研究課題/領域番号 |
01044097
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 岡山理科大学 (1990) 岡山大学 (1989) |
研究代表者 |
吉田 敏治 岡山理科大学, 教養部, 教授 (50040895)
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研究分担者 |
FX.WAGIMAN Gadjah Mada University, Fac. Agric., 助手
SUPRAPTO Man Gadjah Mada University, Fac・Agric., 助教授
KASUMBOGO Un Gadjah Mada University, Fac. Agric., 助教授
高橋 史樹 広島大学, 総合科学部, 教授 (00026436)
中筋 房夫 岡山大学, 農学部, 教授 (20109317)
UNTUNG Kasumbogo Fac. Agric., Gadjah Mada University Ass. Professor
MANGUNDIHARDJO Suprapto Fac. Agric., Gadjah Mada University Ass. Professor
WAGIMAN Fx Fac. Agric., Gadjah Mada University Instructor
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研究期間 (年度) |
1989 – 1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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配分額 *注記 |
6,400千円 (直接経費: 6,400千円)
1990年度: 3,300千円 (直接経費: 3,300千円)
1989年度: 3,100千円 (直接経費: 3,100千円)
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キーワード | インドネシア / クモの害虫抑制効果 / 生物群集 / 貯蔵物害虫 / アカアシホシカムシ / ガイマイゴミムシダマシ / タナトラジヤ / コクヌストモドキ |
研究概要 |
インドネシアにおける貯蔵農産物の害虫被害の実態を調査した。これまで発展途上国での農産物の害虫による被害は甚大であると信じられていた。その理由の一つは、熱帯に位置している発展途上国の気候は一般に高温多湿であり、その気象条件が貯蔵物害虫の発生に最適であるからというものであり、もう一つは、発展途上国の科学技術は未熟で、経済力が微弱である(未開である)ために、貯蔵物害虫の防除に、金のかかる近代的技術が駆使出来ないからであるというものである。今回の調査で、インドネシアでの貯蔵物の害虫被害はそれほど大きくはないという事が分かった。害虫被害が大きいと信じられた2つの理由の内、前者の理由は真実である。しかし後者の理由は事実ではない。インドネシアでは、温帯で開発された先進国の近代技術を無批判に導入し、形だけの近代化を図ったがために害虫が大発生している。つまり害虫の大発生は未開であるが故ではなく、誤れる近代化の故である。未開の伝統的な農産物処理・貯蔵のあり方の中にかえって害虫による甚大な被害から免れる英知が隠されている。私たちはその英知を、科学的に明確にし、それに基づいた新技術を開発しなければならない。 穀物の被害の最も激しかったのは、BULOGの近代的米穀貯蔵庫においてであった。発展国の倉庫をそのまま真似て造った鉄筋コンクリ-トの、密閉された倉庫内は高温多湿で蒸れ、害虫の温床となっている。温帯と違って害虫の発生に極度に好適な熱帯では、害虫はそこで急速に大発生を繰り返す。その結果増殖してしまった害虫を近代的技術の粋であるくん蒸によってただ殺しているというのが、政府機関で現実にとられている技術の姿であった。 生産された米の70%は農家で自家消費されている。農家で米が害虫被害から免れている最も大きい理由は生産から消費までの時間間隔が短いことである。害虫発生量は穀物の生産量と貯蔵期間の関数である。大量の穀物が生産され、大量の穀物を貯蔵する必要が生じ、その期間が長ければ長いほど害虫は大発生する。生産から消費までの期間が短ければ害虫は発生する間がない。今のところ、幸い、調査した米の予備を持っている富農の穀庫での害虫被害はそれほど大きくはない。ただ屋根裏の棚の上に長期置き忘れていたトウモロコシなどには各地で散発的に害虫が大発生している。 今世紀初頭まで、海岸域から隔離されて長期伝統文化を保持し続けてきたタナ・トラジャでは、いまでも伝統的な舟形の穀物貯蔵庫を建て、その中に稲穂を貯蔵している。そこでは林床を思わせるような多様な生物相が維持されており、一部の倉庫のバクガの発生を除き、害虫は全く発生していなかった。インドネシアの各地の穀物庫を調査して回り、そこでのクモの種類数の多さには驚いた。都市では華僑の穀物商が、大きな倉庫内に大量の米穀を貯蔵している。その米袋の上はびっしりとクモの巣で覆われており、まさに虫の入り込む隙もない。そこではクモが貯穀害虫の穀物への侵入を完全に防いでいる。 クモに貯穀害虫発生に対する抑制効果があるかどうかを、ヨギアカルタ近郊の農家の小屋を借りて、実験的に調査した。その結果、クモがコクゾウの発生を抑制していることが確かめられた。このことは、貯蔵庫内に形成される生物群集の作用力を巧みに利用することによって、穀物を害虫の甚大な被害にさらすことなく、安全に貯蔵できる可能性のあることを示唆しているものと考えられる。 コプラ工場ではアカアシホシカムシが大害虫であった。ガイマイゴミムシダマシも大きな害虫であった。この害虫は色々なところで大発生しており、インドネシアにおける最大の貯穀害虫の一つであることが分かった。また、インドネシアでは、コクヌストモドキが白米の大きな害虫であることも分かった。
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