研究分担者 |
FONTAINE Did カリフォルニア大学, バークレー校・材料科学科(米), 教授
SATO Hiroshi パデュウ大学, 材料工学科(米), 名誉教授
KIKUCHI Ryoi カリフォルニア大学, ロサンゼルス校・材料科学工学科(米), 教授
石井 忠男 岡山大学, 工学部, 助教授 (90033240)
毛利 哲夫 北海道大学, 工学部, 助教授 (20182157)
鏑木 誠 神戸大学, 教養部, 助教授 (40093504)
石川 琢磨 いわき明星大学, 理工学部, 助教授 (80016138)
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研究概要 |
結晶統計力学の代表的手法であるクラスタ-変分法(CVM)とそれを動力学に拡張した経路確率法(PPM)は既に種々の問題に適用され,かなりの成果を収めているが,なお他分野への応用の一層の拡大とそれに伴う基礎的事実の解明が必要であり,日米のこの分野の研究者が積極的に意見を交換し諸問題の解決に努力した。 助成期間における主な研究成果を筒条書きで述べる。 (1)全エネルギ-の量子力学に基づく第一原理計算から,CVMに必要な多体力を決定し,貴金属合金に対する状態相図,秩序安定性及び短距離秩序度のフ-リエ・スペクトルを求めた。実験で観測されるスペクトルはCVMの4面体近似では不十分で千面体一八面体近似まで必要があることが示された。 (2)SOS模型に基づきMBE(分子線エピタクシ-)成長が調べられ反射線強度の振動現象がPPMにより説明された。現在,非一様性を考慮する事により振動の減衰の計算が進められている。 (3)CVMのエントロピ-列の厳密解への収束の証明がクラスター相関の概念を導入して,はじめて行われた。また、このクラスタ-相関の概念を利用してCVMのエントロピ-公式の筒明な再導出が行われた。 (4)合金系の動的性質を調べる予備段階としてスピン系の急冷等温過程が,経路確率法の千面体及び千面体ー8面体近以似において取り扱われた。自由エネルギ-は単調に減少するにも関わらず,ある配位を持つクラスタ-確率分布は単調な時間変化を示さずピ-クを示す事が見いだされた。この観測に基づき北擬安定相の概念が提出された。 (5)イオン伝導体の格子ガスに基づく電気伝導度の振動数依存性がモンテカルロ・シュミレ-ションにより初めて計算された。電気伝導度の有限温度振動数依存在性はPPMにより計算された結果とよく一致する場合と一致しない場合がありPPMの限界を明らかにした。 (6)ランダム相互作用をもつ多成分系にCVMを適用し,三成分系においては適当な条件下ではガラス転移する事が示された。 (7)多成分を持つ系の相界面にCVMが適用され,界面に対するランダウ・ギンズブルグの自由エネルギ-が導出された。 (8)CVMは系統的の近似を進めてもランダウの相転移から期待される臨界指数を与え,繰り込み群の方法と比較し無力と考えられていたが,鈴木増雄氏により系統的な近以例を利用する事により非古典的な臨界指数の計算が可能となった。我々はCVMとPPMの対近似,カクタス及び4角近似で解析的に臨界指数を得た。非一様系に対する波数依存帯磁率から相関距離の臨界指数が求まる事を示した。簡単な近以の割には良い値が得られた。さらに信頼性を高めるために基本クラスタ-を立方格子に取った計算が進られている。 (9)2次元四角格子のPPMによる四角近似計算は原子拡散を考慮しても解析的に運動方程式が得られることが示された。2次元四角格子を使い気相からの増成長がPPMにより取り扱われ,モンテカルロ・シュミレ-ション計算と比較された。対近似以上で拡散過程が解析的に取り扱われたのは初めてであり,シュミレ-ションとの一致も対近似と比較して大巾に改良された。また核生成的振舞いも四角近似でも観測されることが示された。 (10)CVMは格子変位を取り込む事が因難とされていた。一方,状態相図の第一原理計算では格子変位を取り入れる事なしには実験を説明できない事が明らかになってきた。そのような目的で対近似ではあるが,原子変位をCVMで取り扱う試みがなされた。 (11)PPMはCVMを時間空間への拡張した非平衡統計力学の一手法である。PPMにより合金の秩序・無秩序転移のような一様系のふるまいは良く説明できるが,原子拡散のような非一様系が本質である問題ではCVMと比較して近以が落ちる事が示されていた。その次点を除く試みとして「時間変換」の概念が提出され,CVMと同じ程度の結果が得られることが示された。
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