研究課題/領域番号 |
01044057
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
高津 斌彰 新潟大学, 教養部, 教授 (10018583)
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研究分担者 |
氷見山 幸夫 北海道教育大学, 旭川分校, 教授 (20142771)
阿部 隆 宮城学院女子大学, 学芸学部, 教授 (80094936)
実 清隆 奈良大学, 文学部, 教授 (70001229)
杉浦 直 岩手大学, 人文社会科学部, 助教授 (50004495)
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研究期間 (年度) |
1989
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研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
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キーワード | アジア系アメリカ人 / 移民 / 社会化 / 文化変容 / エスニシティ / 民族系組織 / マイノリティ / 企業活力 |
研究概要 |
この研究は本年度をもって初年度とした計画であり、継続されることを期待していたことから、初年度計画の範囲を越えるものではない。また10月に帰国してから充分な時間を経ていないこと、平成2年度5月の東北地理学会にて最初の研究発表をするよう準備してきたことから中間的整理の段階にあるが、日系(日系アメリカ)人を初めとするアジア系アメリカ人の人口分布・就業形態・民族組織研究の中から以下のような新しい知見を得て次のように纏めることができる。 1)ワシントン州における日系人はシアトル、タコマ地区を最初の中核地としてコミュニティ-を形成し、次第に内陸へ展開し、近年また大都市地域に集中しつつある。シアトル地区における民族組織と実態については組織関係者へのインタビュ-により日系人社会の分化傾向、脱組織化が始まっていることを見つけた(S)。 2)ワシントン州に定着した日系人は農業に多く従事した。しかし、外国人土地所有の禁止法や戦時中の強制収容によって、農業従事者は激減している。ワシントン州とオレゴン=カリフォルニア州の日系農民の定着・転出は異なっていることを見つけた。ワシントン州では多くが都市型農業に卓越するか、離農して都市型産業に従事することが多い(H)。 3)アジア系マイノリティ-は都心のインタ-ナショナルデイストリクトに混在するとともに郊外への分散傾向が強い。エスニシティ-より経済的要因が高い。ベトナム難民の移住も増えている。都市犯罪の増加と低所得者層の拡散傾向も、都心から郊外へ拡散している(J)。 4)アジア系アメリカ人の分布は南シアトルでは黒人の分布と重複する傾向にある。しかし日系人はレ-クワシントンやマ-サアイランド・東キングカウンティ方面に広がり、一世よりも二世、二世よりも三世の分散が大きい。韓国系人は留学生が中心であったが、1960年から70年にかけて造船所労働者として増えてきた、しかし1970年代の不景気によって食品店など自営業に転業していった。北シアトルが多くLinwoodやEdmondsなどの地域に集中していった。中国系人の集住はBeacon Hillから始まった。しかし中国系人には移動禁止線(Red Lining)があって、外側には拡大不可能であった。出身地は広東地方が多く、Mah(馬)性が多い。ベトナム戦争によって4万5000人の難民がワシントン州に流入し、うち2万人がシアトルに住み着いた。1975年からの初期にはフランス語系、80年代には中国系べトナム人、カンボジャのボ-トピ-プルが多く、彼らには6ケ月間の援助がある。住み着きは黒人の分布と重なる点が多い。International D.の東部にはベトナム系人を相手とする、商店街が開かれている(A)。 5)日系アメリカ人の企業は多くない、その理由は日系人は学歴が高く一流企業に入ることが可能であり、サラリ-マンの方が気が楽であることから2・3世は自営・独立・継承を好まなくなってきている。日本企業の活動は活発であり、現地法人を設けての新規進出の傾向が強い。しかしその行動様式にはアメリカ国内での社会風土に合わせにくい面があり心配しなければならない。特にコミュニティコントリビュ-ションの仕方に問題がある。日本企業の学校や地域コミュニティへの影響は日本人学校やPTA、寄付行為を初め地域社会へ与える影響は大きい。シアトルの現地普通高等学校に於いて日本語を選択する生徒が増えてきている。ダウンタウンの活性化が戻り、再開発が進捗し出したが、それには従来のヨ-ロッパ系の資本に交替してカナダ経由の香港=中国系資本、及び日本系企業資本の流入参加傾向が強い。日系企業の社員の子弟達を「会社キッヅ」と呼びこれの学校・近隣での社会性が問題になってきている。日系米人と日本企業とのあり方には微妙なものがあり、アメリカ人社会では避けられないことである。日本企業の行動についての一般アメリカ人による日系人への強いリアクションがある。企業の連絡組織は経済的な目的をもたないが、結果としては種々の効果をもっている。日系組織と連帯する民族組織は中国系・フィリピン系組織であり、韓国系・ベトナム系組織とは選挙・文化・リクレ-ションでも生まれにくい(T)。
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