研究課題/領域番号 |
01044112
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
安田 克廣 (1990) 長崎大学, 歯学部, 教授 (50013884)
安田 克広 長崎大学, 歯学部, 教授
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研究分担者 |
TENDELOO G.V アントワープ大学(RUCA), 教授
LANDUYT J.Va アントワープ大学(RUCA), 教授
有働 公一 長崎大学, 歯学部, 助手 (60145266)
VAN TENDELOO Gustaaf
VAN LANDUYT Joseph Professor, Center of High Voltage Electron Microscopy for Materials Research, U
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研究期間 (年度) |
1989 – 1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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配分額 *注記 |
7,100千円 (直接経費: 7,100千円)
1990年度: 3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
1989年度: 3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
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キーワード | 高分解能電子顕微鏡 / X線回折 / AuーCuーAg三元系合金 / 歯科用金合金 / 相変態 / 時効硬化 |
研究概要 |
本研究計画は歯科用貴金属合金の基本型であるAuーCuーAg三元合金系に生じる相変態の結果導入される逆位相境界、双晶境界などの界面構造を高分解能電子顕微鏡法により原子尺度で解析し、これらの界面が機械的性質、電気化学的性質および生物学的特性におよぼす影響について検討することを目的としている。この目的を具体化するため、(1)AuーCuーAg三元系コヒ-レント状態図の決定、(2)相変態機構の合金組成依存性、および(3)時効硬化機構の解明をとりあげた。現在までに得られている研究結果の概要は以下の通りである。 1.AuーCuーAg三元系のうち、AuCuーAg擬二元系合金をとりあげ、そのコヒ-レント状態図を決定するためAg濃度をO原子パ-セントから14原子パ-セントまでの範囲で変えて各温度における準平衡共存相の同定を通常の透過電子顕微鏡法および高分解能電子顕微鏡法により行なった。Ag濃度0〜6原子パ-セントの範囲では高温の不規則固溶相単相状態からAuCuII型規則格子相あるいはAuCuI型規則格子相が形成され二相分離は生じなかった。Ag濃度6〜14原子パ-セントの範囲では核生成・成長機構による二相分離が起こり、ついでAuCu規則格子変態を生じた。AuCuー14at.%Ag合金についてスピノ-ダル温度は650Kと見積もられたが、この温度直下で時効した合金の組織にはスピノ-ダル分解の特徴である変調構造は認められず、また、時効硬化曲線は核生成・成長過程の特徴である潜伏期を示した後に硬化することが判った。この結果は宮崎らによるコンピュ-タシミュレ-ションの結果を裏付ける実験的証拠となった。AuCuーAg擬二元系における三相共存領域の相境界に関して状態図上の決定は現在進行中であるが、スピノ-ダル温度直下で時効したAuCuーAg合金には異なった形状を有する2種類の析出物が観察された。一つはスピンドル型、他は鎖型の形状を有していたが、これらは何れも立方体あるいは直方体のブロック状のAgーrich析出相が薄板状のAuCuII長周期規則相を挟んだサンドイッチ様の構造を有しており、AuCuII規則相のC軸は析出物の長軸方向に一致していた。これに直交する方向のC軸を有する薄板状のAuCuII規則相は析出物上下の卓面を覆っているが、析出物の左右側面にはAuCuII規則は形成されず、ブロック状のAgーrich相はマトリックスと接する界面を有していることが判った。この析出物に対してコンポジット析出物と命名した。更に低温で時効すると相変態はスピノ-ダル分解支配型になり、形成された変調構造のCuーrich領域がAu原子を取り込んでAuCuII規則相を形成するが、この段階でブロック状のAgーrich相と薄板状のAuCuII規則相とのサンドイッチ構造を全方位にわたってAuCuII規則相が取り囲み、しかもこれらのAuCuII規則相は双晶化していることが高分解能電子顕微鏡によって観察された。そして、これら2種類の構造について結晶構造のモデルを提案した。 2.PtおよびPdを含有する実用の歯科用金合金の時効硬化特性とその原因機構となる相変態について硬さ試験、X線回折、通常の透過電子顕微鏡法および高分解能電子顕微鏡法により検討した。その結果、複雑な多元合金でありながら、その相変態は比較的単純な組成のAuーCuーAg三元合金よりも一層単純であることが判った。すなわち、長周期規則構造を有するAuCuII規則相は形成されず、三方向のオリエンテ-ション・バリアントの薄板状AuCuI 規則相が形成されるのみであることが判った。これら規則相の間隙には不規則固溶相が形成されており、両相の界面のコヒ-レントひずみ場が硬化の主要な原因になっていた。AuCu規則相の長周期逆位相境界構造のAg濃度による変化に関しては、AuーCuーAg三元系合金の相変態による組織変化が強い温度依存性を示すことが明らかになったので、AuCuーAg擬二元系コヒ-レント状態図が確定したときに規則化の臨界温度から一定の割合にある温度での高分解能電子顕微鏡観察を行なわなくてはならないことがわかった。これを実施するため、平成3年度以降についても国際学術研究(共同研究)を申請していたところ補欠採択の通知を受けた。本研究計画の継続実施をせつに希望する次第である。
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