研究課題/領域番号 |
01044014
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
庄子 哲雄 東北大学, 工学部, 教授 (80091700)
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研究分担者 |
G.E Kohse マサチューセッツ工科大学, 原子炉実験所, 助手
O.K Harling マサチューセッツ工科大学, 原子炉実験所, 教授
M.J Driscoll マサチューセッツ工科大学, 原子力工学科, 教授
R.G Ballinge マサチューセッツ工科大学, 材料科学科, 助教授
高橋 秀明 東北大学, 工学部, 教授 (10005267)
DRISCOLL M.J. M.I.T. DEPT. NUCLEAR ENGNG. PROFESSOR
HARLING O.K. M.I.T. NUCLEAR REACTOR LAB., PROFESSOR
BALLINGER R.G. M.I.T. DEPT. MATERIALS SCIENCE AND ENGNG., ASSOCIATE PROFESSOR
KOHSE G.e. M.I.T. NUCLEAR REACTOR LAB., RESEARCH ASSOCIATE
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研究期間 (年度) |
1989
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研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
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配分額 *注記 |
3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
1989年度: 3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
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キーワード | 照射誘起応力腐食割れ / 鋭敏化 / 粒界偏析 / Cr欠乏層 / 低ひずみ速度試験 / 硫黄 / 燐 / 粒界割れ / EPR / Coriou試験 |
研究概要 |
本研究は軽水炉炉内構造材料として広く用いられているオ-ステナイト鋼SUS304,316及び347鋼について、照射誘起偏析を模擬する熱処理条件を見出し、その粒界構造及び化学をキャラクタライズし、そのような材料について軽水炉模擬環境下における応力腐食割れ感受性を低ひずみ速度引張り試験(SSRT)にて評価する事を目的とする。 本年度は、マサチュ-セッツ工科大学と材料選定を行い、最終的に7鋼種を選定した。5種の304鋼と316及び347鋼であり、主に、照射誘起応力腐食割れの原因の一つと考えられている不純物の粒界偏析の効果を調べるためP及びSの濃度をバラメ-タとしている。 粒界偏析は、まず鋭敏化熱処理650℃、50時間の処理の後、粒界の炭化物の溶解及びCr欠乏層を回復させ、かつ粒界に不純物の偏析が生ずるように800℃、850℃及び900℃で1時間〜10時間の熱処理を加え、それらについて粒界のキャラクタリゼ-ションのため、鋭敏化の程度をEPR試験及び粒界偏析をCoriou試験を実施した。その結果、鋭敏化後の、800℃〜900℃の熱処理は、非鋭敏化であり粒界偏析を伴う粒界を再現する事が可能である事が見出された。特にPとSを共に多く含む材料においては特にその傾向が強く高純度304鋼では極めて軽微である事が得られた。すなわちEPR試験に反応がなく、かつCoriou試験によって著しく粒界腐食が認められる材料がある事が示された。 さらにこれらの材料について空気融和高温高圧水(288℃、84気圧)中にて応力腐食割れ感受性を評価した。SSRT試験結果を、断面収縮率、粒界破面率、最大き裂長さ及び平均き裂成長速度で表示し、EPR及びCoriou試験との対応を調べた結果、以下の結論を得た。 (1)650℃/50時間で鋭敏化熱処理された供試材はいずれも高い再活性化率を示したが、850℃から900℃において焼き戻すことにより再活性化率が容易に回復し、850℃/10時間では、3種の材料とも1%以下の非常に小さい値を示した。 (2)Coriou試験の焼き戻し材の結果では、焼き戻し温度が高いほど、焼き戻し時間が長いほど粒界腐食量が減少したことからCoriou試験によって検出された粒界偏析物による鋭敏化は、焼き戻すことによって回復する事がわかった。 (3)Coriou試験の結果より、HS材が最も粒界腐食量が大きく、次いで、LS材、NG材の順であった。HS材ではS偏析が生じているために粒界腐食量が最大となったという可能性が示唆された。 (4)NG材のCruriou試験後の試験片の表面観察から、850℃/1時間と10時間との間に粒界腐食溝の幅に顕著な差が見られたことから、粒界腐食の形態に何等かの遷移が起こっていると判断された。これはこの温度ー時間領域での粒界偏析物の遷移が起こっている可能性を示唆している。 (5)NG材における鋭敏化材,焼き戻し材のSSRT結果からMoは、粒界腐食割れ感受性に対して直接的な影響を及ぼさない事が明らかとなった。また、Cr欠乏層に起因する粒界応力腐食割れ感受性についても、同様に今回のような比較的穏やかな環境の下では、NG材の粒界応力腐食割れ感受性に影響を及ぼさないと考えられる。 (6)LS材の鋭敏化材では、HS材に比して低い再活性化率を示したが、粒界破面率はLS材の方が高く、粒界応力腐食割れ感受性はLS材の方が高いと考えられる。これは鋭敏化熱処理時に粒界に偏析したPの影響であると考えられる。 (7)HS材において650℃/50時間で鋭敏化処理した後に、850℃/10時間で焼き戻した材料は、再活性化率が1%以下であるにも関わらず、鋭敏化処理のみを施した材料と同程度の高い粒界応力腐食割れ感受性を示した。これはS含有量が粒界腐食割れ感受性に影響することを示唆している。 (8)微小予き裂材のSSRT結果から、微小予き裂は高温水中での粒界応力腐食割れ感受性に影響し、その効果は50μmで最大となることが明らかとなった。 (9)粒界腐食感受性はき裂内環境により影響を受け、最大の割れ感受性を示す点は、き裂先端での溶解を支配する2つの相反する現象の折衷点である。 (10)平均き裂進展速度の変化は割れ感受性の変化と良い一致を見せ、き裂進展速度が最大となる点は80ミクロンであり、このき裂長さが化学的微小き裂効果による進展速度の最大加速点である。
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