研究課題/領域番号 |
01044080
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 岡崎国立共同研究機構 |
研究代表者 |
竹内 郁夫 岡崎国立共同研究機構, 基礎生物学研究所, 所長 (90025239)
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研究分担者 |
WILLIAMS J. 英国帝国癌研究所, 教授
田坂 昌生 京都大岸, 理学部, 助教授 (90179680)
JEFFREY G. Williams Imperial Cancer Research Fund
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研究期間 (年度) |
1989 – 1991
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研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
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配分額 *注記 |
6,400千円 (直接経費: 6,400千円)
1991年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1990年度: 2,800千円 (直接経費: 2,800千円)
1989年度: 2,600千円 (直接経費: 2,600千円)
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キーワード | 細胞性粘菌 / 細胞分化 / パタ-ン形成 / 細胞選別 / 遺伝子発現 |
研究概要 |
細胞性粘菌の発生系では、細胞が集合して組織を形成するとその内部に2種類の細胞(予定柄細胞と予定胞子細胞)が組織の大きさに関係なく一定の割合で分化し、それぞれ組織の前後を占める。我々は、それぞれの予定細胞の分化に伴なって特異的に発現する遺伝子を用いて、細胞分化ならびに分化パタ-ン形成機構を明かにすることを目的として研究を行い、次のような成果を得た。 (1)予定柄細胞に特異的に発現するecmAおよびecmB遺伝子のプロモ-タ-と大腸菌のβーガラクトシダ-ゼ遺伝子をつなげたキメラ遺伝子を形質導入した細胞をWilliamsが持参して来日し、我々が開発した組織の形態形成がおこらない液体培養条件下で培養し、得られた球形の細胞凝集塊において予定柄細胞の分化がいかに進行するかを調べた。その結果、凝集塊内では先づecmA遺伝子を発現する細胞がほぼランダムに出現し、ついでそれらの細胞が凝集塊の中心に集まることがわかった。次いで、ecmB遺伝子を発現する細胞が凝集塊の外周に出現し、やがて外周の1〜2層のすべての細胞がこの遺伝子を発現するようになった。これらの結果は先に抗胞子抗体を用いて調べた予定胞子細胞の分化パタ-ンと鏡像をなすものである。また、先にWilliamsらが明かにした正常発生過程中の組織における両遺伝子の発現パタ-ンとも矛盾せず、組織における分化パタ-ン形成が特異的遺伝子を発現した細胞の選別によっておこることを示している。 (2)予定胞子細胞の分化に伴って特異的に発現するDp87遺伝子の転写制御に係わるDNA領域を明かにするために、この遺伝子の上流域とCAT遺伝子をつなげたキメラ遺伝子を粘菌細胞に形質導入して調べた。その結果、転写開始点上流-442から-349bpの間にこの遺伝子の転写に重要な働きをもつシステム領域が存在することが示された。そこで、この領域が細胞型特異的あるいは発生段階特異的転写に関与するか否かを明かにするために、この領域をWilliamsから分与された粘菌のアクチン遺伝子のベ-サルプロモ-タ-とつなげ、大腸菌のβーガラクトシダ-ゼ遺伝子をレポ-タ-として調べた結果、このキメラ遺伝子は増殖期から強い発現を示し、予定柄および予定胞子細胞間で発現の差が認められなかった。同様なことは、Dp87遺伝子の上流域-666bpから-156bpをつなげた場合も同様であった。さらに、前述のシス領域をDp87遺伝子のベ-サルプロモ-タ-につなげた場合にも同様な結果が得られた。これらの事実は、先に同定されたシス領域が転写量の増大にのみ関与し、細胞型特異的転写に関与する領域は-349bpより下流に存在することを示唆しており、現在この領域を同定中である。 (3)Dp87遺伝子のプロモ-タ-とβーガラクトシダ-ゼの遺伝子をつなげたキメラ遺伝子を粘菌細胞に形質導入し、発生過程における発現を調べた。その結果、ノザン法で調べられるmRNAの発現時期よりも早く集合中の細胞の一部で発現がみられた。これはこれまでよりも高い検出感度で個々の細胞における発現を調べることができたためと考えられる。この時期にはDP87を発現する細胞は集合流の中でランダムに現れるが、組織が乳頭状突起を形成する頃には組織の下部に集まった。この事実は、分化した細胞間の選別により特異的な分化パタ-ンがつくられるという考えを正常発生過程で予定胞子細胞の変化から初めて実験的に明かにしたものである。 (4)我々が得ていた予定柄細胞に特異的なcDNADt114に対応するゲノム断片をWilliamsのゲノムDNAライブラリ-を用いてクロ-ン化した。このクロ-ンはDt114をコ-ドする全域並びにこの遺伝子の5'上流域と3'下流域を含む。 (5)粘菌のcAMP合成酵素であるアデニルシクラ-ゼ遺伝子のクロ-ン化をWilliamsのゲノムDNAライブラリ-を用いて行った。その結果、この遺伝子を含む可能性をもついくつかのクロ-ンが単離されたが、他研究者との競合になったので、研究を中止した。
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