研究分担者 |
CERVANTES J. オートノマ, メトロポリターナ大学, 教授
SAUVAGE J.P. ルイ, パスツール大学・化学研究所, 教授
BAKAC A. アイオワ州立大学, エームズ研究所, 研究員
ESPENSON J.H アイオワ州立大学, 教授
上野 圭司 東北大学, 理学部, 助手 (20203458)
飛田 博実 東北大学, 理学部, 助手 (30180160)
下井 守 東北大学, 理学部, 助教授 (30092240)
SIMOI Mamoru Faculty of Science, Tohoku University
UENO Keiji Faculty of Science, Tohoku University
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研究概要 |
国際共同研究,研究調査のため次のような学術交流を行なった。研究代表者はアイオワ州立大学を本拠地として,米国,メキシコを訪問し,さらにルイ・パスツ-ル大学(フランス)を本拠地として英仏を訪問した。飛田はルイ・パスツ-ル大学(フランス)を本拠地として英仏独を訪問した。また,Espenson教授(アイオワ州立大学),Bakac博士(アイオワ州立大学)およびSauvage教授(ルイ・パスツ-ル大学)を招へいした。これらにより得られた成果を,単核錯体および二核錯体の二つに分けて以下に述べる。 1.アルコキシ置換ジシラニル(カルボニル)錯体に光照射すると金属ーケイ素不飽和結合を含むアルコキシ架橋ビス(シリレン)錯体が生成することを見出し,次のように研究を展開した。 1)アルコキシル基の種類や数,配位子等を変えた種々の鉄錯体について光反応を行ない,本反応が高効率で進行することを確認した。さらに、鉄錯体について発見した本光反応を適用して最初のビス(シリレン)マンガン錯体を合成し、その特異な結晶構造を明らかにした。また,これらのビス(シリレン)錯体の反応性を検討し,アルコ-ルとの幾つかの興味深い反応を見出した。 2)ビス(シリレン)鉄錯体Cp'Fe(CO){Sime_2…O(Me)…SiMe(OMe)}のsyn体とanti体間の異性化反応について,動的NMR法により活性化パラメ-タ-を決定し,その値から協奏的な異性化機構を提案した。 3)ビス(シリレン)錯体および関連化合物の^<29>Si NMRにおけるSiーSi間の結合定数をINEPTーINADEQUATE法によって決定し,モデル化合物について行なった拡張ヒュッケル分子軌道計算の結果と比較することにより,この結合定数は3s(Si)ー3s(Si)原子軌道bond populationと良い直線関係があることを見出した。 4)ジシラニル錯体と同様に,そのゲルマニウム類縁体であるジゲルマニル錯体の光反応によりアルコキシ架橋ビス(ゲルミレン)錯体が生成することを見出した。同様にして,(シリルゲルミル)錯体の光反応によりアルコキシ架橋シリレン(ゲルミレン)錯体を合成することができた。これらの錯体の動的挙動の温度可変NMRによる研究から,アルコキシル基のGeに対する配位はSiに対する配位より弱いことを見出した。 2.下記の2つの方法でシリレンを架橋配位子とする二核錯体が合成できることを見出し,またこれを原料として前例のない二核シラントリイル錯体の合成に成功した。 1)トリヒドロシランRSiH_3(R=tーBu,(CMe_2)_2H)存在下,シリル鉄錯体CpFe(CO)_2SiMe_3に光照射すると,シリレン架橋二核錯体Cp_2Fe_2(CO)_3SiHRが収率よく生成することを見出した。また,その中間体の単離等により,その生成機構としてカルボニル配位子の光化学的解離に続くヒドロシランの酸化的付加,還元的脱離という一連の過程を2回繰り返す機構を提案した。 2)上記錯体を原料として,シラントリイル(RSi)を配位子とする最初の二核錯体を塩基の配位した陽イオンとして合成単離することに成功し,物性と反応性を明らかにすると共に,2種の錯体についてX線結晶構造を決定した。 3)ジシラニレン二鉄錯体CpFe(CO)_2SiMe_2SiMe_2CpFe(CO)_2の光反応により,最初にシリレン架橋錯体Cp_2Fe_2(CO)_3SiMe(SiMe_3)が生成し,続いて長時間光照射すると最終的にシリレン二重架橋錯体Cp_2Fe_2(CO)_2(SiMe_2)_2にほぼ定量的に変化することを見出した。これらの錯体は各々幾つかずつの幾何異性体を持つが,その内各一つずつについてX線解析により構造を決定した。また,その光反応機構として,鍵となる中間体としてのシリル(シリレン)錯体の生成,およびその上でのメチル基またはシリル基の転位を含む機構を提案した。
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