研究課題/領域番号 |
01044066
|
研究種目 |
国際学術研究
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
日高 弘義 名古屋大学, 医学部, 教授 (80100171)
|
研究分担者 |
HARTSHORNE D アリゾナ大学, 生化学栄養食品化学部門, 教授
徳光 浩 名古屋大学, 医学部, 助手 (20237077)
渡辺 正人 名古屋大学, 医学部, 助手 (30220924)
小林 良二 名古屋大学, 医学部, 助教授 (00020917)
萩原 正敏 名古屋大学, 医学部, 助手 (10208423)
|
研究期間 (年度) |
1989 – 1991
|
研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
|
配分額 *注記 |
7,300千円 (直接経費: 7,300千円)
1991年度: 2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
1990年度: 2,600千円 (直接経費: 2,600千円)
1989年度: 2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
|
キーワード | ミオシン軽鎖リン酸化反応 / 蛋白質リン酸化反応 / Ca^<2+>結合蛋白質 / プロテインキナ-ゼ / KNー62 / ミオシン脱リン酸化酵素 / カルモデュリンキナ-ゼII / カルシウム結合蛋白 / カルギザリン / カルバスクリン |
研究概要 |
カルモデュリン依存性ミオシン軽鎖キナ-ゼ(MLCK)によるミオシン軽鎖リン酸化反応は、平滑筋収縮に必須である。しかし、脱リン酸化後の張力維持機構や他のプロテインキナ-ゼによる制御、あるいは、非筋細胞におけるアクトミオシン系の役割やその調節機構については不明な点が多い。本研究は、平滑筋・非筋細胞での収縮制御機構の分子モデルを構築することを目的として、平成元年度から平成3年度までの3年間、米国アリゾナ大学ハ-トショ-ン教授らと国際共同研究を行ない以下の成果を得た。MLCKは、平滑筋のみならず、血小板など非筋細胞や骨格筋にも多量に存在している。そこでまず、ニワトリ砂のうMLCKを抗原としてモノクロ-ン抗体を作成し、12種のエピト-プの異なる抗体を得た。ウヱスタンブロッテングにより各組織のMLCKとの交叉反応を調べるとMLCKには平滑筋・非筋細胞・心筋・骨格筋型の少なくとも4種のアイソザイムが存在し、平滑筋と非筋細胞のMLCKは高い相同性を有するが、骨格筋MLCKは他の組織とは全く異なる酵素であることが判明した。また、MLCK活性を阻害するモノクロ-ン抗体の添加によってアクトミオシンの超沈殿反応が阻害されることを明らかにした。脱リン酸化後の張力維持などミオシン軽鎖リン酸化反応だけでは説明できない現象を明らかにするためMLCK以外のCa^<2+>依存性プロテインキナ-ゼの関与についても検討し、平滑筋においてカルデスモンをリン酸化する酵素を発見し、これが脳のカルモデュリンキナ-ゼII(CaM KII)と同一であることを証明した。次に、平滑筋収縮におけるCaM KIIの役割を解明するために独自に創製したカルモデュリンキナ-ゼII特異的阻害剤KNー62の作用を検討した。KNー62は、CaM KIIをKi値0.9μMでカルモデュリンに競合的に阻害するが、他のプロテインキナ-ゼには影響がなかった。KNー62は、ウサギ頸動脈ラセン条片のノルエピネフリン・セロトニン・ヒスタミンあるいは脱分極筋のCa^<2+>収縮などを非競合的に抑制した。また、イオノマイシン刺激ウシ気管平滑筋細胞のFulaー2法で測定した細胞内Ca^<2+>濃度の増加にはKNー62は影響しなかった。Ca^<2+>動員性のアゴニスト刺激で、ウシ気管平滑筋は、ミオシン軽鎖とともにMLCKもリン酸化され、ミオシン軽鎖のリン酸化は、KNー62の前処理によりコントロ-ルよりも増加した。これらの知見は、CaM KIIが、平滑筋収縮に関与している可能性を示すものである。 さらに、カルモデュリンを含めたCa^<2+>結合蛋白がリン酸化反応によらない平滑筋収縮調節機構に関与している可能性が示唆されているが、我々は、3種類の新しいCa^<2+>結合蛋白質を同定・発見した。カルサイクリン・カルヴァスキュリン・カルギザリンと命名した3つのCa^<2+>結合蛋白質はいずれも分子量が約1,100の酸性蛋白で、よく似ており、cDNAクロ-ニングの結果得られたアミノ酸の一次構造上S100蛋白質ファミリ-に属することが判明した。これらの蛋白質の機能は現在不明であるが、カルサイクリンとカルヴァスキュリンの標的蛋白質としてそれぞれアネキシンファミリ-に属するCAPー50と細胞外マトリックスに存在する36kDa MAPを発見した。少なくとも3つのCa^<2+>受容体が平滑筋に存在することは、新しいCa^<2+>情報系の存在が考えられ平滑筋の収縮制御機構を解明するうえで重要である。一方、脱リン酸化酵素については、PNPPを基質としてLiらの方法で活性を測定し、超遠心分離・硫安分画・DEAEセルロ-スクロマトグラフィ-で部分精製を行ない、3つの活性ピ-クを分離した。ピ-クIIおよびIIIは、基質のリン酸化ミオシンを脱リン酸化した。興味深いことにピ-クIIは、どのプロテインキナ-ゼでリン酸化したミオシンも脱リン酸化したが、ピ-クIIIは、Cキナ-ゼによってリン酸化されたミオシンだけが脱リン酸化された。これらの脱リン酸化酵素の平滑筋収縮における役割を今後の検討課題である。 最後に、この研究の遂行ならびに結果の公表には双方の研究代表者・分担者・協力者を必要に応じて派遣・招へいし、効果的な研究費補助金の使用に努め、当初目的以上の成果が得られたと考える。
|