家族の機能障害と実態と障害除去の諸施策の研究ー日英仏の比較検討ー

• 研究課題/領域番号: 01044106
• 研究種目: 国際学術研究
• 配分区分: 補助金
• 応募区分: 共同研究
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 有地 亨 九州大学, 法学部, 名誉教授 (10037062)
• 研究分担者: 三島 とみ子 長崎大学, 教育学部, 助教授 (20136625) ; 緒方 直人 鹿児島大学, 法文学部, 教授 (70033404) ; 南方 暁 茨城大学, 教養部, 助教授 (70125805) ; 清山 洋子 西九州大学, 家政学部, 教授 (40148961) ; 生野 正剛 長崎大学, 教養部, 教授 (80128149) ; 大原 長和 福岡大学, 法学部, 教授 (20038368) ; 金山 直樹 姫路独協大学, 法学部, 助教授 (90211169) ; 久塚 純一 北九州大学, 法学部, 助教授 (90037086) ; 小野 義美 熊本大学, 法学部, 助教授 (50094074) ; 川田 昇 神奈川大学, 法学部, 教授 (10078264) ; 丸山 茂 神奈川大学, 法学部, 助教授 ; 松川 正毅 三重大学, 人文学部, 助教授 (80190429) ; 河内 宏 九州大学, 法学部, 教授 (40037073) ; 二宮 孝富 大分大学, 経済学部, 教授 (20096431) ; 伊藤 昌司 九州大学, 法学部, 教授 (00047151) ; UEKI Tomiko MISHIMA Tomi Nagasaki University ; Fac. of Education ; Associate Professor ; HISATSHUKA Junichi Kita-Kyushu University ; Faculty of Law ; Associate Professor
• 研究期間 (年度): 1989 – 1990
• 研究課題ステータス: 完了 (1990年度)
• 配分額: 13,300千円 (直接経費: 13,300千円); 1990年度: 7,800千円 (直接経費: 7,800千円); 1989年度: 5,500千円 (直接経費: 5,500千円)
• キーワード: 家族問題総合センタ- / 相談援助 / 離婚 / クリ-ン・ブレイク / 少年非行 / 児童福祉 / 高齡者 / 自己決定

研究概要

われわれは、1990年秋と91年秋の2度に分けて、第1年目には英国第2年目には仏国および独国において、離婚、児童福祉、老人の3領域における各種相談・援助機関に関する実態調査を行なった。
離婚の領域では、英国において、公私2つの研究機関と12の各種相談・援助機関のスタッフに対する面接調査を行い、質問票配布の方法による補足的調査をも行った。仏国では3つの公的機関と22の民間機関のスタッフならびに7人の研究者との面接調査を行い、同様の補足調査を併用した。独国では、民間機関である結婚生活相談所スタッフを調査対象に選んだ。
英国では、離婚問題を抱えた当事者への相談・援助活動は、民間機関中心に行われており、夫婦関係の和合調整より、クリ-ン・ブレイクを目指す傾向が顕著であったが、仏国でも民間機関が中心であって、その活動にも同様の傾向が見られ、ここでの合意形成援助活動を司法手続の前段階として制度化する動きも確認できる。独国の上記相談機関は、法的問題と心理的問題を区別し、活動分野を後者に限定しているのが特徴であり、これが独国の一般的傾向を代表する。
児童福祉の領域では、英国の公的機関13と民間機関4、仏国の政府機関をはじめとする公的機関8および民間機関11の、それぞれのスタッフと面接調査し、独国においては民間機関1および少年係検事1人を対象に調査した。
英仏両国ともに民間機関に活動が顕著であり、各個に特色ある諸機関がその特色を活かしてキメ細かな援助を行なっていることが分かったが、特に、英国においては、公的機関と民間機関との連携が良く、総合的機関の確立も追求されている。独国でも、民間の青少年援助機関が、広義の社会的不適応者に対する社会化のための援助を行っているのが注目される。
老人の領域では、英国では、研究者3、地方行政における福祉担当官や公的機関のスタッフや民間の営利・非営利の老人施設のスタッフに面接調査した他に、施設利用者15人に対しても面接調査し、さらに、質問票による補足調査からも多くの情報を得た。同様に、仏国でも高齡者施策に関与する諸機関を訪問してスタッフの面接調査をした(30件)後、福祉諸施設の現場を訪問した。独国では民間の老人ホ-ム経営体を訪問したにとどまる。
この領域でも、英仏両国では、やはり民間機関が高齡者個々のニ-ドに応じた多様な援助を広範に提供しており、公的機関の役割はむしろ限定的であるが、両者の連携が重視されている。仏国でも、民間機関による援助が、質・量ともに顕著である。英国では、高齡者は総じて家族とは独立した生活を送っており、相談・援助は、家族との人間関係調整よりも実際的(経済的)援助中心であるが、仏国では、高齡者の自己決定の尊重を眼目としつつ、家族による精神的サポ-トのための民間機関の活動も重視されている。独国調査でも家族によるサポ-トのための民間機関の活動が重視されている。
総じて、これらの海外調査の結果は、日本調査の結論としての「家族問題総合センタ-」の構想において、ともすれば公的機関中心に考える日本的発想への反省を迫るものがある。つまり、今回われわれが調査した国々では、家族問題への公的機関の関与は抑制的であり、その役割は財政的支援の範囲に限定されているようである。主導的な役割は、むしろ多様な民間機関が果たしているが、それを可能にしている背景には、その活動の担い手であるソ-シャル・ワ-カ-の専門性の高さとその社会的認知が存在することを見失ってはならない。多様な機関に所属しつつも、活動の担い手相互間には専門性という共通項があって、それが、わが国には見られないような機関相互間の良好な連携を生み出しているという点も、特記すべきことである。

研究成果

• [文献書誌] 三島 とみ子: "英国における離婚問題相談機関の実情" 長崎大学教育学部 社会科学論叢. 第41号. 19-34 (1990)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 松川 正毅: "最新フランス家族法研究事情" ジュリスト. 962号. 133-135 (1990)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 清山 洋子: "イギリスにおける高齡者援助の現状" 賃金と社会保障. 1046号. 7-17 (1990)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 川田 昇: "(翻訳)ナイジェル・ロウ 児童法の改革〜イギリス的スタイル〜1989年児童法入門" 神奈川大学法学研究所 研究年報. 12号. (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 緒方 直人: "英国における児童・少年問題関係諸機関の調査報告" 鹿児島大学・法学論集. 27巻1号. (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 伊藤 昌司 他: "英国における家族問題援助機関〜離婚問題、児童・少年問題、高齡者問題〜" 九州大学, 1-146 (1990)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 二宮 孝富 他: "フランス・西ドイツにおける家族問題援助機関" 九州大学, (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Tomiko UEKI-MISIMA: "A Study of the Organizations for the People with Family Problems in Britain" Bulletin of Faculty of Education, Nagasaki University : Social Science.41. 19-34 (1990)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Tadaki MATSUKAWA: "Recent Trend of Family Law study in France." Jurist. 962. 233-135 (1990)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Yoko SEIYAMA: "On the Conditions of Personal Services for Elderly in Britain Today." Wage and Social Security. 1046. 7-17 (1990)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Noboru KAWATA: "(Translation) Nigel LOWE, "Child Law Reform-English Style- : An Introduction to the Children Act 1989. "" Annual Report of the Institute for Legal Studies, Kanagawa University. No, 12. (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Naoto OGATA: "Investigation of Agencies treating with Children and Young Person's Problem in England." Law Review, Kagoshima University. Vol. 27 No. 1. (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Shoji Ito et al.: "Organizations for Assistance and Support to Divorced, Young or Aged Persons in England and Wales-An Provisional Report of Research on 1989." Kyushu University. 1-146 (1990)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Takatomi NINOMIYA: "Organizations for Assistance and Support to Divorced, Young or Aged persons in France and Germany." Kyushu University. (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より