研究課題/領域番号 |
01044098
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
升島 努 広島大学, 医学部, 教授 (10136054)
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研究分担者 |
安藤 正海 高エネルギー物理学研究所, 放射光施設, 教授 (30013501)
雨宮 慶幸 高エネルギー物理学研究所, 放射光施設, 助手 (70151131)
塩飽 秀啓 日本学術振興会, 特別研究員 (10222043)
SKOTHEIM Ter ブルックヘブン国立研究所, 応用科学, 博士研究員
EYRING Edwar ユタ大学, 化学科, 教授
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研究期間 (年度) |
1989 – 1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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配分額 *注記 |
2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
1990年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
1989年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | 光音響法 / X線分析 / X線光音響法 / シンクロトロン放射光 / 材料分析 |
研究概要 |
1.高輝度用光音響装置の製作 高輝度、ロ-エミッタンスのX線に適した微小領域用の光音響セルを試作した。照射域を5mmφと小さくし、同時に高感度となる事をねらったが、Cu Kーedge上でのCu箔の試料では1.2倍程度であった。この高エネルギ-物理学研究所での共同研究の結果を米国に持ち込んだが、逆に割当られたNSLSでのビ-ムラインX23A2は、非集光であり、この場合照射フォトン数が相対的に低下し光音響信号の強度はむしろ低下することがわかった。NSLSはlowエミッタンスではあるが、光音響測定では、ビ-ムを点集束しない限りそのメリットはないことが解った。 2.新しい発見 この実験の最中に共同研究者の米国Eyring教授が、我々の測定系を利用して、新しい試みを行った。それは金属箔の上に揮発性の有機溶媒を滴下して測る試みで、その結果信号強度は5〜10倍増加した。彼らはNSLSで更に研究を重ね、その原理と結果を論文に掲載した(文献リスト1)。この手法は、信号の小さいX線光音響法には、大きな福音であるが、特に表面分析に大きな威力を発揮する事であろう。一つの問題は、再現性に欠ける点で、今後の研究発展にはこの点の改善が課題である事が解った。 3.新しい試み 平成元年度のNSLSでの研究で合流した、ジョンズホプキンス大マ-フィ-教授は、試料表面で発生する光音響信号源である発熱を、しんきろう現象を利用して捉える、新しい試みを行った。その結果、僅かにノイズに埋もれて信号らしきものが捉えられた。しかしこれは未だ再現性に乏しく、現在も実験が繰り返されている。さらに真空下でも可能な、表面反射率の変化を捉える手法も検討している。 4.高輝度光による実験 上記の新装置にて、まず高エネルギ-物理学研究所にて、モデル試料としてのCu箔を用い、実験を行った結果良好なスペクトルが得られた。さらに高温超伝導体を測定したところ、従来の吸収法では測定できない様な光学的に分厚い試料でも、そのままで測定できることが解った。同じ測定を米国にて行った所、割当のビ-ムラインX23A2が非集光系である事から測定感度が稼げず、50スキャンの多数回の平均を取る手法で可能となった。しかし、ビ-ムラインのソフトウェア-の違いは大きく、測定のしやすさ、測定中でもできるEXAFS解析など、日本に導入すベき点が多い事が解った。いまソフトを転載可能か交渉中である。 5.日米比較実験 高エネルギ-物理学研究所フォトンファクトリ-およびNSLSでの光の性質とフォトン数を比較する為、同一イオンチェンバ-を用い、また同一光音響セルを用いて測定した。その結果X線光束量に於いては、電流値あたりでほぼ同レベルで、またエミッタンスも現在高エネルギ-物理学研究所も改善しており、ほぼ同一である事が解った。現時点では両国ほぼ同じレベルであり、使い易さでは、インジェクション後のライフタイムも電流値も高い高エネルギ-物理学研究所が良いが、システムなどのソフトウェア-は、NSLSが良く、両者に長短あることが解った。 6.総括 X線光音響法には、光源のエミッタンス性は問題ではなく、光束量が多い事が重要であった。しかしこれは本質的な問題ではなく測定系の感度面の改善でも対処でき、現在当教室を中心に進めている、超高感度マイクロホンの開発などX線光音響測定系の改善が今一つのアプロ-チである事を本研究は示した。また諸外国のシンクロトロン放射光施設は、各々の特徴を持って、そのアイディンティティ-を売りものにしているが、総合的には日本の高エネルギ-物理学研究所放射光施設が世界トップのものである事を改めて知らされた思いである。今後は本施設を利用し、さらに現実の試料の測定に対処出来るよう、感度などの改善を行っていく。
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