研究課題/領域番号 |
01044100
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 放送大学 (1990-1991) 広島大学 (1989) |
研究代表者 |
鬼頭 昭三 放送大学, 教養学部, 教授 (00010140)
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研究分担者 |
HAYCOCK John Department of Biochemistry Lousiana Stat, 教授
JOH Tong H. Cornell Univ. Medical College, 教授
FISCHER Edmo Univ. of Washington Biochemistry Dep., 教授
HOUSER Carol UCLA School of Medicene, 助教授
JENDEN Donal UCLA School of Medicine, 教授
OLSEN Richar UCLA School of Medicine, 教授
三好 理絵 東京女子医科大学, 助手 (80209965)
米田 幸雄 摂南大学, 薬学部, 助教授 (50094454)
フィッシャー エドモンド ワシントン大学, 生化学教室, 教授
ジェンデン ドナルド カリフォルニア大学, ロサンゼルス分校・医学部, 教授
オルゼン リチャード W カリフォルニア大学, ロサンゼルス分校・医学部, 教授
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研究期間 (年度) |
1989 – 1991
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研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
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配分額 *注記 |
11,700千円 (直接経費: 11,700千円)
1991年度: 4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
1990年度: 4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
1989年度: 3,700千円 (直接経費: 3,700千円)
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キーワード | 哺乳類脳 / 興奮性アミノ酸 / Nーメチルーアスバルギン酸 / グリシン / 加齢 / 海馬 / in vitroオ-トラジオグラフィ- / スペルミジン / MK801 / ポリアミン / 小脳 / 受容体結合実験 / NーMetylーDーaspartate受容体 |
研究概要 |
本研究では、海馬、小脳などを中心として興奮性アミノ酸受容体の性質を受容体結合実験、in vitroオ-トラジオグラフィ、受容体蛋白質の生化学的分析等の立場から検討し、併せて、これら受容体の性質及び分布が年齢と共にどのように変化するかを検索することを主な目的とした。海馬における興奮性アミノ酸受容体の変化は、記憶、学習等と密接な関係を持っており、臨床的意義も深いからである。研究の中心は、興奮性アミノ酸受容体の中でも特にNMDA受容体コンプレックスである。NMDA受容体は、グルタミン酸結合部位、グリシン結合部位、ポリアミン結合部位、イオンチャンネル等の、いくつかのサブコンポ-ネントよりなり、複雑なコンプレックスを形成している。 NMDA受容体結合部位の研究に当たっては、Triton Xー100前処置によってその特異的結合が増加することを見い出し、この方法を結合実験に用いることによりNMDA受容体コンプレックスの機能を明らかにすることが可能となった。NMDA結合能がグリシン(Gly)、Dーセリン(DーSer)、6ー7ーdiーchloroquinoxalineー2,3ーdione(DCQX)、7ークロロキヌレン酸(7ーCIKYNA)などによって、どのように阻害されるかを詳細に検討した。NMDA受容体コンプレックスにおいてグルタミン酸結合が、グリシンによって増強されることが知られているので、特に、ジクロロキヌレン酸によるグリシン認識部位の標識について、詳細に検討し、この物質が、ストリキニ-ネ非感受性グリシン認識部位の標識に有用であることを示した。近年ポリアミンがNMDAによる内向き電流を増加することが知られており、その機能的意義が、注目されている。そこで、脳のシナプス分画について、 ^3Hーspermiline結合部位の薬理学的性格を明らかにした。また、ポリアミンが[ ^3H]MK801結合を増強することを示した。更にこれらの反応が各種2価カチオンによってどのように影響を受けるかについても研究した。 これらのNMDA受容体の結合能の性質をラットの海馬と小脳の間で比較検討した。海馬と小脳の[ ^3H]グルタミン酸結合および[ ^3H]グリシン結合は、共に、その親切力には有意差は、認められなかったが、最大結合密度が著明に異なっていた。両部位の[ ^3H]グルタミン酸結合は、ともにNMDA及び競合的NMDAアンタゴニストにより阻害されたが、NMDAアンタゴニストによる結合阻害作用は、小脳より海馬に対する方が、強力であった。 またNMDA感受性[ ^3H]グルタミン酸結合蛋白質をラットの脳から可容化し、部分精製することを試み、その一部の画分に良好な結合能を認めた。 脳内興奮性アミノ酸受容体の加齢に伴う変化を定量的in vitroオ-トラジオグラフィ-により観察した。興奮性アミノ酸受容体はいくつかのサブタイプに分類されるが、その中でも記憶、学習や病理、生理学的意義の深いNMDA受容体に焦点をあてた。Fischer344系オスラットを用い、正常成熟動物(2ヶ月齢)と老齢動物(21ヶ月齢)の脳における受容体の分布を検討した。NMDA受容体は、脳内で海馬に最も高濃度であり、特にCA1の放線層に多かった。次に多形細胞層に多く、錐体細胞層では、低濃度であった。歯状回では、分子層に多く、顆粒層に少なかった。大脳皮質も高濃度の結合部位を持ち、層状の分布を示した。線条体・嗅結節・側坐核・中隔・視床・扁桃体には、中等度のレベルで観察され、黒質・上丘などの中脳や小脳顆粒層では低レベルであった。NMDA受容体複合体のうち、ストリキニ-ネ非感受性グリシン受容体は、老齢動物の海馬・大脳皮質を含む終脳領域で約半分に減少していた。しかし、中脳での加齢に伴う減少は、軽度であり、小脳では、変化は、見られなかった。一方、NMDA認識部位を標識する競合的アンタゴニストのCPP結合部位は、前脳基底部で若干の減少が認められたのみで、海馬では変化が見られなかった。更にNMDA受容体チャンネルに結合するMK801を用いて実験を行った。MK801は活性化状態のチャンネルに結合するためNMDA受容体の機能を捉えるために有用なリガンドとなっている。MK801結合は、グルタミン酸やグリシン存在下で増強するが、これは老齢動物でも若年動物と同程度にみられた。以上の結果から、NMDA受容体複合体の中でもグリシン受容体が老化により強く障害されることが分かった。
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