研究課題/領域番号 |
01042003
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | がん調査 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
武部 啓 京都大学, 医学部, 教授 (10028318)
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研究分担者 |
錦織 千佳子 京都大学, 保健診療所, 助手 (50198454)
蒋 左庶 第二軍医大学, 生物学科, 教授
朴 相大 ソウル国立大学, 自然科学部, 教授
MOHAMED Zgha チュニス大学病院, 医師
塚田 俊彦 京都大学, 医学部, 助手 (10207334)
八木 孝司 京都大学, 医学部, 助教授 (80182301)
ZGHAL Mohamed Hopital Charles Nicolle
PARK Sandai Seoul National University
JINAG Zushou 2nd Military Medical College
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研究期間 (年度) |
1989 – 1991
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研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
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配分額 *注記 |
7,200千円 (直接経費: 7,200千円)
1991年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1990年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
1989年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
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キーワード | 色素性乾皮症 / 皮膚がん / 中国 / 韓国 / チュニジア / 色素性乾皮性 / 紫外線 / がん遺伝子 |
研究概要 |
研究目的 色素性乾皮症は、常染色体性劣性遺伝様式の疾患で、遺伝の多くが太陽光にさらされた皮膚に疾患名が示すような着色と乾皮症状を示し、放置すると皮膚がんを生ずるに至る高発がん性遺伝病である。研究代表者は、1970年ごろからこの疾患の発がん機構の解明をめざした研究を続けてきた。その間に、本疾患には遺伝的に異なる型が多数あることがわかり、研究代表者もその一つであるF群を発見した。現在までにAーGの7相補性群とバリアント型の8型が知られている。研究代表者は本研究以前に北米、ヨ-ロッパと日本で、これらの遺伝的型の分布が異なること、それが臨床症状にも反映していることなどを明らかにしてきた。そこで本研究では、これまで患者の存在の報告はあったが、遺伝学的解析および細胞の修復特性の解析がほとんどなされていなかった日本以外のアジア民族、および患者数が多いとされているアラブ民族における色素性乾皮症の遺伝学的解析を目的とした。 研究計画 北アジアでは中国と韓国を主な対象国とし、北アフリカ(アラブ民族)ではチュニジアを選んだ。中国については、これ以前に文献調査をほぼ終え、70例以上の患者の資料を入手していること、および研究代表者のところへ留学している中国人学生が、患者細胞を持参していることなどの用意ができていた。韓国では、既に一部調査研究を終えているが、患者多発の西南部(全羅南道)について、留学生を迎えてより詳しい研究が進められると期待できたこと、チュニジアは、かつて研究代表者のところへ留学していた皮膚科医が帰国後熱心に研究を進めていること、などが対象国選定の理由と、準備状況であった。3年間の研究期間を通じ、それぞれの国へ派遣及び招へい(韓国は招へいのみ)によって研究調査を行なうとともに、対象国において患者の資料(文献、臨床記録など)および患者の試料(生検片、血液)を入手した。患者資料を用いた細胞レベルおよび分子レベルの解析は主に京都大学で行った。 研究経過と成果 中国については中国語文献でしか発表されていない症例が多いので、まずそのような資料を集めた。以前の調査と合わせ、確実な記載のあった7つ例の色素性乾皮症患者の記録が確認できた。これは分担研究者の蒋左庶博士およびそこから留学している王蘇鳴医師の協力(翻訳を含む)が大きい。その一部の患者について、細胞を培養し、これまで日本以外に2例しかみつかっていなかった相補性F群の患者を1例見出した他、他の群を含め、日本の患者ときわめて似た遺伝子構成であることが明らかになった。 韓国は、今回の研究では予期した患者資料・試料の入手が少なく、十分に新しい症例の検討ができなかった。これは主に協力を予定していた韓国の若手研究者(ソウル大学鄭博士、全南大学李博士)のアメリカ留学と重なったりして、当初の計画通りに進まず、こちらからの派遣もできなかった。しかし目的の一つだった神経症状を有する患者の文献調査は分担研究者によって進められ、これまでそのような例のないこと、1例不確実な記載があるが、患者の追跡ができないことなどがわかった。 チュニジアでは、これまでに約200例の色素性乾皮症患者がみつかり、内約150例について分担研究者が臨床資料をまとめている。人口比を考えると日本の10倍以上の頻度と推定される。その理由の第一に高い近親婚率があげられる。遺伝的解析では、A群とC群に集中し、かつて報告されたエジプトと似ているが、日本、欧米とはかなり異なる(D、F群の不在)ことが明らかになった。 考察と反省 本研究はほぼ当初の目的を達成できたと考えている。このような研究では、先方の研究設備、研究経費などの乏しさから、その面での協力が期待されるが、ほとんどその点で貢献できないのが残念である。中国では文化大革命中の約10年間、学術雑誌の大多数が休刊していたことから、資料の入手は容易ではなかった。チュニジアのような小国との協力はきわめて実り多いと考える。
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