研究分担者 |
ヘルー スビヤントロ インドネシア大蔵省, 課長補佐
ケマン カスウリ INTN研究所, 教官
アイリーン セカ゛ラ フィリピン中央銀行, 課長補佐
ウチサルン タンチャイ タマサート大学, 政治学部, 助教授
西澤 弘 埼玉大学, 大学院・政策科学研究科, 助教授 (90228180)
増田 敏明 埼玉大学, 大学院・政策科学研究科, 助教授 (00219338)
下村 郁夫 埼玉大学, 大学院・政策科学研究科, 助教授 (00206244)
ローズ ジェームズ (ジェームズ ローズ) 埼玉大学, 大学院・政策科学研究科, 教授 (70216240)
大山 達雄 埼玉大学, 大学院・政策科学研究科, 教授 (30134323)
高木 誠一郎 埼玉大学, 大学院・政策科学研究科, 教授 (90114214)
西野 文雄 埼玉大学, 大学院・政策科学研究科, 教授 (90010777)
神田 淳 埼玉大学, 大学院・政策科学研究科, 教授 (20234156)
SEGARRA Arleen Assistant Director, The Central Bank of Philippines
TANCHAI Woothisarn Associate Professor, Faculty of Political Administration, Tamasat University
RHODES James Professor, Graduate School of Policy Science, Saitama University
KASWURI Keman Research Fellow, Institute of INTN, Malaysia
SUBIYANTORO Heru Assistant Director, Ministry of Finance, Indonesia
スビヤントロ ヘルー インドネシア大蔵省, 課長補佐
カスウリ ケマン INTN研究所, 教官
セカ゛ラ アイリーン フィリピン中央銀行, 課長補佐
タンチャイ ウチサルン タマサット大学, 政治学部, 助教授
岡田 章 埼玉大学, 大学院・政策科学研究科, 助教授 (90152298)
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研究概要 |
政策形成が白いキャンバスの上で行われることはほとんどない。むしろ,多くの場合,それは既存の政策の変更という形をとって行われる。そこで,本研究の前半部においては,先ず,産業技術,労働,地域開発の三政策分野について,それぞれ最近における主要な政策変更の経緯と背景を調査・分析した。すなわち,産業技術政策については,構造政策と組織政策という分類を用い,その各々について,政策変更の根底にある経済理論の変遷と政策との対応関係を追跡した。労働政策については,とくに中高年層の雇用対策に的を絞り,そこにおける政策ポジションの変化を跡づけるとともに,その原因の解明を行った。また,地域政策については,国レベルの施策について,その変化を年表化するとともに,とくに自治省が果たした役割の分析を試みた。 次に,定量的分析の立場から,政策循環の過程で発生する各種のラグを検討することの必要性が認識されたが,これについては,社会学的な視点から政策決定のアリ-ナとフィ-ルドという分析概念を導入し,それぞれに即して政策決定の類型化を行ったうえで,類型に応じてラグの形態と作用がどう変化していくかを追跡し,その含意を解明しようと試みた。また,これに関連して,官僚制における意思決定のル-ルを一般的な形で記述することが可能か否かの検討を行い,これについても,アリ-ナとフィ-ルドという分析概念を用いれば,ある程度可能になるという見通しを得た。 因みに,このアリ-ナとフィ-ルドという分析概念は研究分担者下村郁夫が考え出したものであるが,その後における検討の結果,最近アメリカやイギリスで用いられ始めた政策コミュニティの概念に吸収させることが可能であることが判明した。 前半部での研究を通じて明らかにされた日本における各種政策の形成ないし変更過程をASEAN諸国およびオ-ストラリアのそれと比較し,その特徴づけを試みるというのが後半部の主要課題であった。そこで,第3年次に再度これら諸国に赴いて情報・資料の収集を行った。これらの情報・資料は現在解析中であるが,これまでの作業から判明したところによると,これら諸国と日本の間には,政策の形成ないし変更を整序する公式の仕組には多くの共通性が見られるものの,その作業を具体化する非公式の仕組の面では大きな違いがある。すなわち,日本においては,それぞれの政策分野ごとに多様なアクタ-をメンバ-とする政策コミュニティが半公式の仕組として構成され,政策形式ないし変更の主体として機能するのが常態となっているのに対し,ASEAN諸国およびオ-ストラリアにおいては,このような政策コミュニティ-が一般に未成熟である。その結果,政策形成ないし変更は特定個人の意向に左右されて不安定化するか,既得権益に制約されて保守化するかのいずれかに陥る傾向が強いことが明らかになった。 後半部でとり上げるべきいま一つの研究課題は,効果の測定に関連して,実施過程における政策の修正メカニズムを明らかにすることであった。そのようなメカニズムが働いているために,測定の契機がいわば内部化され,観察者の立場からする測定が攪乱されるおそれがあると考えられたからである。この点については,日本の場合,いわゆる積上げ方式の隨伴効果として,政策の実施可能性に対する考慮が強く働き,目標と実績との開きが当初から制御されているのに加え,柔軟な実施手段である行政指導が実施途中における政策の軌道修正を容易にしているのではないかという仮説が導かれた。 ところで,行政指導は条件がととのわなければ成立しない。そして,そのような条件の一つに成熟した政策コミュニティの存在があることは近時における行政指導の研究成果が示すところである。ASEAN諸国やオ-ストラリアにおいて修正メカニズムの働きが弱い理由の一端はこの辺りにあるのではないかと思われる。
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