非均質構造材料の弾塑性破壊力学に関する研究 Study on ElasticーPlastic Fracture Mechanics in Nonhomogeneous Materials and Structures

• 研究課題/領域番号: 01044043
• 研究種目: 国際学術研究
• 配分区分: 補助金
• 応募区分: 共同研究
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 矢川 元基 東京大学, 工学部, 教授 (40011100)
• 研究分担者: ATLURI S.N. ジョージア工科大学, 教授 ; HUTCHINSON J ハーバード大学, 教授 ; MAYFIELD M. U.S.NRC(米国原子力規制委員会), プロジェクト研究官 ; WILKOWSKI G. バッテル研究所, プロジェクトマネージ ; 吉村 忍 東京大学, 工学部, 助教授 (90201053) ; 関東 康祐 豊橋技術科学大学, エネルギー工学系, 講師 (60177764) ; 菊池 正紀 東京理科大学, 理工学部, 助教授 (90107540) ; 宮崎 則幸 九州大学, 工学部, 助教授 (10166150) ; 西岡 俊久 神戸商船大学, 商船学部, 助教授 (60018067) ; 中垣 通彦 九州工業大学, 工学部, 教授 (90207720) ; 青木 繁 東京工業大学, 工学部, 教授 (90016436) ; 本間 寛臣 豊橋技術科学大学, エネルギー工学系, 教授 (70016583)
• 研究期間 (年度): 1989 – 1990
• 研究課題ステータス: 完了 (1990年度)
• 配分額: 9,500千円 (直接経費: 9,500千円); 1990年度: 5,000千円 (直接経費: 5,000千円); 1989年度: 4,500千円 (直接経費: 4,500千円)
• キーワード: 弾塑性破壊力学 / 非均質構造材料 / き裂進展解析 / 簡易評価法 / J積分 / 近接経路積分 / 溶接材料 / 有限要素解析

研究概要

国内においては、日本側研究グル-プの会合を5回開催し、溶接非均質材のCT試験片の実験結果(初期き裂先端が熱影響部に位置するもの、溶接線に位置するもの、溶接金属内に位置するものの3種と、それとの比較のために試験された均質母材試験片)に対して、実験結果から得られた、き裂進展量ー荷重ー荷重線変位関係を入力デ-タとする生成形型のき裂進展解析(詳細有限要素解析と簡易解析)を行った。その結果、従来型J積分と近接パラメ-タ(T^*積分やJ^^<^>積分など)は、き裂進展に伴う挙動は大きく異なるものの、従来型J積分でも、き裂が非均質材中を進展する際の抵抗挙動を定量的に把握できることがわかった。すなわち、熱影響部や溶接線のような低靭性部から溶接金属部などの高靭性部へき裂が進展していく際には、近接パラメ-タはき裂進展開始直後ほぼ一定となりき裂が界面を横切るとやや増加する傾向を示すのに対して、従来型J積分では、単調に増加しき裂が界面を横切るころから勾配が急になることがわかった。
同一の問題に対して従来型のJ積分簡易評価手法(3次元き裂にも拡張可能)を適用し結果の比較を行った。その結果、材料の構成式(ベき乗応力ひずみ関係など)を仮定し荷重情報のみを用いる簡易評価では、非均質材中をき裂が進展する際のJ積分の評価には材料物性値の選択(母材、溶接金属、その混合など)に多少の工夫を必要とすることも明らかとなった。
国際活動としては、6月下旬に吉村忍(東大)がジョ-ジア工科大およびオ-クリッジ国立研究所の研究者達とそれぞれに溶接材料の弾塑性破壊実験結果に関する討論と、き裂進展解析問題設定、解析方法に関する打ち合わせを行った。米国材料試験協会の破壊力学会議に出席し、非均質材料の弾塑性破壊力学(特にJ積分の簡便評価法)に関する調査を行った。
7月中旬から8月末まで、中垣道彦(九工大)が、ジョ-ジア工科大にて、非均質材料の数値破壊力学に関する共同研究(近接パラメ-タT^*積分を用いたき裂進展解析)を行った。さらに、ボストンにて、ジョ-ジア工科大(この研究者が平成2年度はMITの客員教授を兼任)、バッテル研究所、オ-クリッジ研究所、米国NRCの研究者達と、これまでの共同研究の成果に基づき、とくに従来型J積分と近接パラメ-タの非均質構造材料中の弾塑性き裂進展現象の記述能力に関する評価を行った。また、バッテル研究所にて、3次元き裂材の弾塑性破壊実験と解析の結果の検討を行い、MITにおいて複合材料の経年劣化材の破壊力学研究の調査を行った。
9月中旬には、米国オ-クリッジ研究所の研究者が来日し、日本側メンバ-と共同研究全般に関する打ち合わせを行い、さらに、日本側の研究メンバ-の機関(東大、東工大、豊橋技科大、神商大、九大、九工大)を訪問し、個別に研究内容に関する討論を行った。
9月末には矢川元基(東大)が、米国ワシントンにて米国NRCの研究者と最終年度のとりまとめ方法について打ち合わせを行った。
11月中旬から12月末まで、宮崎則幸(九大)が、バッテル研究所に滞在し、溶接材のき裂進展実験結果を対象として、2次元および3次元簡易評価に関する共同研究を行った。また、ワシントン大の研究者とJ積分の弾塑性き裂進展問題への適用性について、日米の光学実験法(米のモアレ法と日本の画像処理法など)による結果の比較を中心に討論を行った。
以上、最終年度の成果をまとめると次のようになる。
(1)溶接材の弾塑性き裂進展実験とそのき裂進展解析(詳細有限要素法解析)をシステマティックに行うことにより(日米の研究者がラウンドロビン解析を実施する)、従来型J積分を用いても非均質材中のき裂進展現象を定量的に把握できることが明らかとなった。(2)材料の構成式を仮定し、荷重情報のみを用いる簡易評価では、非均質材中をき裂が進展する場合のJ積分の評価には材料物性値の選択に多少の工夫を必要とする。
(3)溶接材の弾塑性破壊力学ばかりでなく、界面に存在するき裂の問題、複合材の分静的および動的破壊力学問題、非均質温度場における弾塑性破壊力学現象なで、そのほかの非均質構造材料の弾塑性破壊力学の現状が明らかとなった。

研究成果

• [文献書誌] G.Yagawa,S.Yoshimura,M.Kikuchi,S.Aoki,N.Miyazaki,M.Nakagaki,T.Nishioka: "Japanese Roundrobin Analyses of Stable Crack Growth in Inhomogeneous CT Specimens" 6th Int.Conf.on Mechanical Behaviors of Materials,Kyoto,July 28ーAug.2,1991. (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] G.Yagawa,S.Yoshimura,CーR.Pyo,A.Yoshioka: "Analysis of LargeーScale Crack Growth in Welded Plate Using Computer Image Processing" ASME PVP Conf.,San Diego,June 23ー27,1991. (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] M.Nakagaki,F.W.Brust,N.Miyazaki,T.Sasaki: "Effects of Thermal Inhomogeneity on Crack" 6th Int.Conf.on Mechanical Behaviors of Materials,Kyoto,July 27ーAug.2,1991. (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 菊池 正紀、矢野 一範、田村 敏功: "三次元き裂のHRR場の解析(第2報、表面き裂のHRR場)" 日本機械学会論文集A編. 56ー524. 831-837 (1990)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 西岡 俊久: "三次元だ円き裂重み関数法に関する研究(第一報、だ円き裂仮想進展による変位場第1変分に関する解析解)" 日本機械学会論文集A編. 56ー524. 824-830 (1990)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 青木 繁、岸本 喜久雄、竹内 則康: "界面き裂の弾塑性有限要素解析" 日本機械学会論文集A編. 56ー523. 638-645 (1990)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] G. Yagawa, S. Yoshimura, M. Kikuchi, S. Aoki, N. Miyazaki, M. Nakagaki, T. Nishioka: "Japanese Roundrobin Analyses of Stable Crack Growth in Inhomogeneous CT Specimens" 6th Int. Conf. on Mechanical Behaviors of Materials, Kyoto, July 28-Aug. 2, 1991. (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] G. Yagawa, S. Yoshimura, C-R. Pyo, A. Yoshioka: "Analysis of LargeーScale Crack Growth in Welded Plate Using Computer Image Processing" ASME PVP Conf., San Diego, June 23-27, 1991. (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] M. Nakagaki, F. W. Brust, N. Miyazaki, T. Sasaki: "Effects of Thermal Inhomogeneity on Crack" 6th Int. Conf. on Mechanical Behaviors of Materials, Kyoto, July 28-Aug. 2, 1991. (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] M. Kikuchi, K. Yano, T. Tamura: "Analysis of HRR Stress Field at the ThreeーDimensional Crack Tip (2nd Report, HRR Field of Surface Crack Problem)" Trans. JSME, Ser. A (in Japanese). 56-524. 831-837 (1990)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] T. Nishioka: "Studies on the ThreeーDimensional Weight Function Method for Elliptical Crack Problems (1st Report : Analytical Solution for the FirstーOrder Variation of the Displacement Field due to Geometrical Changes in an Elliptical Crack" Trans. JSME, Ser. A (in Japanese). 56-524. 824-830 (1990)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より