研究課題/領域番号 |
01044007
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
真田 雄三 北海道大学, 工学部, 教授 (50109485)
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研究分担者 |
SUNBERG E.M. ブラウン大学, 工学科, 教授
FLOWERS R.L. リハイ大学, 化学科, 研究員
LARSEN J.W. リハイ大学, 化学科, 教授
相田 哲夫 近畿大学, 九州工学部, 教授 (50192836)
平泉 紀久子 工業技術院, 化学技術研究所, 課長
千葉 忠俊 北海道大学, 工学部, 助教授 (70001295)
LARSEN Jon W. Lehigh Univ. , Department of Chemistry, Professor
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研究期間 (年度) |
1989 – 1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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配分額 *注記 |
6,000千円 (直接経費: 6,000千円)
1990年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1989年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
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キーワード | 石炭 / 非共有結合 / 水素結合 / 高分子構造 / 膨潤測定 / 粘度 / 液化 / ESR / 09Dilatometer |
研究概要 |
〔本研究の目的〕 石炭分子の集合構造を分子群と認識して石炭分子内、分子間に働いている水素結合、πーπ相互作用などの非共有結合、溶媒などとの相互作用、反応挙動を動的に把握することである。 〔研究成果の概要〕 石炭分子の集合を明らかにするため、日本と米国で産出する代表的石炭を選定し、日本側では有機溶媒による膨潤測定を、米国ではイオン交換法を併用した膨潤測定を行なった。本国際共同研究の成果として特記されることは、米国側リ-ハイ大学ラ-セン教授の研究室の協力をえて行った常圧下での石炭の膨潤特性に関する実験デ-タの詳細な解析から、石炭の高次構造に関するモデルを組上げたことである。このモデルに基づいて、石炭ゲルを用いる有効な石炭の化学変換プロセスを開発できることが判明した。これまでの基礎的研究から、より実用的な研究へと展望を開くことが出来よう。 石炭のマクロ構造を明らかにするため、溶媒による膨潤についての理論的検討を行った。溶媒により石炭が膨潤する際の自由エネルギ-変化は、石炭と溶媒との混合による項と、石炭網目の弾性変形に基づく項の和であらわされるが、従来から提出されている式では、石炭には応用出来ないことが判った。実験的には、従来、膨潤比(Q)を求めていたが、膨潤数(Qー1)を用いた論議が合理的であることが示された。 また、有機溶媒による石炭の膨潤現象を解析し、石炭の高分子構造を解明すると共に、膨潤速度をシミュレ-ションするモデルを構築した。このような実験を通して石炭高分子構造、集合構造のうち、水素結合、πーπ結合ならびにイオン結合などの分子間凝集力について多くの知見を得、同時に石炭の2次転移点が室温以下の低温に存在することを見出し、石炭の集合構造研究に大きなインパクトを与えた。また、石炭/溶媒系スラリ-の粘度について、平衡論的、速度論的な検討を行った。また、常温常圧下で石炭の大部分を溶解しうることを見出した。 リハイ大学では、石炭の電荷移動錯体の電荷移動度の定量的表現法、室温以下でも石炭分子運動の束縛ー開放が可能であることを意味するガラス転移点が存在することを見い出した。 石炭のマクロ構造の解析のため ^1HーNMRの緩和曲線の解析を行なった。石炭としては米国のアルゴンヌ国立研究所作成の標準炭8種を用いて、フレッシュ、脱水、脱灰した時の石炭について測定した結果、緩和に関して状態の異なる2種類のサイトがあることを明らかにした。このサイトは有機溶媒による膨潤現象と密接な関係があり、石炭の界面、孔隙構造について直接的な知見となった。また、高分子としての石炭の化学構造解明のために、固体高分解能 ^<13>CーNMRを測定した。解析のための基礎デ-タを得るための液化油のNMRデ-タベ-スの作成と石炭関連有機化合物のデ-タベ-スを利用して化学シフト範囲の図表を作成した。 以上、本共同研究の成果は、斬界において高く評価され、燃料化学に関するゴ-ドン究究会議(1990 Gordon Research Conference on Fuels Science)で招待され、講演をした。演題は「石炭構造のプロ-ブとしての膨潤速度論」である。さらに、米国化学会発行の国際誌「エネルギ-と燃料」(Energy and Fuels)に執筆依頼があり、「石炭スラリ-の粘度」についてレビュ-を書下している。 本国際共同研究によって研究情報を交換し、実りのある成果をえたのみならず、双方からの若手研究者が相手方の研究室に長期滞在(2カ月程度)も可能となった。特に、従来日本から一方的に欧米の研究室に出向いていたのとは逆に、先方の若手研究者が日本に滞在することをも可能とし、周辺の多くの日本人学生との交流が可能となった。研究面のみならず、思考方法、文化、日常生活についても強いインパクトを日本人学生に与えられたことは特記される所である。 今後、当該方面の研究を深化させるために適任の研究分担者を組み込んで、石炭の低分子化、液化を目指した新しい転換反応を開発すべく、国際共同研究へと展開していきたいと考えている。本制度の一層の拡充が強く望まれる。
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