研究課題/領域番号 |
01044044
|
研究種目 |
国際学術研究
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
平山 淳 (1990-1991) 国立天文台, 太陽物理学研究系, 教授 (20012841)
日江井 栄二郎 (1989) 国立天文台, 太陽物理学研究系, 教授
|
研究分担者 |
BENTLEY R.D. ロンドン大学, マラード宇宙科学研究所, 研究員
CULHANE J.L. ロンドン大学, マラード宇宙科学研究所, 教授
小川原 嘉明 宇宙科学研究所, 宇宙圏研究系, 教授 (80013671)
坂尾 太郎 国立天文台, 太陽物理学研究系, 助手 (00225781)
末松 芳法 国立天文台, 太陽物理学研究系, 助手 (50171111)
常田 佐久 東京大学, 理学部, 助手 (50188603)
渡邊 鉄哉 国立天文台, 太陽物理学研究系, 助教授 (60134631)
小杉 健郎 国立天文台, 電波天文学研究系, 教授 (70107473)
CULHANE J. Leonard Mullard Space Science Laboratory, University College London
CULHENE J.L. ロンド大学, マラード宇宙科学研究所, 教授
|
研究期間 (年度) |
1989 – 1991
|
研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
|
配分額 *注記 |
10,800千円 (直接経費: 10,800千円)
1991年度: 3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
1990年度: 3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
1989年度: 3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
|
キーワード | 太陽軟X線スペクトル / ブラッグ分光器 / 太陽コロナ / 太陽フレア / 太陽高エネルギ-現象 / 軟X線高分解能観測 / ブラック分光器 / 日英協力研究 |
研究概要 |
平成2年11月から継続されていた最終総合試験は7月26日までを要して終了。続き続き8月より宇宙科学研究所鹿児島宇宙空間観測所において打ち上げオペレ-ションが始った。8月30日、科学衛星「SOLARーA」はM3SIIー6号機により地球周回軌道に投入され、「ようこう」と命名された。9月に入ってから観測機器の電源が投入され、全ての観測機器が正常に動作していることが確認された。日英協力により進められて来たブラッグ分光器(BCS)は、9月23日に高圧電源が投入されて観測体制に入った後、現在まで観測を行っている。 今極大期に飛翔実験を行ったブラッグ分光器の特長は、前極大期に飛翔したものに較べ、1桁近い感度の向上にあるといえるが、この性能向上の威力は、同衛星塔載の硬・軟両望遠鏡による撮像観測と合わせて、フレア物理にとって質的に違う新しいデ-タを提供しつつあるといえる。 まず最も大きな感度の向上があったヘリウム様イオウのスペクトルは、フレア時以外でも充分な信号を得ることが出来、活動領域の観測が可能となった。これにより軟X線望遠鏡による撮像観測との連携が実現した。活動領域内では、短い時間の尺度で、上層コロナの加熱が起っており、イオウのスペクトル解析から得られる電子温度は刻々変化している。活動の激しい時期には500万度を越えるプラズマが予想以上に大量に生産されていることが判明している。これらの高温プラズマの性質はX線画像や太陽表面の磁場の情報と合わせて、コロナ加熱機構に重要な手がかりを与えることとなろう。特に、いくつかのスペクトルには青方に偏位した成分が見られ、フレアに伴う彩層蒸発に酷似している様な振舞いを示すものがある。これらはX線の強度としては大変弱いものであるが、フレアと共通のエネルギ解放機構であるかどうかは重要な課題である。 水素様の鉄イオンのスペクトルを中規模のフレアで捕らえることに成功した。「ひのとり」が分解能の悪いスペクトルを大きなフレアで捕らえていたが、それより小さなフレアで波長分解能よく観測することが可能になった。これにより3,000万度を超える起高温プラズマの生成機構に迫ることができる。特に今回興味が持たれるのは、鉄の水素様イオンの生成が、硬X線スペクトルが非熱的な振舞いをする様なフレアでも顕著に見られることであり、従来のタイプA(「ひのとり」分類)に留まらず、全てのタイプのフレアにおける超高温成分の生成の様子が観測できる。 フレア時に彩層の物質がコロナ中に汲み上げられる彩層蒸発は既に知られている現象ではあるが、感度の向上により、BCSの全ての波長域でその極く初期の姿を捕らえることに成功した。すなわちフレアにより加熱され上昇しているプラズマからの輻射が卓越している状態、輝線全体が青方偏位しているスペクトルを観測した。これは彩層蒸発を決定的にする観測事実である。 BCSの4つのスペクトル、3つの元素からの輝線と連続光を比較することによりコロナ中並びにフレア中の元素の存在比を求めることが出来る。BCSの初期観測では以前から指摘があったコロナの元素存在比が光球のそれと異なるものがあることを確認すると共にフレアの進行とともに元素の存在比が変化している可能性を示唆している。 これらの初期観測の成果は、鹿児島宇宙空間観測所及びNASAのDeep Space Network(DSN)を通じて取得されたデ-タを迅速にデ-タ解析するシステムがあって始めて可能である。宇宙科学研究所並びに国立天文台に分散型のワ-クステ-ションを設置し、これらを回線で結んで総合的なデ-タ解析を行なうソフトウエアが整備されつつある。これにより「ようこう」観測機器間の共同研究、地上観測網との連携プレ-が有機的に行われることとなろう。
|