研究課題/領域番号 |
01044068
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
木村 宏 滋賀医科大学, 分子神経生物学研究センター, 教授 (40079736)
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研究分担者 |
VINCENT Stev ブリティシュ, コロンビア州立大学・神経学(カナダ), 準教授
MCGEER Edith ブリティシュ, コロンビア州立大学・神経学(カナダ), 名誉教授
MCGEER Patri ブリティシュ, コロンビア州立大学・神経学(カナダ), 教授
藤宮 峯子 滋賀医科大学, 医学部, 助手 (10199359)
遠山 育夫 滋賀医科大学, 分子神経生物学研究センター, 助手 (20207533)
花井 一光 滋賀医科大学, 分子神経生物学研究センター, 助教授 (40108642)
VINCENT Ste ブリティシュ, コロンビア大学・医学部(カナダ国), 教授
MCGEER Edit ブリティシュ, コロンビア大学・医学部(カナダ国), 教授
MCGEER Patr ブリティシュ, コロンビア大学・医学部(カナダ国), 教授
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研究期間 (年度) |
1989 – 1991
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研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
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配分額 *注記 |
9,100千円 (直接経費: 9,100千円)
1991年度: 2,800千円 (直接経費: 2,800千円)
1990年度: 2,800千円 (直接経費: 2,800千円)
1989年度: 3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
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キーワード | アルツハイマ-病 / 痴呆症 / コリン神経脱落 / 線維芽細胞成長因子 / 成長因子受容体 / 亜酸化窒素 / 老人斑 / アストロサイト / FGF / aFGF / bFGF / FGF受容体 / アストログリア / コリンアセチル基転移酵素 / NADPHジアホラ-ゼ / コリン神経 / 痴呆 / 老化 |
研究概要 |
アルツハイマ-病は何らかの脳内活性物質の生産が低下あるいは異常亢進して出来るのではないかという仮説を、分子生物学など遺伝子レベルでの技法も取り入れて研究するのがテ-マであった。この大きなテ-マを実行するために、(1)実際にアルツハイマ-病の剖検脳を調べる、(2)実験的・基礎的にその物質の本能を解明する、(3)脳のような中枢神経系で生じている現象が末梢神経系でも生じうるのかについて研究モデルを作る、の3グル-プに分け遂行した。 (1)アルツハイマ-型痴呆脳では、正常加齢だけではみられない物質の発現があることを見出した。初年度では、まず皮質下の無名質というコリン神経核から大脳皮質への強力な入力がアルツハイマ-病で脱落すること、その脱落と老人斑および神経原線維変化という2大病理所見とが関連する可能性が強いこと、さらに正常脳には見出されない免疫関連物質がこの病気で出現しグリア細胞がその発現を担っていることを明らかにした。2年度では、コリン神経の脱落死減に対して防御作用をもつ線維芽細胞成長因子(とくにaFGF)がアルツハイマ-病の脳で発現されていることを発見した。この発現は老人斑や神経原線維変化が多発する部位とくに大脳皮質に一致してみられる。しかもaFGFの発現を示すアストログリアは老人斑の周囲に接して分布することから、老人斑形成と深い関連をもった現象と考えられた。さらには、aFGFアストログリアがとり囲む老人斑の中心部には、aFGFの向神経栄養作用を増強させるヘパラン硫酸プロテオグリカンが存在することが確かめられた。最終年度では、記憶保持に関連する中隔野から海馬へ投射する新しいコリン神経路について報告を行なうとともに、FGFが作用する受容体の解剖学的研究にとりかかった。FGF受容体はこの2年間のうちに次々と新しいサブタイプが発見されつつあるので、その報告と同時にアルツハイマ-病における動態を検索した。まずとりあげたaFGFとbFGFの共通受容体構造について人工ペプチドを作製しその抗体を作成した。この抗体による解析では、共通構造タンパクの発現は下方制御されていた。しかし、aFGF特異的受容体について同様な解析を行ったところ、主としてオリゴデンドロサイトに高レベルの発現がみられた。おそらく、aFGFの過剰産生し、aFGF受容体の過剰産生が、アルツハイマ-病の進行の一時期に生じていると思われる。これら過剰産生をもたらす遺伝子情報のメカニズムは今後の検討課題である。 (2)アルツハイマ-病では、コリン神経の脱落が生じるという点に焦点をあて、その機構を探る手始めとして、コリン神経に共存する可能性のある脳内活性物質の検索にとりかかった。多くの神経ペプチドが極めて恣意的かつ低頻度にコリン神経に共存するが、主たる協同作用をもつ組み合わせはなかった。しかし、橋脚被蓋核に分布するコリン神経の場合、そのほとんどがNADPHージアホラ-ゼを含有することを見出した。その分布状況について、末梢から脳・脊髄に至る神経系をくまなく探索し分布図を作成した。最終年度を迎える直前になって、NADPHージアホラ-ゼが新しいセカンドメッセンジャ-である亜酸化窒素(NO)の合成酸素と同一タンパクであることが本研究共同グル-プの一人Vincentによって明らかにされた。そこで、これまでのデ-タを流いなおし「脳内NO合成酵素含有ニュ-ロンの分布図」を作成した。今後は、この基礎的成果をアルツハイマ-病の病態に結びつけた研究を続行する予定である。NOは膜レセプタ-を介し、あるいは介さずにcGMP系の賦活をもたらす点、アミン神経の多くの例とは異なった作用を示すことから、この面での研究進展が大いに期待されるところである。 (3)末梢コリン神経系は古くからその存在が証明されているにも拘らず、その形態学的立証が困難なことから、中枢コリン神経との対比や相同性あるいは相異点については明確でない。この問題を、生理学的な面から検索するため、腸管内分泌系の権威であるブラウン教授(UBC、生理学)との協同研究を行った。実験モデルとして、ラット十二指腸を血管と共に単離し、血管および腸管腔の両方を任意の人工溶液で潅流する手法を3年間かけて確立することができた。予備的な実験では、末梢コリン神経の作用の一面は中枢コリン神経のそれに酷似するという傍証が得られている。
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