研究分担者 |
甄 進明 北京大学, 地球物理系, 助教
張 呈祥 北京大学, 地球物理系, 講師
杜 金林 北京大学, 地球物理系, 講師
胡 成達 北京大学, 地球物理系, 副教授
趙 柏林 北京大学, 地球物理系, 教授
光田 寧 京都大学, 防災研究所, 教授 (90027219)
田中 正之 東北大学, 理学部, 教授 (90004340)
浅井 冨雄 東京大学, 海洋研究所, 教授 (80025288)
加藤 内蔵進 名古屋大学, 水圏科学研究所, 助手 (90191981)
石坂 隆 名古屋大学, 水圏科学研究所, 助教授 (50022710)
ZHEN Jinmin Department of Geophysics, Beijing University
ZHANG Chengxiang Department of Geophysics, Beijing University
HU Chengda Department of Geophysics, Beijing University
ZHAO Bolin Department of Geophysics, Beijing University
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研究概要 |
東シナ海・南西諸島海域を中心に、海洋からの熱の供給,大気の鉛直熱輸送,大気の雲の放射収支など、海洋,大気,雲の相互作用により形成維持されている海洋上の層状雲について、その熱収支の特徴,過程を明らかにするため、日本と中国の研究者の共同観測研究を行なった。 1.平成2年1月と平成3年1月にはWCRP(気候変動国際協同研究計画)の『南西諸島海域“雲・放射"観測計画』による2台の航空機を用いた特別観測に合わせて、奄美大島で日中共同観測を行なった。共同観測では、特に平成3年1月には、北京大学の3台のマイクロ波放射計,日本側のミリ波レ-ダ-,ドップラ-ソ-ダ,低層ゾンデを用いて、雲層および雲低層の構造を衛星MOSー1、MOSー1bとの同時観測も含めて、より詳しく観測した。また、現地観測に合わせて人工衛星NOAAのAVHRRデ-タ,GMSデ-タを受信した。 2.共同観測で用いるはマイクロ波放射計の絶対検定は大変難しいが、平成元年2月に潮岬で行なったマイクロ波放射計の日中比較観測の結果を解析したところ、それぞれの放射計のデ-タより求めた雲水量の値は比較的よい一致をみた。 3.3年間、各年に日本の研究者が北京大学を訪問し、日中共同観測に関する打合せ、及びその解析結果の検討も含めた研究のため、打合せを行なった。 4.各年度の日中共同観測終了後、名古屋で日本及び中国の研究者が集まって研究を行ない、観測結果の解析,研究打合せなどを行なった。特に平成3年1月の観測終了後は、海上の下層の層状雲の熱収支に関する総括を行なった。 5.南西諸島近海域における冬季に出現する下層雲は、寒気吹き出しの強さやその時の大規模な大気循環場の違いにより、降水エコ-を伴うことがあり、そのエコ-の有無や特徴は、大きく変動することがレ-ダ-の観測により明らかになった。これは雲の熱収支構造を大きく反映する因子の一つである。ところで、このように降水を伴う雲がある場合、従来のドップラ-ソ-ダでは観測が不可能であったが、平成3年1月の観測に先立ち、ドップラ-ソ-ダの機器(観測システム)や解析システムや解析システムを改良・開発し、同年1月の観測では、その有効性が確かめられた。 6.平成2年1月、平成3年1月における奄美大島における日中共同観測のデ-タを、同時に行なわれたWCRP特別観測や衛星デ-タ,気象デ-タと共に解析し、大気下層の下層雲の分布の特徴とその変動について調べた。特別観測期間全体(他の冬も含み)の特徴について、総観規模の大気循環場の場所による違いや時間変化に伴なって、南西諸島近海域でも積雲的な雲,層雲的な雲と、その特徴が大きく異なることがわかった。特に、人工衛星NOAAのAVHRRデ-タを用いた海上の下層雲の判別法,雲量評価法を開発し、その方法を用いた寒気吹出し時の東シン海・南西諸島海域に形成された下層雲に関する事例解析によれば、大陸からの距離と南北方向の海面温度の違いに対応して、雲の大きさ、形状が系統的に変わることが示された。例えば、大陸に近い場所では小さなサイズの雲が多く、黒潮の流れる南西諸島近海になると、相対的に個々の積雲の水平スケ-ルは大きく、かつ雲のすき間も広がる(事例解析ではあるが)。また、気候学的な雲水量の分布も、このような雲水量の分布も、このような雲の形状の変化と関連が深い可能性が示唆されており、また、日々の雲の形状の変化に対応し、同じ雲量であっても雲水量の数Kmスケ-ル(水平)での集中度の違いなど、興味ある事実が示されている。 7.このような雲の分布が、大気と海面の状態に応じて変わる物理過程を調べるために、中層の大規模な沈降,海面から大気への熱・水蒸気輸送,雲低下層における熱・水蒸気の乱流輸送,水蒸気の凝結過程,雲頂の混合過程,雲・大気層の放射モデル等を含む数値モデルを開発した。それを南西諸島海域にも適用し、雲の形状を決める混合過程は雲頂付近の大規模場の気温,湿度のみでなく、海面温度にも敏感であり、すなわち雲頂過程が海面での熱・水蒸気交換過程を変化させる形での混合層発達へのフィ-ルドバックが示された。
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