。この目的の為、当調査では、中国雲南省及び広西チワン族自治区をその対象とした。過去10年間にわたって、クロスカルチュラルな視点からパキスタン北部よりブ-タンに及ぶ大ヒマラヤ圏における音楽文化の調査を継続し、音楽人類学の方法論によって、諸民族の文化的アイデンティティ-、文化変容、動態等についてのデ-タを蓄積してきた。今回の調査は、この従来の調査による蓄積との比較研究をも目的とし、諸民族に伝承される音楽文化に関する情報とデ-タの充実化によって、音楽の伝播と変容の課題に新たな展開をもたらそうとするものである。 2.新たに集積されたデ-タについて 平成元年度には、現地研究者との協力体制を軸にして、本格的調査が行なわれるはずであったが、中国内部の大きな政治的混乱のため、調査日程を大きく変更せざるを得ず、こま切れ的な日程で調査研究を行なわざるを得なかった。しかしながら、今回の調査地域は、中国の少数民族の過半数が集中し、更に漢文化、チベット文化、インド系文化などの錯綜する、究めて興味ある地域であり、当研究プロジェクトが、かねてより中心テ-マにしていた、音楽・芸能を軸にした、民族の文化的アイデンティティ-の研究に関するデ-タを豊富にすることができた。特に、雲南省においては、タイ族、イ族等の諸芸能の民間儀礼に関連する音楽のデ-タの充実を計ることができ、広西チワン族自治区では、トン族・ヤオ族・チワン族の民間儀礼に関する音楽デ-タを充実させることができた。これによって当地域に分布する主要な民族である、タイ族、チベット・ビルマ語系などの民族文化の動態を明らかにすると共に、漢文化、インド系文化などの民族をとりまく高文化との接触、変容の動態を明らかにすることができた。 3.成果の意義と要点 研究分担者は、それぞれ専門をする分野が民族音楽、比較文学(フォ-クロア)、歴史と儀礼および芸能文化というように学際的であるため、フィ-ルドで集積されたデ-タも、多数に分解され、それぞれの分野での解明に利することとなった。民族音楽の分野では、特に雲南省白族のなかに、日本の沖縄や前回の調査対象としたブ-タンと共通する音階を見出すことができ、フォ-クロアの分野では、特にイ族系、チベット・ビルマ語系の民族を中心として、始祖伝説に関する口頭伝承の歌語りの実態を把握することができた。また、タイ系の諸民族においては、儀礼における音楽の実態の把握となった。チワン族社会においては、守護霊とその儀礼の実態及びその音楽の把握、タイ族社会における、ツァ-ンハプと呼ばれる伝承の担い手の実態及び儀礼での活動の様子が明らかとなった。また、これらの成果は、現地研究者との協力のもとで進められ、平成2年度は、この協力体制に基づいて、現地研究者を日本に招き、調査結果を共同で研究することが可能となった。 4.今後の調査への発展と期待について 次回の調査として当調査隊はタイ北部及び中国西南部の両地域を調査対象とし、東アジアから東南アジアに分布する諸民族の音楽文化の動態に関する調査を計画している。中国西南部を再度調査するのは、一つは今回の調査が、中国の政治的事情により、計画変更を余儀なくされた為、不十分であったデ-タの蓄積の為であり、今一つは、今回の調査で確立した現地研究者との学術交流を更に発展させることである。更にこの中国西南部と民族分布の様相を一にするタイ北部を調査対象に加えることによって、東南アジア地域とのかかわりをもクリア-にすることが可能と考えられる。これらの調査を通じ、当プロジェクトは主としてヒマラヤ方面で行ってきた、「照葉樹林文化圏」の諸民族の音楽文化に関するデ-タ蓄積を、中国・東南アジア方面から充実させ得ると考えられる。
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