研究課題/領域番号 |
01044019
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
鈴木 光雄 群馬大学, 内分泌研究所, 教授 (60008597)
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研究分担者 |
MOBBS Charle ロックフェラー大学, 助教授
鯉渕 典之 ロックフェラー大学, 研究員
GIBBS Robert ロックフェラー大学, 助教授
加藤 昌克 群馬大学, 内分泌研究所, 助手 (90143239)
石川 巧一 群馬大学, 内分泌研究所, 助手 (80143238)
松崎 茂 群馬大学, 内分泌研究所, 助教授 (60008604)
PFAFF Donald ロックフェラー大学, 教授
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研究期間 (年度) |
1989 – 1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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配分額 *注記 |
8,600千円 (直接経費: 8,600千円)
1990年度: 3,300千円 (直接経費: 3,300千円)
1989年度: 5,300千円 (直接経費: 5,300千円)
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キーワード | GRF / SRIF / 弓状核 / 室周核 / 甲状腺ホルモン / 成長ホルモン / fos蛋白 / 甲状腺ホルモン受容体 |
研究概要 |
1、成長ホルモン分泌に関与する視床下部GRF,SRIFの神経回路網と、特にSRIFの意義 脳下垂体前葉の成長ホルモン(GH)分泌細胞によるGH分泌は、視床下部ペプチドであるGRFとソマスタチン(SRIF)によって、それぞれ促進性と抑制性の調節を受けている。オスラットの甲状腺を摘除するとGH分泌の拍動的分泌の振幅は著しく低下する。これは甲状腺ホルモンがGH合成に必要であるという事実の他に、視床下部弓状核のGRFニュ-ロンおよび室周核SRIFニュ-ロンの活動に影響を与えることを示唆するものである。われわれはすでに(1)GRFとSRIFニュ-ロンをめぐる神経回路網の一部を明らかにした。すなわち、へん桃核外側基底部と視床下部弓状核GRFニュ-ロンとが分界条を経過して連絡いること、および脳幹部のノルアドレナリン性ニュ-ロンが視床下部室周核SRIFニュ-ロンと連絡していることを見出した。(2)オスラットの室周核を電気的に破壊すると、正中隆起のSRIFが特に減少するが、このようなラットの下垂体前葉はGRFに対する感受性は著しく低下している。(3)また遊離した下垂体前葉細胞を細胞周囲かん流でGH分泌、および細胞内遊離カルシウムの変動をみると、SRIFで前処理するとGRFによるGH分泌上昇と遊離カルシウムの増加反応が著名に増強される。このことは生体にSRIFが単にGH分泌を抑制するのみならず、GRF作用を増強する作用のあることを示唆する。 2、甲状腺ホルモンの脳内fos様蛋白、甲状腺ホルモン受容体、およびSRIF受容体に対する作用。 (1)癌遺伝子として発見されたfos蛋白質は細胞への信号伝達に応じて速やかにその遺伝子発現が誘導される物質として有名である。甲状腺を摘除した際、GH分泌の低下がみられる他、視床下部TRHニュ-ロンの活性の上昇、TRH分泌上昇によるTSH分泌の増加が起こる。そこで甲状腺を摘除したオスラットのfos様蛋白を特異的モノクロ-ナル抗体で免疫染色すると、室傍核の大細胞、小細胞領域および前視床下部、視床下部外側野、大脳皮質梨状葉にみられたfos様蛋白のうち、摘除6日以内では特に室傍核小細胞領域のものが倍増した。このことはfos蛋白の変動はTRH,TSH系との関連においてみられ、GH分泌に関与する弓状核や、室周核には変化はみられなかった。 (2)Protoーoncogene
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cーerbAの産物蛋白質は甲状腺ホルモンーT3を特異的に結合し、同ホルモンの受容体であることが知られている。脳はその成長、成熟にとって甲状腺ホルモンを必要んとする他、成熟ラットの形態、機能にとって必要である。脳にはcーerbAα1,α2、およびβ1の3種のT3ー受容体が大量に存在するが、その機能については全く不明であるといってよい。特にα2はT3歩合ドメインのカルボキン未端に83個のペプチド鎖をもっており、T3結合能を欠如している。そこでerbAα2m RNAを特異的にハイブリダイズする3H標識のriboprobeを用いてin situ hybridization法によりラット脳内におけるその所在を追及した。cーerbAα2のmRNAは脳内に広く分布し、特に密なる分布が確認されたのは、視床下部ー室傍核、腹内側核、弓状核であった。それ以外では海馬、へん桃体内側部、大脳皮質深層部、大脳皮質梨状葉であった。甲状腺摘除を行うと、視床下部室傍核においてmRNAの上昇がみられたが、他の部位では明らかな増減がみられなかった。以前Hodinらは、甲状腺機能低下によって全脳cーerbAα2のmRNAは量は変化しないと報告しているが、脳内の局所部位によっては差があり、少なくとも室傍核については甲状腺ホルモンによる調節を受ける可能性が考えられ、同所を通じてのnegative feedback機構が甲状腺ホルモン受容体発現を通じて行われる可能性も示唆され得ると考えられる。 (3)GRFmRNAの変動については今回は充分行えなかったが、最近FrohmanらはGRFmRNAの発現は甲状腺摘除によって上昇すること、およびGHによって同mRNAの発現がnegativeに調節されている結果であることが明らかにされた。すなわち、甲状腺摘除はGHの合成を低下させるる結果、GRFの遺伝子の発現が脱抑制されそのmRNAの増量おこるものと考えられている。 (4)ラット脳内SRIF受容体の甲状腺摘除による変動について SRIFはGH分泌を抑制するのみではなく、GRFに対するGH分泌細胞の反応性を増強することがin vitroの実験から明らかにされた。そこで脳内SRIF受容体が甲状腺摘除によってどのように変化するかをみた。オスラット脳内の125Iー標識(11ーtyr)ーSRIFの特異的結合を、ラジオオ-トグラフィ-で検索すると、大脳皮質深層部、同梨状葉、海馬、手網核、へん桃体外側部と同外側基底部に特に受容体が多いことが明らかとなった。甲状腺を摘除するとへん桃体受容体は有意に増加するが、T4投与3日後でもこの増量は続いた。へん桃体外側基底部は、視床下部弓状核GRFニュ-ロンと線継連絡をもっており、甲状腺機能低下状態が、へん桃体機能との関係において何らかの役割をもつ可能性が示唆された。 隠す
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