研究課題
国際学術研究
米国において中高生に対する日本語教育が近年さかんになったと言われているが、その実状はどうなのか、実際に現状を知るために数校を視察し、担当者から話を聞いた。一般的動向米国の中学・高校では日本語は選択科目である。米国における外国語教育はドイツ語、ラテン語を取る者が減少し、それにともなって日本語を取る者が増加した。また、日本語のコ-スを開設する高校もふえつつあるが、日本で考えていたほどの「日本語ブ-ム」ではない。日本語を選択する動機はなにか、との質問には常に「お金を得るため」という答がはね返ってきた。日本語を取っていれば日系企業に就職するのに有利と考えているようであり、米国での日本語学習の主動機は経済的なものであるとの認識をえた。授業日本語に限らず外国語の授業は週5時間、月曜日から金曜日まで毎日1時間づつという時間配分になっている。少しづつでも毎日というのは語学教育としてよく考慮されていると思う。授業は、生徒の資質・気質をじゅうぶん考慮に入れ、長時間でも飽きることのないように、よく工夫して行われている。例えば「漢字ビンゴゲ-ム」、「買い物ゲ-ム」などである。教材主たる教材としては、“Learn Japanese"(ハワイ大学)、『日本語初歩』(国際交流基金)が使われているが、そのまま使用するのは難しく、多少ともモディファイしたものを与えている。日本人の教師は初めからひらがなで教えるが、日本人以外の教師は初めはロ-マ字で教える。それぞれ自分のやり方が正しいとする意見を持っている。教師中高生に対する日本語の授業をするのに適した資格のある教師が不足している。長年米国に生活している日本人が教員免許を得て教員となるケ-スと、日本で「米国で日本語・日本文化を教えたい人」を募集して来て、その人たちに助手として教えさせているケ-スがある。ケ-ブル・テレビで結ぶことによって、一人の正教員の下にそのような助手に教えさせることができるのである。助手の待遇は無給に近いが、それでも「米国で日本語・日本文化を教えたい人」は多いのである。また後者に正規の教員免許を取らせる場合もある。REX計画に対する関心について外国中等教育施設日本語指導教員派遣事業(REX計画)について話したところ、財政的負担なしで教員が得られるのなら迎えたいが、多少でも財政的負担がかかるのなら受け入れるのをためらう、というところが多かった。REX計画に対する要望としては、派遣の期間を、米国の学期にあわせて9月まで、せめて6月までにのばせないか、と言われた。年間通して勤務してもらわないと、つまり、学年の途中で帰国されると、学校の運営に支障をきたすので、受け入れがたい、とのことである。派遣教員にしてもらいたいことは各学校によって異なる。単に日本語の授業を受け持ってもらいたいという所もあれば、クラスル-ム・ティ-チャ-として、日本語の授業のほかに、父兄との懇談や、外部の活動もすることを期待している所もある。