研究課題/領域番号 |
01041117
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 慶応義塾大学 |
研究代表者 |
前島 一淑 慶応義塾大学, 医学部, 教授 (70051464)
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研究分担者 |
宮嶋 正康 和歌山県立医科大学, 助手 (80137257)
毛利 資郎 九州大学, 医学部, 助手 (40117271)
久原 孝俊 帝京大学, 医学部, 講師 (70134616)
松田 幸久 秋田大学, 医学部, 講師 (50157327)
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研究期間 (年度) |
1989
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研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
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キーワード | 動物実験 / 実験動物 / ガイドライン / 動物福祉 / 代替 |
研究概要 |
わが国の動物実験ならびに実験動物の水準を飛躍的に高めるため、将来、わが国の動物実験支援組織の中心となるべき若手の実験動物研究者を選び、アメリカ合衆国(以下米国)およびカナダにおける動物実験ガイドラインの整備とその運用の実情、ならびに動物実験の代替法と新しい実験動物の開発の現状と将来について調査し、欧米が目指している方向を探り、その成果をわが国の動物実験施設の運営に反映させ、それを通してわが国の医学、生物学研究のより一層の発展に寄与することを目的に、米国およびカナダの各地の動物実験施設を訪ね、多数の責任者、実務担当者、研究者と面談した。 主な訪問機関は、トロント大学医学部、同大学動物学部、同大学心理学部、薬物習慣性研究財団、マウント・サイナイ病院、トロント小児病院、トロント総合病院、オタワ大学医学部、カナダ厚生省、カナダ動物管理協会(以上カナダ)、ジョンホプキンス大学医学部、同大学動物実験代替研究センタ-、NIH(国立保健研究所)、デュ-ク大学医学部、ノ-スカロライナ州立大学獣医学部、コロンビア大学医学部(以上米国)で、計73篇の資料(指針、研究計画審査基準、各種書式、統計等)、20時間を越すビデオテ-プ、40巻以上のカラ-フィルムを収集した。 両国の諸研究機関において適用されている動物実験ガイドラインは、わが国の各大学が自主的に策定した動物実験指針と文言上で大きく異なるところはない。しかし、その運用の実態には格段の違いがある。つまり、わが国ではガイドラインは原則論であり、努力目標であるが、この両国では常に厳格に守るべき規範である。従って、研究者はガイドラインに従って動物実験計画(プロトコ-ル)を提出し、それぞれの研究機関に設置された動物管理委員会は、ガイドラインに従ってそれを審査する。審査をパスしなければ実験動物は入手できない。また、動物管理委員会および動物実験施設に対するチェック機構がある。 このプロトコ-ル・チェック・システムを両国の研究者たちは公的には容認しているが、それは簡単に受入れられたものではなく、福祉を求める社会の強い要請、実験動物関係者の動物福祉に関する持続的な啓蒙活動ならびに法規制と行政の関与がこれを推進したという。わが国においても、文部省局長通知によって各大学は動物実験指針を策定したが、この指針に生命を吹込むことは簡単でない。なお、実験動物の福祉に関して、両国の関係者は口を揃えて、現在の欧州の動きは行き過ぎであると批判的であり、それに同調することは考慮していないという。日本も欧州のそれに追従する必要はないし、すべきではない。 ジョンホプキンス大学は動物実験代替法研究の中心であるが、同大学代替研究センタ-(CAAT)においては、in vivo実験をin vitro実験に置換する手段を開発するだけの機関ではなく、もっとも多くの実験動物を利用する安全性試験領域に焦点を当て、毒性発現のメカニズム解明を通して動物実験の代替手段を探す基礎研究、動物実験代替に関する情報収集と配布、代替に関する啓蒙等の幅広い活動を続けている。なお、新しい実験動物の開発については、今回の訪問先ではみるべきものはなかった。 今回の調査に関する詳細な報告ならびにわが国がなにを為すべきかについての提案は、雑誌「アニテックス」に特集記事として半年以内に掲載し、その別刷を関係研究機関ならびにその責任者に送付する予定である。予定していた両国の動物管理委員会の傍聴は時間的調整がつかなかったが、次の機会に2ないし3か所の委員会を傍聴すべきである。ジョンホプキンス大学のCAATとは別の方向の代替法研究を進めている複数の研究グル-プが中央ないし西部アメリカに存在するので、その実情を改めて調査しなければならない。また、動物実験規制の行過ぎを危ぶむ指摘が多く出てきたため、米国の動物福祉に関する1986年改正法の施行が遅れているが、その問題を詳しく調査し、わが国がその過ちの轍を踏まないようにしなければならない。従って、次年度中に再度米国へ調査団を派遣する必要がある。
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