研究課題/領域番号 |
01044011
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
桑山 秀人 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教授 (40125399)
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研究分担者 |
三木 正雄 シドニー大学, 解剖学部門, リサーチアソシエイト
DOS Remedios シドニー大学, 解剖学部門, 助教授
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研究期間 (年度) |
1989
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研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
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配分額 *注記 |
900千円 (直接経費: 900千円)
1989年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | アクチン / ヌクレオチドアナログ / フォトアフィニティ-ラベル |
研究概要 |
アクチンは低イオン強度においてはモノマ-(Gーアクチン)として存在する。1モルのGーアクチンは1モルのATPを結合(結合定数7.5×10^9M^<-1>)しており、そのATPは溶液中のヌクレオチドと容易に交換反応を起こす。Gーアクチンは重合反応によりFーアクチンに変換し、同時にATPの末端リン酸は加水分解され、重合したFーアクチン中のADPは外液のヌクレオチドとは交換しなくなる。アクチンに結合しているこのヌクレオチドの生理的意義は明らかではないが、ATPが存在しない条件ではGーアクチンが変性しやすいことが知られている。アクチンにおけるヌクレオチドの結合部位はアクチン分子のN末端とC末端ドメインの狭間にあり、ヌクレオチド結合に直接関与するアミノ酸としてLysー336,Trpー356が8ーN_3ATPをもちいた光修飾法により同定された。ここで用いる光親和性ATPアナログ、2ーN_3ADPはプリン環のCー2原子上に存在するN_3原子団によりグルコシド結合における回転が妨げられ常にアンチ型の立体配置を保っている。Fーアクチンに2ーN_3ADPを導入し、近紫外光を照射するとアジド残基は活性化され窒素分子が外れて生成したナイトレンラジカルが近接のアミノ酸、Tyrー306と共有結合を形成することが明らかになった。 1.2ーN_3ADPのアクチンへの導入と光修飾:Fーアクチンを60mM KClと10mM TrisーHCl(pH8)を含む溶液で洗浄し1mM TrisーHCl(pH8)および0.1mM CaCl_2、2mg/mlアクチン条件でホモジナイズした。溶液を氷冷下で1分間の超音波処理(Heatsystem Wー10)したのち、0.5mM 2ーN_3ATPを加え、さらに1分間超音波処理をした。1/10容量のDowexー1を加え、氷冷下で5分間混合しDowーexー1を濾過除去した。ろ液にさらに0.5mM 2ーN_3ATPを加え10分間混合後、2ーN_3ATPーGーアクチンを60mM KCl、2mMMgCl_2および10mM TrisーHCl(pH8)、緩衝液Fで重合させた。2ーN_3ADPーFーアクチンは超遠心で沈殿物とし、緩衝液Fにホモジナイズし2分した。試料の一方はパイレックスガラスをフィルタ-として氷冷下で20×15秒間の高圧水銀灯(ウシオ電気、450W)照射を行なった。光照射によりアクチンモルあたり0.82モルのヌクレオチドがアクチンに導入された。 2.二種の2ーN_3ADPーFーアクチンの性質:光照射試料と光照射をしなかった試料について30mM KCl、2mM MgCl_2、2.5mM ATPおよび1mM TrysーHCl(pH8)条件でSlーMg^<2+>-ATPase活性を測定した。未処理Fーアクチンに比べてSl-Mg^<2+>-ATPase活性の活性化能は下がっていた。SーlーATPase活性に対して2ーN_3ADPーFーアクチン濃度の依存性を二重逆数プロットして結果を分析したところ両者の相違はほとんど認められず、ヌクレオチドが共有結合で導入されてもFーアクチンのSlーMg^<2+>-ATPase活性の活性化機能には本質的な影響は無いことが示された。次に2ーN_3ADPーFーアクチンの脱重合および再重合について調べた。光照射試料と光照射をしなかった試料を0.2mM ATP、0.1mM CaCl_2および2mM TrisーHCl(pH8)で4℃において透析を行ない試料の粘度を測定した。その結果、光照射をしなかった試料では2ーN_3ADPは透析溶液に加えたATPと置き変わり通常のアクチンと同様に脱重合・再重合が起こることが示された。 一方、これに対して光照射試料では2ーN_3ADPは共有結合しているため外液ATPとのヌクレオチド交換は起こらない。このような試料で透析時間と粘度の関係を調べたところ低イオン強度での脱重合反応は起こるにもかかわらず、高イオン強度での再重合はしなくなることが示された。これはアクチンにおけるヌクレオチドがアクチンの重合能を保護するというこれまでの知見から考えると意外な結果であり、アクチン中でのヌクレオチドの生理的意義を推測するうえで重要な知見である。アクチンのF〓G変換においてはヌクレオチドがある程度は自由な立体配置の変化を必要とすることが予想される。
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